―[連載『孤独のファイナル弁当』]―

『孤独のグルメ』原作者で、弁当大好きな久住昌之が「人生最後に食べたい弁当」を追い求めるグルメエッセイ。今回『孤独のファイナル弁当』として取り上げるのは東海道新幹線に乗り込む前に買う『パン弁当』について。
果たして、お味はいかに?

東海道新幹線に乗る前に買い込む定番の『パン弁当』<人生最後に...の画像はこちら >>

孤独のファイナル弁当 vol.17 「東海道新幹線の新定番パン弁当」

 2025年も旅が多かった。東海道新幹線だけで10回(10往復)も乗った。

 振り返ればひと昔前は、必ず崎陽軒のシウマイ弁当とビールを持って乗車していた。弁当を買わなくても缶ビールは買った。それが新幹線旅の楽しみでもあった。

 でも近年はビールも飲まなくなった。それはなぜかというと、車内でパソコンを出して仕事するからだ。週刊誌の連載原稿(まさにこれですが)を書いたり、翌日の講演でプロジェクターを使って見せる写真をセレクトして順番を組み立てたり。ライヴの曲順を考えることも多い。

 そして飲まなくなってよかったことは、目的地の街に着いて、到着お疲れさまのビールがうまいことだ。車内でひと仕事終わらせているから、倍にうまい。

 だが新幹線3時間となると腹も減る。
そこで最近は東京駅の構内でパンとコーヒーを買って乗り込むことが多くなった。それもいろいろな店で買ってみて、定番のパン弁当が決まりつつある。

 それが小さな窓口売り場CITYSHOPの鯖サンドとパン・オ・ショコラだ。神戸より先に行く時はそこにたまごサンドが加わる。飲み物はアイスカフェオレが多いが、これは気分で変わる。それとミネラルウォーター。東海道新幹線に車内販売がなくなったので、水も必須だ。緊急停車時も安心。

 この鯖サンドは、なんとなく買ってみて、車内で食べて一発で気に入った。味付けが実にいい。カレーマヨネーズなのだ。カレーにマヨとはずるい。
絶対旨いじゃん。食欲がモリッと湧く。鯖との相性もスバラシイ。そこに野菜がケチらずたっぷり挟んであるのも最高。人参、レッドキャベツ、グリーンカール(やわらかいレタスみたいなの)。大葉も入っているらしいが、前に出てこない。隠し味なんだろう。それらを挟むパンがイイ。硬くなく柔らかくなく、噛み心地がジャスト。電車で食べてパン屑が散らばらない。それでいて香ばしい。トータルで傑作だと思う。


 かたやパン・オ・ショコラのよさは、中のチョコが適度に硬いことと適度に苦いこと。車内で仕事が終わった時、このちょいとした甘さが脳にうれしい。そのチョコがすこーし硬いというのがセンス。前歯で軽くボギッと折れる感じ。バターの香りが口の中で広がるクロワッサン的な重層構造の、まだパリッとした仕上がりもいい。ただしこちらはズボンにパン屑を落とさないように注意しないとならない。

 このコンビはなかなか無敵。最近同店のたまごサンドが、隅に置けないおいしさであることを知った。まだ2回しか食べていないが、物凄く頼りになる助っ人新人発見。

 これらをいつどういうタイミングで食べるか考えるのが、新幹線の楽しみとなった。

東海道新幹線に乗る前に買い込む定番の『パン弁当』<人生最後に食べたい弁当は?>/久住昌之
旅の仕事場・新幹線のお供「パン弁当」4点セットは東京駅構内にある「CITYSHOP」の鯖サンドとパン・オ・ショコラにアイスカフェオレ、それとミネラルウォーター


―[連載『孤独のファイナル弁当』]―

【久住昌之】
1958年、東京都出身。漫画家・音楽家。
代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など。Xアカウント:@qusumi
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