だが一方で、ぬいぐるみの人気が高まるほど、「手放されるぬいぐるみ」も増えているのではないか。
ぬい活当事者、ゴミ清掃員、人形供養を行う住職。三者の声から、その背景を探った。
“ぬい活ブーム”に何を思うのかは三者三様
「大きなブームが来ているという実感はないですね。ぬいぐるみ関連のオフ会が増えた感じもないですし。ただ、外でぬいぐるみと一緒に写真を撮っていても、変な目でみられなくはなりました(笑)」(秋津さん)
一方で、ピン芸人兼ゴミ清掃員のタケウチパンダさんによれば、家庭から出されるゴミの中に、ぬいぐるみが増えているという。
「小さなものはゴミに紛れて見えないだけだと思いますが、大きなぬいぐるみはここ2年くらいで増えた印象がありますね。5年くらい前、コロナが広がって断捨離が流行った時も、ぬいぐるみのゴミを多く見かけましたが、それ以来の波という感じです」(タケウチパンダさん)
また、遺品供養などとともに、人形供養も受け付けている寺院「泰聖寺」(大阪市)の純空壮宏住職は、ブームの影響は大きいと話す。
「以前までは、供養のご依頼は月に10~20体でしたが、ここ2年ほどは100~150体になりました。また、和人形やフランス人形など職人さんが作ったようなものが多かったですが、最近はクレーンゲームにあるようなキャラクターぬいぐるみ類の増加が顕著ですね。
ぬいぐるみのゴミは「時代を映す鏡」
ゴミ清掃員のタケウチパンダさんによれば、“ぬいぐるみゴミ”は量の増減だけでなく、その内訳にも変化があるという。「ゴミ清掃員になって11年経ちましたが、その間ずっと見かけるのがディズニー系。ミッキーマウスやミニーマウス、くまのプーさんが特に多いです。ここ数年では、星のカービィや、耳が長くて目が青い犬のようなキャラクターのぬいぐるみが増えました」(タケウチパンダさん)
長耳に青目の犬のキャラクターは、サンリオの「シナモロール」だろう。同キャラクターは、2020年から2024年までサンリオキャラクター大賞を5連覇(2025年は2位)を果たしている。
また、「星のカービィ」も2024年にマクドナルドのハッピーセットのおまけとして登場するも、あまりの人気に発売翌日には売り切れ状態となったことは記憶にも新しく、やはり、ゴミは世相を映す鏡と言えるだろう。
「カービィ」が好きだからこそ、つらい瞬間が
ぬいぐるみは物であっても、動物や人を模した形をしている。“顔があるもの”を捨てる瞬間には、清掃員としても複雑な思いがあるようだ。「やっぱり、普通のゴミとは違って心がチクっとしますよ。星のカービィは昔から好きでゲームもよくやっていたので、カービィが入っているゴミ袋を収集車に飲み込ませるときに、ギリギリで思わずストップボタンを押してしまいました。でも、仕事なので結局は飲み込ませないといけないんですが、プレスされていくのが忍びなかったですね」(タケウチパンダさん)
中には、“捨てた人の思い”を感じ取ることができるゴミも。
「くまのプーさんがゴミ袋に入っていた事があるんですが、収集車に入れようとしたら『カツッ!』という音がしたんです。これは、不燃ゴミが混ざっている時の音なので、袋を開けて中を確認しました。すると、一緒にはちみつの瓶が入っていたんですよ。
そうした思いを感じながらも、瓶は不燃ゴミであるため、やむなく分別して収集されていったのだという。
“捨て方”問題に正解はあるのか
ぬいぐるみに関わるこうした心情から見ていくと、ぬいぐるみは単なる綿の集合体ではない。清掃員の方の心の負担を、少しでも軽減するためにも、ぬいぐるみや人形は布や新聞紙などにくるんで捨てる方がいいのかもしれない。「ある時、アンパンマンのぬいぐるみがプレス機で首だけちぎれるのを見たりしたこともあって、確かに姿が見えない方がありがたいですね。それに、可燃となると、生ゴミと一緒になるので、回収した時点で生ゴミの汁でグチャグチャになったアンパンマンとかも、見てて気持ちがいいものではないです」(タケウチパンダさん)
とはいえ、ぬいぐるみ好きの秋津さんは、やや厳しい視点を持っていた。
「僕は、ぬいぐるみを捨てることはありませんが、万が一あるとしたら、少しでも苦しまないように配慮すると思います。ただ、姿が見えないように包むのは、あくまで自分が目を背けたいからであって、ぬいぐるみのためというのは、言い訳のようにも感じますね」(秋津さん)
なぜぬいぐるみを手放すことになるのか
「家じまいや引っ越し、終活のための断捨離など人生の転機で、人形やぬいぐるみを手放される方も多くいらっしゃいます。他にも、新しいパートナーが出来て、元恋人との思い出の品を手放さなくてはならなくなった方などですね」(純空壮宏住職)
多くの人は、仕方なく手放すしかない事情があるようだが、軽薄さを感じる例も増えてきている。
「昨今はクレーンゲームが流行していますよね。ああいったゲームは景品を獲るまでが楽しみで、獲った後はどうでもよくなってしまうのかもしれません。簡単に手放している印象の方もいらっしゃいます」(純空壮宏住職)
さらに、ぬい活・クレーンゲーム以外のブームが背景にあることも。
「最近の、心霊ブームの影響です。テレビ番組やYouTubeなどで『災いを起こす人形』『動く人形』などの企画があり、それを見た方からの依頼も増加しています。ごく少ないですが、『うちの子(ぬいぐるみ)も動いたので、供養してほしい』と、顔を青くして来られる方もいらっしゃいますね」(純空壮宏住職)
お寺に無断で放置されるケースも散見
ブームとなって関わる人が増えると、その中にはマナーやルールを逸脱する人も比例して増加する。純空住職は、次のような困りごとがあるという。「うちでは、郵送や予約をいただいた上でのお持込で供養いたします(供養料は500円~1,000円程度)。ですが、何の相談もなく、境内にぬいぐるみなどを勝手に置いていかれることがあり、大変困っています。無断で放置するのだけはやめていただきたいですね」(純空壮宏住職)
こうした迷惑な事情もある中、前出の秋津さんは次のような選択肢もあるのではないかと語る。
「親戚や友人の子どもなどに受け継いでもらうパターンです。もしくは、必要とする施設に寄付することも考えられますね。他にも、フリマアプリで引取先を探すこともあるかもしれません。もちろん、自分のペットを売りに出すと考える人がいないように、ぬいぐるみに愛着と命を感じていれば、売るという選択肢は出ないと思います」(秋津さん)
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人型・動物型という形状や、共に過ごした時間によってぬいぐるみに対して“命めいたもの”を感じるのは自然なことだ。
そこで大事なことは、「どう迎え、どう手放すか」というモノとの付き合い方そのものではないだろうか。
<取材・文/Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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