店舗側としては売上増といううれしい成果を得られた半面、ホットスナック商品は店舗内のフライヤーで揚げる必要があるため、従業員は注文をさばくために他の業務と並行して大量のホットスナックを揚げる必要に迫られた。SNS上には、従業員による投稿とみられる「他の仕事に手を付けられません」「春巻きやら揚げ鶏やらに脳みそを支配されすぎて」「何回手を消毒して取りに行ったか」といった悲鳴が続出。一日で300個以上も売れたという報告もみられる。
気になるのは、たとえ従業員が苦労して多く販売したとしても、その反動でセール終了後に揚げ物の売上が大きく落ちれば、月間トータルでみると売上は変わらず、店舗は“無駄な苦労をしただけ”という結果になってしまわないのか、という点だ。果たして実際はどうだったのか。運営会社に取材した。
ファミマやローソンに遅れて実質値下げキャンペーンを開始
ここ数年、コンビニ各社は集客のため、定期的に事実上の値下げセールを展開している。
大手3社のなかで先駆けとなったのが、ファミリーマートが2021年に始めた価格据え置きのまま増量するキャンペーンだった。その後は毎年実施しており、今年は8月から「お値段そのままデカくてうまい!!ざっくり40%増量作戦」を展開。弁当、総菜、スイーツなど14アイテムを対象に内容量を40%増量した。ローソンは23年に「盛りすぎチャレンジ」を初めて開催して以降、定番のキャンペーンとなっており、今年は6月と11月に実施。11月18日から2週間にわたり開催されたキャンペーンは、「プレミアムロールケーキ」や「からあげクン」など人気商品を含む計11商品が、価格据え置きのまま50%増量されるという太っ腹な企画だった。
そんな2社の動きを静観していた業界トップのセブンイレブンだが、昨年5月に「お値段そのまま増量フェア」を展開し、話題を呼んだ。
「ファミマとローソンは増量キャンペーンの期間中は売上が伸び、キャンペーンをきっかけに来店した顧客が対象商品以外の商品を購入したり手に取るといった経験を通じて、店の良さや魅力を認識してリピート客になるという効果も期待できる。また、実質賃金の減少で人々の家計が苦しくなるなかで“庶民に寄り添う”姿勢を示す大々的なキャンペーンを行うことは、消費者からのイメージ向上につながる可能性もある。近年は“ステルス値上げ”“他チェーンより高くて量が少ない”などとマイナスのイメージを持たれやすかったセブンとしては、競合2社の動きを無視できなかったのではないか」(元大手小売りチェーン管理職)
ネガティブなイメージが広まってしまった?
近年、セブンはイメージ低下につながりかねない出来事がSNS上で話題になるケースが相次いだ。2020年頃には惣菜類などの容器の底の一部が大きく盛り上がっているとして、「容器の底上げ」「ステルス値上げ」といった声が続出。21年には「練乳いちごミルク」の透明なカップにイチゴの果肉ピューレのデザインや、底に果肉が沈殿しているように見えるデザインがなされ、批判的な声が寄せられる事態となっていた。そんなセブンをしり目にファミマやローソンが実質的な値下げキャンペーンを展開することで、消費者の間に「ファミマやローソンは安い」「セブンはコスパが悪い」というイメージが広まってしまった面はあるかもしれない。それは各社の業績データにも表れている。コンビニ各社にとって重要な経営指標である全店平均日販(一店舗あたり・一日あたりの平均売上高)をみてみると、25年2月期はセブンは69万2000円と、他の大手2社を11万円以上上回っているものの、前年度からの伸び率をみると、セブンは0.1%増で横ばい。一方、ローソンは3.2%増、ファミマは0.7%増とセブンに差をつけている。
さらに25年2月期(24年3月~25年2月)の12カ月の既存店売上高をみてみると、ファミマとローソンはすべての月で前年同月比プラスになっているのに対し、セブンは5つの月でマイナスを記録している。
増えるコンビニチェーンの競合相手
もっとも、こうした状況にセブンも手をこまねいてきたわけではない。昨年9月からは手頃な価格の「うれしい値!」シリーズの商品拡充を進め、購入頻度が高い定番商品を中心に実質的な値下げを実施。5月からは、従来のフタ付きプラスチック容器の惣菜商品より割安な、フィルム包材を使用した「パックデリ」シリーズを本格的に展開するなど、「庶民の味方」をアピールする施策を展開している。「セブンを運営するはセブン&アイ・ホールディングス(HD)は昨年以降、カナダのアリマンタシォン・クシュタールからの買収提案や、イトーヨーカ堂をはじめとするスーパー事業と外食事業の売却など、経営的に大きな課題への対応を迫られていた。それらが今年、ひと段落したことで、来年以降はさらなる店舗力の向上に注力してくるだろう。ただ、今やコンビニ各社は同業他社だけにとどまらず、首都圏を中心に積極的な出店攻勢をかける低価格の小型スーパー『まいばすけっと』や、食品類や日用品を拡充させるドラッグストアとも真正面から戦っていかなければならず、競合する存在が増えている。なので、これまで以上に経営の舵取りが難しくなる」(元大手小売りチェーン管理職)
セール期間中は通常時の約3倍の販売
そんなセブンが11月に展開した「揚げ物日替わり半額セール」は、「揚げ鶏」「北海道産じゃがいもの牛肉コロッケ」「五目春巻」を日替わりで定価の半額で販売するというもの。それぞれ111円、50円、56円(すべて税抜)という破格の安さだったこともあり、セール期間中は販売量が通常時より大きく伸びたらしい。運営元のセブンイレブン・ジャパンは日刊SPA!の取材に対し、次のように説明する。
「フライデーセールは『通常時の約3倍の販売』となりました。今までセブンイレブンで揚げ物を購入していなかったお客様女性客、若いお客様中心にご購入いただけました」
販売の急増で現場は対応に追われた。
「『揚げ鶏』はセール中は一日で150個以上は売れた。通常の業務に加えて大量の揚げ物を揚げなければならず大変だった」(都内のセブン店舗従業員)
「売れましたね。すごかったですね」(別の店舗従業員)
セール後は販売が増加?
気になるのは、セール終了後に反動で揚げ物類の売上が大きく落ちなかったのかという点だ。店舗としてはセール期間中に大きく揚げ物の売上が伸びたとしても、その後に落ちて月全体でみると平均並みになったとすれば、“つらい思いをしただけ”という結果になってしまう。そこで複数の店舗に取材したところ、意外にも以下のような声が聞かれた。「セール直後はちょっと減ったかなという程度で、大きな落ち込みはなかった」
「減ったという感覚はない」
「セール後も普段と売れ行きは変わらなかった。(「理由は?」との質問に)買う人は買うし、買わない人は買わないので」
セブンイレブン・ジャパンは次のように説明する。
「セール後はセール前と比較し販売は増加しています。セールをきっかけに味を知っていただいたお客様の中に、その後もご購入いただいている方が一定数いらっしゃると考えております」
現在はレジ横で販売する店内調理したメロンパンやクロワッサン、クッキーなどの「セブンカフェベーカリー」シリーズに注力し、提供店舗を拡大しているセブン。次の一手が注目される。
<取材・文/山田浩二>
【山田浩二】
飲食チェーンや学習塾、小売り企業を経てIT企業でシステム開発業務に従事。現在はフリーのライターとして主に企業・ITなどのジャンルに関する取材・記事執筆を行っている。
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