今回は、電車内での出来事が“今でも胸に残り続けている”という2人のエピソードを紹介する。
降車間際に言われた“捨て台詞”
高橋茉奈さん(仮名・20代)は、朝の通勤ラッシュの電車に乗り込んだ。ドア付近にからだを滑り込ませた瞬間、背後から“ため息混じりの圧力”が伝わってきたという。
「後ろの女性が、ずっとイライラしているのがわかりました。肘で押してきたり、小突いてきたりしてたんです」
駅に到着し人が動くたびに、その女性だけが意図的に押してくる感覚があった。
「背中に体重をかけて、ため息をわざと聞こえるように吐かれました。距離感も異様に近かったです」
降車駅が近づいたタイミングで、乗客が一斉にドアのほうへ動いた。高橋さんは、背中を強く押されてよろけてしまったそうだ。
そして、ようやく姿勢を立て直し、降りようとしたそのとき……。
「なんなの? 親の顔を見てみたいわ!」
背後から“そう”はっきりと聞こえた。言葉の意味がすぐには理解できず、周囲の乗客も驚いたような表情を見せていたようだ。
「私は、本当に何もしていないんですよ。
見ず知らずの人からの暴言が、高橋さんの胸に今でもずっと残り続けているという。
座ろうとした瞬間に割り込んだ女性
佐野雄二さん(仮名・60代)は、足腰が悪く、毎朝杖をつきながら満員電車に乗っている。座れないのはつらいが、「この時間帯では仕方がない」と諦めているそうだ。
ある日、目の前にいた女子高生が突然声をかけてきたという。
「彼女が『どうぞ』って席を譲ってくれたんです。本当にやさしい人で、胸が熱くなりました」
しかし、“その感動”は一瞬でかき消された。
「お礼を言おうとしたとき、横にいた女性が“スッ”と私と彼女の間に入り込んで、座ったんですよ。“忍者か?”って思う速さでした」
佐野さんも女子高生も、すぐには状況を把握できなかったようだ。
譲った側が“申し訳なさそうに”していて…
「女性は最初から座っているかのように、スマホをいじり始めました。私も彼女も“目が点”でしたね」
譲った側も譲られた側も、どちらも気まずい沈黙が流れたという。
「彼女が申し訳なさそうにしていたので、逆にこっちが申し訳なく思いました」
結局、席に座った女性は終始スマートフォンに視線を落としたまま、一度も“こちらのほう”を見ることはなかった。
「降りる前に何か言ってやろうかとも思いましたが、何も言えませんでした。情けなかったです」
女子高生へ小さく会釈をして電車を降りた佐野さん。
「腹の底では怒りが収まりませんでした。特別な事情があったのかもしれないと考えたけど……やっぱり納得できませんでしたね」
朝の車内で起きた数分の出来事は、今でも佐野さんの胸に引っかかり続けている。
電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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