―[新日本プロレス社長・棚橋弘至のビジネス奮闘記~トップロープより愛をこめて]―

新日本プロレスの人気プロレスラーにして「100年に一人の逸材」と言わしめ、第11代社長(’23年12月就任)も務める棚橋弘至が、日々の激務のなかでひらめいたビジネス哲学を綴っていく。今回は「プロレスの未来」について。
棚橋社長はいったいどんな結論に至ったのか。(以下、棚橋弘至氏の寄稿)

プロレスキャリア26年。最後の巡業で感じた未来の可能性

 プロレスラー人生、最後の巡業中です。「WORLD TAG LEAGUE 2025」、期間は11月20日~12月14日まで。原稿を書いている現在は、ちょうど折り返しといったところです。

 北は青森。南は鹿児島、最終戦の熊本と、西へ東へ北へ南へと巡業中の移動距離もすごいことになりますね。

 新日本プロレスでは、現在の試合スケジュールは年間約150試合。昔は200試合以上行われていたそうです。毎週金曜8時に生中継があったので、そうしなければならなかったのかもしれません。

「試合数増やそうかな?」引退したあとのプロレスの可能性につい...の画像はこちら >>
 そうした新日本の53年の歴史の中で、試行錯誤の結果、年間の最適な試合数や、ベストなコースを更新していくイメージです。

 コース?と思われた方もいるかもしれません。


 そうなのです。大会の終了後、隣県を順番に回れたら移動も楽なのですが、県を越えて見に来ていただける方も多いので、あまり近い距離の移動では、良くない場合もあったりするので、この試合のコース取りというのはなかなか難しいのです。

 これは、営業経験のある菅林会長を筆頭に、しっかり考えて組まれ、毎年、アップデートされています。

 来年の1月4日の東京ドーム大会で引退試合を控えている僕にとっては、どの都市もどの会場も最後の大会です。

 今回この最後のシリーズも感謝の気持ちを持って試合に臨んでいます。

 その中でデビューして初めて試合をする大会がありました。それは、青森県むつ市。

 なんと前回、新日本プロレスの大会が開催されたのは、30年前だそうで。と、なると、今回のメンバーではおそらく1991年にデビューした小島聡選手だけが、前回のむつ大会の経験者でした。

「試合数増やそうかな?」引退したあとのプロレスの可能性についても考えてみた/棚橋弘至
地方大会に協力してくれた皆様との会食も、社長の仕事だったりします(笑)©新日本プロレス
 今回のむつ大会の観客動員は1200人。地方大会で1000人を超えるというのは、今の新日本では良い結果と言えます。

 ’00年代、「まずは動員500人を目指しましょう!」と日本全国をプロモーションしていた僕からすれば「コロナ禍で動員が落ち込んだ時期もありましたが、まだまだイケる!」と、とても嬉しい結果だったのです。


 僕のプロレスキャリアは26年になりました。

 それでも、今回のむつ大会のように、まだ新日本プロレスが、久しく行っていない街がある。

 そんな場所を調べたり、これまで開催したことのない街を探すのも、今後の新日本プロレスにとって、とても大切だと感じました。

 僕たちは、東京ドームをはじめ、大きな会場でも試合を行いますが、こうして、日本全国の皆様に「プロレス」をお届けすることが、良さであり醍醐味だと感じます。

 それならば……「2026年はもっと試合数を増やそうかな?」と、社長としての棚橋は、ほくそ笑むのでした。

今週のオレ社訓 ~This Week’s LESSON~

プロレスラーとして最後の巡業。でも社長として2026年は……

<文/棚橋弘至 写真/©新日本プロレス>

―[新日本プロレス社長・棚橋弘至のビジネス奮闘記~トップロープより愛をこめて]―

【棚橋弘至】
1976年生まれ。新日本プロレスの第11代社長(’23年12月就任)であり現役プロレスラー。キャッチコピーは「100年に一人の逸材」。得意技は「ハイフライフロー」。身長181㎝ 体重101㎏
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