―[あの日夢見た雲組]―
「僕が見たかった青空」、2023年6月15日に乃木坂46の公式ライバルグループとして結成したアイドルグループ(通称:僕青)だ。
同グループはセカンドシングル以降、シングル選抜システムを採用。
メンバー22人(1名活動休止中)は、表題曲やメディア出演をしていく選抜の「青空組」と、ライブなどを中心に活動する「雲組」の2つチームに分かれて活動している。
この連載「あの日夢見た雲組」は、7枚目シングル「あれはフェアリー」で構成された雲組単独公演のライブとともに、雲組で切磋琢磨するメンバーに注目していく。今回は、7枚目シングルに収録される雲組の新曲「カイロに月」のMV撮影の密着取材を特別編としてお届けする。
「不安」よりも「ずっとソワソワした感じ」
MV撮影当日、初めてソロでメインメンバーを務める16歳の工藤唯愛は、「不安な気持ちというか、ずっとソワソワした感じなんです」と心境を打ち明けて、早朝からの撮影に臨んでいた。6枚目シングルの雲組曲「虹を架けよう」では、八重樫美伊咲と二人でメインメンバーを担った経験はあるが、そのときとは違う状況に気持ちの整理がついていなかったのかもしれない。
僕が見たかった青空
今回の楽曲は最後の冬休みを迎えた主人公(工藤)が、学校生活のさまざまな記憶に思いを馳せながら未来へと進んでいく冬の青春ソング。最初のシーンが終わった工藤に、「ゆあさーん!」と抱きついたのは安納蒼衣。1年前から朝の
ラジオ体操が日課だという元気な安納が登校シーンに加わると、工藤の緊張も少し和らいだように見えた。朝の登校シーンでMVには声が乗っていないが、「持参してきたおやつ」と「芋掘り」の話で盛り上がっていたそうだ。
ジャスチャーしりとりに夢中になりすぎて…
僕が見たかった青空
旧学校のロケ地に行くと、制服姿の雲組メンバーも合流。ここの撮影は工藤、青木宙帆、秋⽥莉杏 、萩原心花、⼋重樫美伊咲が廊下で仲良くはしゃぐシーンからスタート。表情と動きを引き出すためにジャスチャーしりとりを行っていたのだが、「当てるのに真剣になりすぎて笑顔が消えてるよ(笑)」と監督からダメ出しを受ける場面も。
僕が見たかった青空
また、雲組10人が教室で授業を受けたり、屋上で持永真奈と今井優希が工藤の相談に乗ったり、僕青らしい青春を感じさせる雰囲気。休憩の合間にも、デジカメでお互いを撮影し合いながら和気あいあいと進んでいった。
前日の振り入れに募る不安に負けない決意
僕が見たかった青空
雲組曲の魅力といえば、歌詞とリンクしたストーリー性のあるダンスパフォーマンス。だが、この曲の振り入れが行われたのは撮影前日で、個々のインタビューでも不安を口にするメンバーが多かった。
僕が見たかった青空
7枚目シングルの新衣装に着替えて、午後からダンスシーンの撮影がスタート。序盤は振りとフォーメーションを追いかけるのに必死なメンバーが多く、ダンスの先生が何度も入って、動画を見ながら確認を重ねていた。少し不安そうな表情になる工藤に対しても宮腰友里亜や今井、安納などが明るく声を掛ける。そして、グループ最年長の伊藤ゆずが中心になって、「笑顔を忘れずに最高のMVにしましょう! 円陣で“エンジン”!!」と気合いを入れた。2時間半にも及んだ、新生雲組の決意が感じられるメンバーの表情とダンスシーンにぜひ注目してもらいたい。
「僕青でのMV撮影はこれで最後になります」
僕が見たかった青空
夕方から喫茶店での撮影へ。放課後、期末テストに向けて勉強に励む工藤の前に、憧れの人が偶然現れて……。セリフではなく、工藤の視線で感情を表現する重要なシーン。監督から「もっと目線を意識してみて」などの声が飛んでいたが、テイクを重ねていくたびに変わっていく彼女の姿があった。
僕が見たかった青空
工藤、安納、今井、持永の4人シーンの撮影後には、年内で卒業する持永に向けてスタッフから「僕青でのMV撮影はこれで最後になります。今まで本当にお疲れさまでした!」と声が掛かると現場は拍手に包まれた。
僕が見たかった青空
カイロで温めながら進む撮影
陽が落ちると、冷たい夜風が吹き始める。チェックのコートに赤いマフラー姿で、最後の撮影をひとりで待つ工藤の頬がほんのり赤く染まっていた。
僕が見たかった青空
カットが掛かるたびに、ポケットからカイロを出してそっと温める。雲行きが怪しくなって、小雨がポツポツと降り始めた。難航していたラストの“未来に向けて強く踏み出す”シーンで、ようやく監督からOKが出ると彼女の顔にも安堵の表情が見られた。
雲組10人で支え合った撮影「少しだけ強くなれた」
ロケバスに戻るときには、寒さで体が少し震えていた。席にゆっくり座ると、朝から纏わりついていたソワソワからやっと解放されたように吐息を漏らす。
すべての撮影が終わり安堵の表情を見せる工藤
雲組を背負うのは自分ひとりじゃない、雲組10人で支え合いながら乗り越えた。彼女は胸に手をそっと置いて、「少しだけ強くなれた気がします」と小さく頷き、「家に帰ったらお風呂で温まって、ご褒美のアイスを食べて自分を労ってあげたいと思います」と無邪気に笑った。
ポケットの中 温かいカイロみたい 触れるたび 勇気が灯るよ——。雲組のぬくもりが心に寄り添う一曲になりそうだ。
【僕が見たかった青空】2023年6月15日に結成したアイドルグループ、通称は「僕青」。7枚目シングル「あれはフェアリー」が発売中。僕が見たかった青空の2025年を締め括るワンマンライブ「BOKUAO青春納め2025」が12月28日(日)に東京・TACHIKAWA STAGE GARDENで開催決定。
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<取材・文/吉岡 俊 撮影/星 亘(扶桑社)>
―[あの日夢見た雲組]―