「本当にこの年齢なのか」と話題になる“年齢不詳のミドル女性”が急増している。この背景には、顔の印象を決める心理メカニズムからメイク技術の進化まで、複数の要因が絡んでいた。
今、注目される“童顔美熟女”の実像に迫る──。

ミドル女性に広がる“童顔化”

20代に見える“童顔の中年女性”が急増しているワケ。「パーツ...の画像はこちら >>
「23歳のときのままの可愛さ」「40歳とは思えない」――。かつて人気を博した元グラビアアイドルの小阪由佳(40歳)が、’25年11月に17年ぶりに写真集を出版することが発表され、奇跡の復活と話題になった。

だが「〇歳とは思えない」のは彼女のような一部の人気タレントに限った話ではない。ネットニュースやSNSではミドル世代女性の“若見え投稿”が連日のように話題を集めるなど、市井のミドル女性にまで“童顔化”と呼べる現象が広まっているのだ。このムーブメントについて「複数の要因が重なった現象です」と分析するのは、美容家・メイクコンサルタントの池田曜央子氏だ。

「ミドル世代の女性の顔の悩みで多いのが『眉がつり上がって見える』『口角が下がって疲れて見える』といった問題。それらは老化によるものですが、傍目からは機嫌が悪いように見えるんですね。それだと部下に怖がられたりして印象が悪いので、メイクでカバーしたいと思う女性が多いんです。上がった眉を下げたり、下がった口角を上げたりして、パーツを顔のやや下に集めるように色を足すのがコツなんですが、それが結果的に童顔に見えるようになります」

童顔化を後押しするメイク用品の進化

また、メイク用品の進化も童顔化を後押ししている。

「今のファンデーションは、薄く塗るだけでカバー力とツヤ感がかなう機能性の高いものが多いんです。だから昔よくいた、粉っぽい“厚塗りおばさんメイク”は完全に過去のものになりましたよね。それに、今のメイクトレンドは派手さよりも自然なトーンが選ばれやすい傾向があります。それによって輪郭や印象を柔らかく見せるので、優しげで幼く見えるミドル女性が増えている気がします」

時代の変化とともに肌ケア常識も変わってきている。
池田氏は「肌がきれいな女性が増えた」と続ける。

「30年前くらいから紫外線による肌の劣化が広く知られるようになったので、今のミドル女性たちは若い頃から日焼け止めをコツコツ塗り続けてきた人が多いんです。その効果で、素肌がきれいな人がそもそも多い。さらに美容医療が大衆化してきたので、子育てが一段落した年齢の女性が時間的余裕もできて、本格的な美肌作りに投資しています。そういった肌ケア常識の進化も童顔化を加速させる要因になっているでしょう」

「童顔」だと感じる要素は?

20代に見える“童顔の中年女性”が急増しているワケ。「パーツを顔のやや下に集める」メイク術の進化も要因に
TikTokでバズった梅本結花さん(41歳)。最近、ゆいちゃんの芸名で歌手デビューを果たす。デビュー曲は「私を空へ連れてって」。MVはゆかりある場所で撮影
では、そもそもどのような顔を我々は「童顔」だと感じるのだろうか。顔の作りと魅力の関連性を研究する四天王寺大学講師・藏口佳奈氏は「人間が年齢を判断する材料は肌のみずみずしさが重要ですが、童顔の女性はそれだけでなく『ベビースキーマ特徴』が強く残っている」と話す。

「これは動物行動学者コンラート・ローレンツが示した、赤ちゃんのような顔立ちの特徴のこと。大きな目、丸みのある輪郭、小さな顎、パーツがやや下に寄った配置といった赤ちゃんの顔のような特徴がそろうと、童顔だと判断。可愛らしいと感じます」

男心を惹きつける恐るべき“童顔効果”

前出の「パーツを顔のやや下に集めるメイク」は、その特徴を後押ししているのだろう。童顔にはさらに男性心理を揺さぶる仕組みもあると藏口氏は続ける。

「ベビースキーマ特徴は『守りたい』『近づきたい』といった本能をかき立てるトリガーになります。大人の女性がその特徴を強く持っていると、初対面でも『素直で優しそう』『話しやすそう』といった好印象を自然と与えます。これを“童顔効果”といいますが、童顔の女性は可愛らしさに加え、近づきたいと思わせる魅力も兼ね備えているんです」

童顔美熟女とは、ベビースキーマ特徴由来の可愛さに加え、大人としての経験値まで併せ持つ、何とも言えぬ魅力を持つ女性と言えそうだ。


【メイクコンサルタント 池田曜央子氏】
建築士から一転、美容・ファッションなどを学び、独自の骨格補正メイクを考案。これまでに3000人以上の女性の印象アップを手がけている

20代に見える“童顔の中年女性”が急増しているワケ。「パーツを顔のやや下に集める」メイク術の進化も要因に
メイクコンサルタントの池田曜央子氏
【四天王寺大学講師 藏口佳奈氏】
京都大学大学院で博士号取得後、大阪大学助教などを経て現職。専門は、実験心理学、知覚・認知心理学、顔魅力知覚・認知

20代に見える“童顔の中年女性”が急増しているワケ。「パーツを顔のやや下に集める」メイク術の進化も要因に
四天王寺大学講師の藏口佳奈氏
※週刊SPA!12月16日・23日合併号より

取材・文/週刊SPA!編集部

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