家族間の確執から、年末年始に実家に帰りたくないという人も少なくない。原因はそれぞれだが、金銭問題が引き金になるケースは決して珍しくない。
「金の切れ目が縁の切れ目」という言葉は、相手が家族でも起こりうるのだ。

金遣いの荒さが原因で両親が離婚、兄弟は別々に育った

「母の入院を手伝ったら“カネを出せ”と言われ…」正月に実家を...の画像はこちら >>
都内で暮らす笹川誠さん(仮名・45歳)も、その渦中にいる一人だ。両親は笹川さんが中学生の頃に離婚した。笹川さんは父に、3歳下の弟・豊さん(仮名)は母に引き取られ、そこから兄弟は別々の家庭で育つことになった。

「離婚の原因は母の金遣いの荒さです。美容医療やブランド物のショッピングなど、父のカードを使って3枚とも限度額まで達したことに父が激怒しました」

もともと実家が裕福で、甘やかされて育った母。祖父母の遺産も多額だったが、それをすべて使い果たしただけでは飽き足らず、父のカードにも無断で手をつけたのだ。

「当時は反抗期だったこともあり、母のことは本当に許せなかったです。しかも母は弟を溺愛していたので、僕には厳しく、弟には甘い。弟はどんなに成績が悪くても怒られないのに、僕は少しでもミスすると叱られる。ただ、結果として、弟の成績はどんどん下がっていきましたけどね」

両親の離婚後、笹川さんは都内でも有数の私立高校に合格、そのままエスカレーター式で大学に進学した。卒業後は大手建設会社へ就職し、安定した社会人生活を送っていた。

「一方、弟は高校に進学できたものの、卒業後しばらくの間はフリーターとして過ごしていたようです。
しかし、母親の知り合いのツテで地元の食品工場に就職したと聞きました」

40歳過ぎた弟からの突然の連絡とは…

離婚後、弟とはたまに連絡を取っていたが、母とは完全に疎遠だった。数年前に父が他界した時にも、葬儀に来たのは弟だけで、母は姿を見せなかった。「このまま母と連絡を取ることもないんだろう」そう思っていた矢先、昨年11月、弟から突然連絡が入った。

「母がポリープを取る手術をするとの連絡でした。命に関わる大きなものではなく、入院も1週間程度。ただ家族の同意が必要だと言われて、弟から『俺一人じゃ不安だから来てほしい』と頼まれました。弟は結婚していて、現在は母の家の近くで暮らしています。正直、もう40過ぎなのに何を言ってるんだ、と思いましたね」

弟がまったく頼りにならなかったため、笹川さんは仕事を休み、母の入院手続きから送迎、手術の立ち会いまで、すべてを引き受けることになった。

さらに手術が無事に終わった後も、退院までの間は母の家で待機する必要があったという。結局、正月休みだけでは足りず、有給休暇まで使った。一方、弟の豊さんが母の様子を見に来ることは一度もなかった。

母と弟からカネをせびられ…

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※写真はイメージです
その後、豊さんが実家に顔を出したのは母が退院してからだった。しかし、そんな弟と母が誠さんに向かって最初に口にしたのは、感謝の言葉ではない。
「カネの無心」だった。

「母からは『入院でお金がなくなったから、いくらか出してほしい』と言われ、仕方なく支払いました。さらに、退院後に必要な生活用品や食料品の買い物では、支払いはすべて僕持ちで、母も弟も1円たりとも出そうとはしなかったんです」

弟からは信じがたい発言まで飛び出した。

「まさかの『嫁が妊娠したから出産祝いをくれ』と言い出したんです。奥さんも弟と同じくらいの年齢で40代。これまで子どもがいないのを理由に夫婦で好きなようにお金を使い、貯金もしてこなかったようなんです。それで急に『子どもができたので、これからの生活が不安で……』と言ってきたんです。思わず『お前らが勝手に計画性もなしに作ったんだろ!』と言いそうになりましたよ。奥さんの前だったので堪えましたが……」

結局、10日間の滞在で十数万円もの金銭を負担させられた笹川さん。その後も、母と弟からは何度か連絡があり、カネを無心してきたという。

「今年の正月も『子どもが生まれたから会いに来てほしい』と弟から誘われていますが、会うつもりはありません。さらに母からも『正月くらいは家族で過ごしたい』と言われました。
長い間会わないうちに、母も少しは変わってくれたのではないかと、どこかで期待していた自分がバカでした」

たとえ血のつながった家族でも、カネ、カネばかりでは付き合う意味がない。いっそ切ってしまったほうが賢明といえるだろう。

<取材・文/結城>

―[年末年始の憂鬱]―
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