同じ時期に投資を始めたのに“差がついた”理由
投資をしていると、ほかの投資家さんが「どのような投資を行っているのか?」「どのような資産の増やし方をしているのか?」は気になるもの。そもそも投資を始めた時期や投資した金融商品が同じでも、やり方が違えば資産の増え方にも差が出てきます。「同じ時期に不動産投資を始めたのに、なんでこんな差がついたのか!?」「自分の不動産投資の方法は間違っていたのでは……!?」と頭を抱えてしまう人もいるでしょう。
私が40代前半まで勤め上げた大手通信会社の後輩である大山さん(仮名)は、私より少し遅れて2007年に不動産投資を始めました。彼の現在の保有物件は8戸、時価資産総額はおそらく私の1/4程度の2億円ほどです。私との時価資産総額の差を聞いて「俺、何か間違えました!?」と自身の投資を振り返ることにしました。
大山さんは大変優秀な方です。先輩である私よりも出世が早く、年収も私よりも高かった。彼と接していて「自分はこの会社では先がない」と思い知らされ、会社を辞めるきっかけにもなった方です。
「手元に貯金がないと不安」という考えがアダに
では、なぜ不動産投資ではこれだけの差がついたのでしょうか?そもそも、大山さんが不動産投資を始めた目的は「老後の安心のため」です。なので、定年を迎えたタイミングで「ローンが完済された物件を所有できれば良い」と考えていたようです。ですから、老後の時点で「持っていて安心」と考えられる「好立地の築浅の物件」を選んで購入していきました。
そして非常に慎重な性格のため、「手元に貯金が無いと不安」と考えていました。
手元で資金を遊ばせるのはもったいない
一方で私が考えていたのは「手元に資金を遊ばせておくのはもったいない」ということ。大山さんとは真逆の発想で、「手元に貯金があると不安」なのです。そしてこれこそが差を産んだ大きなポイントとなりました。私は手元にある資金をとにかく使いたかったため、借入はもちろんしていましたが、元本として資金をドンドン投下し、その結果リターンが増え、さらに投下する資金が増えていく……という繰り返しを高速で行っていました。それに対し大山さんは、「貯蓄はあった方が良い」という価値観でしたので、「500万円も貯金ができた」と預金通帳を眺めていたのです。実はこれこそが20年間の投資で大きな差がついた要因となったのです。
一口に不動産投資と言っても、10年も経つと資産額に大きく差がつくケースが散見されます。そしてその差は決して「買ったときの不動産市況が良かったから」という理由だけではありません。「その10年間にどのような運用を行ってきたか」。これこそが大きな差を産むポイントなのです。
投資とは「明日は今日より資産が増えるもの」
投資とは「元本×利回り」です。たとえ利回り100%でも10万円しか投下しなければ、リターンは10万円にしかならず、500万円を4%で運用する投資商品のリターンである20万円に負けてしまいます。とはいえ、結果として資産額には差がありますが、大山さん自身、不動産投資をしなかった場合と比較すると大きく資産を増やしています。当初の目的でもある「老後の安心」も確保済です。そしてなにより「貯金がある」という安心感を得ながら日々過ごすことができました。
投資は「幸せになるため」に行うもの。不安と同居してやるものではありません。それぞれで幸せのカタチは異なりますから、それぞれのスタイルにあった方法で投資を進めればよいのです。
投資で失敗している人、苦痛を感じている人は、目的にあったやり方をしておらず、単に運用方法を間違えているだけです。そんな方は是非一度、投資のやり方自体を見直してみてください。投資とは「明日は今日より資産が増えるもの」だと考えています。そしてそれはインカムゲインのある投資でしか確信を持つことはできません。キャピタルゲイン狙いの投資では、「売却時の状況」に左右されてしまうためです。
<構成/上野智(まてい社)>
【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『戦わずして勝つ 不動産投資30の鉄則』(扶桑社)、『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)
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