駆け巡らせていたのは主にSTARTO ENTERTAINMENT社のタレントのファンたちとみられるが、STARTO社タレントのファンたちのいう「社歌」とは一体何を指すのか(そもそも同社に正式な社歌が存在するかどうか知らないが)。
ここで呼ばれていた「社歌」とは、V6の楽曲「Can do! Can go!」のことである。
同曲は1998年にリリースしたV6のアルバム『SUPER HEROES』に収録されていた楽曲だが、11月29日に放送された日テレ系音楽特番『ベストアーティスト2025』にて、同社の所属グループtimeleszがこの曲の歌唱パフォーマンスを行なったことで、「社歌を歌うな」といった内容の投稿が多数あがり、プチ炎上状態となった。
「Can do! Can go!」が社歌になったワケ
そもそもSTARTO社のタレントが先輩または後輩の楽曲を歌うことは、ジャニーズ事務所時代から特に珍しいことではない。今回の歌唱も、同特番の名物企画ともなっている複数グループによるシャッフルメドレーの中のひとつだった。
たとえばHey! Say! JUMPがSMAPの「夜空のムコウ」、SixTONESがKinKi Kidsの「シンデレラ・クリスマス」を、Snow Manは嵐の「Happiness」を同メドレーで披露している。
なぜtimeleszだけが、こうなったのか。
それはがなぜ「Can do! Can go!」が社歌と呼ばれるのかということにもつながる。
同曲は、V6の楽曲である一方で、長きにわたって歴代のジャニーズJr.(現ジュニア)たちに歌い継がれてきた曲だという側面ももつ。
ジュニアイベントのクライマックスに大人数でパフォーマンスされる機会も多く、大先輩の曲でありながらもジュニアを象徴するような楽曲として愛され続けてきた曲なのである。
さらにいえば、同曲は当時のジャニーズJr.たちが出演した番組『8時だJ』のオープニングテーマであり、相葉雅紀・松本潤(嵐)、横山裕(SUPER EIGHT)の3人主演による映画『新宿少年探偵団』の主題歌としても採用された曲でもある。
その後、歴代の人気タレントたちがジュニア時代に歌ってきた、誰もがこの曲を通って成長していったといってもいい楽曲だ。
ファンにとっては、それぞれの記憶に残る「Can do! Can go!」があっただろう。何度も言うがV6の曲であるものの公式ソング、すなわち「社歌」と呼ばれ愛される存在となったのはそういうことだ。
timeleszの「何やっても炎上」状態は継続中か
それをtimeleszが歌った。今回の「社歌歌うな」騒動は、「Can do! Can go!」を歌ったのがtimeleszだったから。極端にいえばそこが大きいのだろう。今回のシャッフルメドレーでV6の他の曲を歌えば問題なかったのだろうか。そういうことではない。前述したように、この曲は歴代のジュニアたちに歌い継がれた曲である。
それを、オーディションによるメンバー加入という、これまでの旧社の慣例にない手法によってジュニア経験のないメンバーが在籍するグループが歌ったことで、ある種の“聖域”を侵されたような気持ちになったファンも一部にいるであろうことは理解できる。
Sexy Zone時代からの改名再出発の過程においてのそのオーディションが、たびたび炎上したり、「菊池風磨構文」というものまで生み出すほど話題性があったことは確かだ。
今もtimeleszにどこか潜在的にネガティブな感情を抱いてしまう人は一定数存在するのだろうなということも実感した。
「何やっても炎上する」とオーディションの途中段階で菊池がこぼしていたような状態は、今もうっすら続いているのかもしれない。
今回の「Can do! Can go!」だって、シャッフルメドレーのラストに参加8組が一緒に歌うなどすれば、「エモい!」「メロい!」など絶賛されたのではないかという気もする。そのぐらい多くのファンに愛された名曲である。
旧ジャニーズ時代から受け継がれてきた社歌は他にも
「Can do! Can go!」以外にも、旧ジャニーズ時代から、歴代のタレントに歌い継がれた定番の曲、同じように「社歌」扱いとされていそうな曲はいくつもあることは言うまでもない。たとえば少年隊の「仮面舞踏会」や近藤真彦の「ミッドナイト・シャッフル」あたりは、ジュニアたちももちろん歌うが、さまざまな音楽特番のクライマックスでデビュー組がズラリと並び歌う姿も印象に残る人は多いだろう。
光GENJIの曲として93年にリリースされたあと、NYCやSexy Zone、ジュニア Boys、そしてなにわ男子などなど、さまざまなグループによって歌われてきた「勇気100%」は、正式リリースされた機会も多く、これもまた「社歌」のような存在だ。
本末転倒ではあるが、社歌社歌言っても、その曲を「社歌」と呼び親しまれてきた会社、ジャニーズ事務所はすでにこの世に存在しないわけである。
そして、「社歌」という概念自体がとうに古いものとなっているような気もするが。
よく言う「曲に罪はない」ではないが、が時代を超えて響く名曲であることは変わりはない。
そんな考察をすること自体に、この曲のフレーズ
<シュミレイションなんか 誰にも されたくないね>
というブーメランで返ってきそうだが。
<文/太田サトル>
【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。
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