「サンフランシスコ条約は無効」「敵国条項で日本を攻撃できる」中国大使館の暴走ツイートが止まらない。外交ルールや国際法の解釈を巡る混乱、食料輸入停止など実害を伴う報復、そして政府対応の遅れに対し、憲政史研究家の倉山満氏は「もはや、日本は何もしなくて良い」と語る。
薛剣中国総領事。外交官のくせに、SNS廃人なのである
戦いは、必ずしも最善手を繰り出し続けた方が勝つのではない。そんな勝ち方は、むしろ稀だ。お互いに勝とうと必死なのだから錯誤の応酬が起きるのが普通で、互角の力量で完全試合など滅多になしえない。戦いとは、より罪の重い悪手を繰り出した方が負けるものだ。話題の日中外交戦。日本側(高市早苗内閣)がモタモタと何もしない間に、中国側(の出先)が次から次へと、信じられない悪手を繰り出し続けている。
事の発端……の前段がある。
薛剣中国総領事。外交官のくせに、SNS廃人なのである。何かとX(旧ツイッター)に不穏な投稿をして、そのたびに削除する。
たとえば、選挙の時に「比例はれいわとお書きください」などと投票を呼びかける。
即座に国外追放がセオリーの大暴言
そして事の発端。11月7日の国会で、立憲民主党の岡田克也氏(元外相である)が、執拗に「存立危機事態に台湾は含まれるか」と聞き、高市首相は「含まれる」と答えた。後に「国会が止まってはと思って……」と答えているが、イラン一言だったろう。これを言うなら、事前にアメリカとも根回ししておいた方が良い。ところがこれに、(もはや今となっては我らの、と言いたくなる)薛剣総領事がやってくれた。Xに「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか」と投稿。外交官にあるまじき大暴言である。
即座にPNGがセオリーである。ただし、それができる国なら、とっくにやっている。
中国の“キレ芸”が始まった
ところが1週間くらいが目途かと思っていたら、中国の“キレ芸”が始まった。13日、日本の中国大使を夜中に呼びつけ、厳重抗議。日本側の抗議への抗議のよう。この段階では、日本側も中国の駐日大使を夜中に呼びつけて抗議くらいやってもよかったが、高市内閣は放置。まあ、次善手か。
18日、北京で定期会合が行われた。そもそも「普通にやるなよ」と言いたいが、ここで中国の局長がポケットに手を突っ込んでいる映像が拡散。どこか、先方のイラ立ちが伝わってくる。
19日、中国は水産物輸入停止に踏み切った。ここで実害が出た。より正確に言えば、福島第一原発からの処理水排水を受けて「安全性が問題だ」と停止していたのを、一時は停止解除。
北京中央の方は、やめることを考えながらも強く出ている感があるが、日本にいる外交官たちは何を考えているのか。
問題児の薛剣総領事、国へ帰って大丈夫か
問題児の薛剣総領事は、問題発言以降、沈黙。忠誠を見せつける為に、ことさら日本に対して居丈高な態度を取ってきたのだろうが、習近平は全体の戦略を乱す非論理的な行動をする者を嫌う。この人、国へ帰って大丈夫なのか。そんなに日本が好きなら、いっそ帰化させてあげた方が人の道か、とすら思える。
日本ではUnited Nationを国際連合と訳すが、中国語では「連合国」だ。つまり第二次世界大戦の連合国が、そのまま旧国際連盟の役割を引き継いだので、中国語の方が正しい。日本は「国連加盟で国際社会に復帰」と喜んだが、実態は「敗戦国だけど、連合国の仲間に入れてもらった」なのだ。国連(連合国)憲章で日本は「敵国」とされ、この条文は敵国条項と言われている。
ただ、あれからもう80年も経つ。
中国大使館Xの執筆者、国際法を知らんのか
しかし、まだまだ錯乱は留まるところを知らない。30日日曜日、大使館のツイッターが、高市批判の投稿を9本。ヒマすぎる。
そして極めつきが2日、「サンフランシスコ条約は無効」と言い出した。
中国大使館Xの執筆者、国際法を知らんのか。
国際法は、慣習国際法と条約国際法から成る。
慣習国際法とは、国際社会で積み重ねられ、すべての国が承認し合っている慣習のことである。たとえば、「戦争であっても虐殺をしてはいけない」のように。この内容、今ではジュネーブ条約に規定されているが、確認の為である。どこかの国が「自分はジュネーブ条約に加盟していないから、虐殺をやっても良い」などと言い出したら、文明国扱いされない。
一方、条約国際法は、批准した当事国のみを拘束する。
いっそ、薛剣氏はれいわ新選組から選挙に出ては如何
日本は連合国の多数とサンフランシスコ平和条約を結び、中華人民共和国とは日中平和条約を結んだ。いずれも第二次世界大戦の平和条約であるが、重なる所もあれば、重ならないところもある。中国大使館の立場で発信するなら、「我々はサンフランシスコ条約と中日平和条約の重ならない部分には拘束されない」と言えば良いだけだ。
国際法の基礎も知らないのか?
もはや、日本は何もしなくて良い。ただ、高市首相は発言を撤回しないだけで、中国の出先が今後もネタを提供してくれるだろうから。
いっそ、薛剣氏は日本に帰化して、れいわ新選組から選挙に出ては如何? どれくらい得票できるか知らないが、中国で出世するよりは、可能性があるだろう。
なんで勝っても、勝ちは勝ち。
―[言論ストロングスタイル]―
【倉山 満】
憲政史研究家 1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。
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