“残クレアルファード”というネットスラングができるくらい、認知度が高くなった「残価設定型クレジット(通称・残クレ)」。
アルファードなどの高級車に年収が低くても残クレを使えば手が届く……そんなメリットがありつつも、残クレの利用者が増えている背景はそれだけではありません。
いま、車両価格が右肩上がりになっていることに加え、ディーラー側には裏事情があるそうで……。今回は現役ディーラー営業マンから聞いたその実態をお伝えします。

営業マンの「成績」に直結する

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ディーラー営業マンの成績は、当たり前ですが「クルマの販売台数」で決まります。ですが、販売店によっては販売台数に対するインセンティブが少ないとのこと。筆者がディーラーに勤めていたのは10年近く前になりますが、当時は販売したクルマの金額や利益に関係なく台当たり1万円のインセンティブが貰えていました。

今はその事情が変わっているようで、台あたりのインセンティブが数千円と下げられているようです。その代わりに付帯商品の「残クレ」や「個人リース」の契約件数に応じたインセンティブが上乗せされている様子。

「販売台数が半分でも、全て残クレやリースで販売している営業マンの方が給料が高くなるんです」

こうして多くの営業マンが顧客に対して残クレやリースなどをアプローチしているとのことでした。

「残クレで売らない営業マン」には人権がない!?

さらに興味深い話が、残クレなどの販売率が低い営業マンは出世にも関わってくるということでした。

筆者が勤めていた頃は台数至上主義だったので「契約数が少ない営業マン=ダメ営業マン」というレッテルが貼られていました。しかし今は、「残クレやリースの利用率の少ない営業マン=ダメ営業マン」ということになるそうです。

確かに残クレやリースは、提携しているクレジット会社からディーラーに支払われる手数料収入があるため、“会社への貢献度”という視点では優遇されるのは理解できますが、極端にさえ感じます。

今回話を聞いたディーラーでは、個人リース利用が少ない営業マンを「特別な研修へ招待」しているとのこと。いわゆる“吊し上げ”の研修を行うことで「現金販売をさせないマシンづくり」をしているようにも思えました。


余談ですが、筆者が勤務していた時代は「電気自動車の販売台数が少ない営業マンは吊し上げ研修に参加」という罰ゲームがあったことを思い出しました。

個人単位ではなく店舗単位での評価基準

カーディーラーが明かす「最近の営業マンがやたらと“残クレ”をすすめてくる」意外な裏事情
高級車のカーディーラー営業
自動車業界の営業マンは個人成績至上主義から、所属している店舗ごとのチーム戦にシフトしているようです。店舗全体でクルマの販売台数や残クレ利用率の目標が課せられ、半期でそれを達成するとボーナスに反映される、という形式へ変化しているとのこと。

つまり、会社全体で残クレやリースの利用を強く推し進めているということがうかがえます。SNSなどで「特定の車種を新車で買うためには残クレ契約が必須だった」という投稿が散見されましたが、そういった背景があるのでしょう。

ただ「車を売ればいい」とされていた時代から、「車以外の商品も抱き合わせで販売し、台当たり利益を重視する」という時代に変化してきているようです。皆様も新車の購入を検討し、ディーラーを訪れる際には、このような背景があるということも念頭において話を聞くと良いかもしれません。

とはいえ、「残クレじゃなければ車が売れない」というのは法的に問題があります。もしも数字に追い込まれた状況にある営業マンがそのような態度をとってきた場合は、毅然とした対応をするようにしましょう。

<文/宇野源一>

【宇野源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。
X(旧Twitter):@gengen801
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