―[ゼロ恋愛 ~経験値ゼロから学ぶ恋愛講座~/堺屋大地]―

 こんにちは、恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラーの堺屋大地です。
 筆者はLINE公式サービスにて計1万件以上のチャット恋愛相談を受けてきました。
また知人経由で対面の相談を受けることも多く、性別・年齢問わずさまざまな方の恋のお悩みをうかがい、知見を深めているのです。

 2020年国勢調査によれば、日本人の「生涯未婚率」(50歳時の未婚割合)は年々上昇しており、女性は17.8%、男性に至っては28.3%にも及びます。そんななかで、恋愛がうまくいかないという方々にも筆者の知見が少しでも役に立てばなによりです。

※この記事は本人の許可を得て掲載しています。ただし、プライバシー保護のため実際のエピソードから一部変更しています。

『じゃあつく』竹内涼真のような「ハイスペ&モラハラ男」の実態...の画像はこちら >>

今期一バズった『じゃあ、あんたが作ってみろよ』

 竹内涼真さん×夏帆さんのダブル主演で、12月9日(火)に最終話を迎えた今期一のバズりドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)。

 男性主人公・勝男(竹内)は、高学歴・高収入のハイスペックながら、「女の幸せは、家で料理を作って愛する人の帰りを待つこと」、「料理は女が作って当たり前!」という古臭い価値観を持つモラハラ男で、そんな彼が人間的に成長していく物語でした。

転職でも友達関係でも彼氏に否定されて指図され

 さて、今回のご相談者の女性は『じゃあつく』の勝男と同じように、ハイスペエリートながらモラハラ気質のある彼氏と付き合っているという穂乃果さん(仮名・29歳)

「付き合って2年の有起哉君は私と同い年で司法書士をしています。いつもニコニコしていて一見すると温和でやさしいんですけど、私の決断とか私のしていることをすぐに否定して、水を差してくるんです……。

 例えば、私が前の職場で人間関係に悩んで退職しようとしていたときに、私のキャリアだとその職場以上に条件の良い会社には転職できないとか、キャリアアップ以外の目的の転職は“逃げ”でしかないとか言われて、余計につらい気持ちになりました。

 あと私の地元の女友達と会わせたときに、その子は元ギャルで言葉遣いがちょっと荒くて男遊びも奔放なタイプだったからか、後日、あの子とはもう二度と連絡を取らないでほしい、品が悪い友達とは縁を切ったほうがいいって言われて。

 私の人間関係にまで指図してきたときに、有起哉君がかなりモラハラ気質だってことに気づいたんです」(穂乃果さん)

エリートは勝者として成功体験を積み上げている

 そんな穂乃果さんからの質問は、「どうして『じゃあつく』の勝男も、私の彼氏の有起哉君も、ハイスペのエリートってモラハラ男になりやすいんでしょうか?」というもの。

 穂乃果さんの疑問に対し、筆者は次のように答えていきました。

 まずハイスペエリートたちは当然、受験でも就活でも勝者として成功体験を積み上げて来ているため、自分の進む道や自分の考え方が“正解”だと思い込んでいる割合が多くなります。


 ただし、自分の考えが正しいと思っているタイプが、誰でも彼でもモラハラ男になるわけでもありません。

 そもそも価値観は多様であって、えてして“正解は一つしかない”わけではありません。人それぞれの価値観ごとに正解は異なるということです。

自分の考えが“唯一無二の正解”と思い込んでいる

 例えば有起哉さんの転職についての考え方や人間関係についての考え方は、いろいろと問題をはらんだ主張ではありますが、考え方として“一つの正解”ではあるのかもしれません。

 しかし一方で、穂乃果さんの人間関係を理由に転職するという考えや、言葉遣いは悪くても中身は良い子だから友達でいるという考えも、紛れもなく“一つの正解”のはず。

 にもかかわらず、有起哉さんはなぜ穂乃果さんの価値観を否定して自分の価値観を押し付けようとしたのかというと、彼は自分の考え方が“唯一無二の正解”であり、それ以外は“不正解”だと思い込んでいるからなのではないでしょうか。

 自分の考えは正しいと思っているエリートのなかにも、価値観の多様性をきちんと理解できている人も多いです。

 自分にとってはこの考え方が正解だけれど、それは“一つの正解”でしかなく、人それぞれ考え方によって正解が異なるものだから、相手の価値観(=正解)を尊重しよう――そんなエリートもたくさんいます。

 要するに、エリートも2種類に大別でき、価値観の多様性を理解できているエリートと、理解できていないエリートに分かれるのです。そして、後者のエリートがモラハラ化しやすい傾向にあり、穂乃果さんの彼氏はまさにこのパターンでしょう。

実は世の中には「頭の悪いエリート」も少なくない

 穂乃果さんにここまで説明すると、「エリートは頭が良いはずなのに、どうして人それぞれに考え方が違って、価値観は多様なんだっていう、そんな当たり前のことがわかってない人がいるんでしょうか?」と尋ねられました。

 この質問に対して、筆者は穂乃果さんのある“思い込み”を正すところから説明しました。

 それは、「エリートは頭が良い」という思い込み。

 エリートは必ずしも頭が良いわけではなく、実は頭の悪いエリートも少なくないのです。


 どういうことか説明しましょう。

 まず、「頭の良さ」には2種類あります。

 一つ目は、学生時代にテストで良い点が取れたり、弁が立って相手を論破することが得意だったりするタイプの「頭の良さ」。

 二つ目は、世の中の真理を直感的に理解できていたり、人間関係の構造をナチュラルに俯瞰して見ることができたりするタイプの「頭の良さ」。

 一般的に「頭が良い」と言われる指標となっているのは一つ目のタイプです。

 そして二つ目のタイプは、必ずしもテストで良い点が取れるわけでもないし、必ずしも高学歴・高収入というわけでもないので、「頭が良い」と気付かれていないケースも少なくありません。

エリートには人格者もいればモラハラ人間もいる

 エリートの時点で一つ目の「頭の良さ」は兼ね備えているわけですが、二つ目の「頭の良さ」も備わっているかどうかはまったくの別問題。エリートでも世の中の真理や人間関係の構造をわかっていない頭の悪い人間もいるというわけです。

 ここまで説明すると穂乃果さんは納得した様子。

「なるほど……。有起哉君は、テストではいつも高得点だし論破するのも得意だけど、価値観の多様性を理解していないという意味で頭の悪い人間だったってことですね。だからモラハラ気質になってしまっているのか(苦笑)」(穂乃果さん)

 一口にエリートと言っても、素晴らしい人格者もいればモラハラ人間もいるということ。


 自分の価値観を押し付けることが「絶対に恋人のためになる」と妄信している頭の悪いエリートや、価値観の押し付けで恋人の愛が冷めていくという感情の構造をわかっていない頭の悪いエリートも、少なくない割合でいるものなのです。

<文/堺屋大地>

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【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。本連載意外に『SmartFLASH』(光文社)でドラマコラム連載、『コクハク』(日刊現代)で芸能コラム連載。そのほか『文春オンライン』(文藝春秋)、『現代ビジネス』(講談社)、『集英社オンライン』(集英社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『女子SPA!』(扶桑社)などにコラム寄稿。LINE公式のチャット相談サービスにて、計1万件以上の恋愛相談を受けている。公式SNS(X)は@SakaiyaDaichi
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