都会の喧騒から離れ、田舎で悠々自適な生活を送る。
話してくれたのは東京に長年暮らしていた橋本美穂さん(仮名・32才)だ。
結婚がきっかけで移住を決意
橋本さんは生まれも育ちも東京都の世田谷区。高校時代は学校帰りにスタバに寄ってプリクラを撮る、という絵に描いたようなシティガールだった。当然のように都内の大学に進学し、卒業後も大手町のオフィスで働いた。都会に染まりきった橋本さんだが、何がきっかけで田舎に移住することになったのか?「結婚ですね。それを機に旦那の故郷の長野県に引っ越したんです。旦那は故郷に対する愛情がすごくて、長年向こうに拠点を移したがっていたんです。私も東京を離れることに抵抗はあったのですが、年齢も三十を超えて、この結婚を逃したら次がいつくるかもわからなかったので決断しました。それに、田舎暮らしに憧れもあったので」
月に数回ある集会は、単なる飲み会で…
夫婦ともに仕事は在宅でできるものだった。パソコンとスマホ、それとネット回線があればどこでも問題ない。会社を辞め、夫婦共々フリーランスとなった。「独自のルールがたくさんあるんです」
橋本さんは眉間に皺を寄せ、そう言った。
「地域にもよるんでしょうけど、私たちの地域はかなり面倒でした。え? 田舎ってこうなの? って思うことばかりで。特に町内会の集まりとか」
橋本さんはため息をつき、続ける。
「私の地域は集まりが月に3、4回あるんです。役員決めやゴミ集め、掃除当番なんかを決めるための集会のはずなんですが、それは単なる飲み会の口実にすぎないのが現状ですね」
町内会の高齢者たちはその「飲み会」が大好きなのだそうだ。
「そりゃそうですよ。だって町内会の会費を使って安く飲めて、女性からお酌だってしてもらえるんですから」
「田舎は二十年以上遅れている」と思った
参加者の半数以上が高齢で、女性たちは裏方に回り接待。これが楽しいわけがない。「ただ集まりたいだけなんですよ。特に上のおじさん連中はあの場をキャバクラか何かと勘違いしてるんですよね。
ずいぶんと昭和なご様子だ。
「昭和も昭和ですよ。嫁いできた女性は強制参加ですし、数ヶ月はお酌し続けるのが当たり前ですからね。さすがに触ってきたりはしませんけど。今の時代、東京ってそういう文化がほとんどないじゃないですか。パワハラもセクハラも、社内の飲み会だってないところも多いし。田舎は二十年以上遅れてますね」
そんな橋本さんは集まりに参加するとき必ず上下ジャージで行くという。
「色気ゼロにしておかないと、勘違いされるんですよ。結婚してるのわかってて口説いてくる人もいるし、年上のお姉様方たちの視線もあるので」
高価な家電を持っていると、標的になる
そのような飲み会だけでも厄介だが、それはほんの一部だという。「他にも変なルールがたくさんあるんですよ。特に変だと感じたのは、家電に関してのルールです。うちの町内会では高価な家電は買っちゃいけないことになっているんです。
自宅の家電で? それがルールになっているのはどういう理由があるのだろうか。
「わかりません。これはルールというか、そうした方がいいよっていうアドバイスなんですけどね。私たちが引っ越してきてすぐ、町内会の先輩夫婦にそう言われたんです。小さなコミュニティだから目立っちゃダメだって。高価な家電を持ってると、標的になるからって。私にアドバイスをくれた人も東京から引っ越してきた夫婦でした」
その忠告を無視し、橋本さんは東京にいたときに使っていたドラム式洗濯機を、誰にも言わずそのまま使っていた。しかし、そのことはすぐ町内に知れ渡ってしまったという。
「水道屋さんが言ったらしいんですよ。冬場に水道管が凍ってしまったとき、見てもらったんですよね。それから一週間も経たないうちに会長の奥さんに言われました。『あなたのとこ、お高い洗濯機使ってるのね』って。使うな、とは言わないんですよ。嫌味ったらしく言ってくるんです。私も腹が立って、便利だから買った方がいいですよって言ったんです。そしたらお祭りの実行委員っていう、すごく面倒な当番を任されまして」
絶えず監視されている気が…
橋本さんはそれらの閉鎖的ルールと対人関係がストレスとなり、旦那さんともよく喧嘩になったという。「都会で暮らしているときは喧嘩なんてほとんどなかったんです。でも旦那の両親が近くで暮らしていて、旦那の職場の人や友達だってそこらにいるんですよ。絶えず監視されている気がして、ストレスは溜まる一方なんですよね」
相談する友人もいないため、ストレスの吐口はSNSだという。
「褒められることはではないんでしょうけど、SNSに田舎の愚痴を書くと共感してくれる人がたくさんいるんです。
一年ほどで田舎暮らしに見切りをつけた橋本さんは、今では月の半分を東京の実家で暮らしているという。
「田舎が悪い、とは思いません。でも引っ越す前に必ず調べてほしいですね。私は今のどっちつかずの状況が一番いいと思っています。属するというのは、ある種の病みたいなものなので」
憧れと現実は、少しばかり違うようだ。
<TEXT/山田ぱんつ>
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