12月6日深夜3時半、FIFAワールドカップ2026(以下、W杯)の組み合わせ抽選会が行われ、日本はオランダ、チュニジア、そして「欧州プレーオフ勝者」と同組に入った。史上最強と称される日本代表への期待が高まる中で、視聴者の間でとりわけ話題となったのは、いつまでも続く“前座”だ。
深夜1時半から始まった長丁場の中継に、SNSでは「早くクジ引け」や「まだ始まらない」と嘆く声も多く見られた。
 週末とはいえ、時差があるゆえに丑三つ時。にもかかわらず、生配信で同時接続38,000人超えを達成したチャンネルがある。それは、イングランド・プレミアリーグを中心にサッカーを語るYouTubeチャンネル『プレチャン』(登録者数23.4万人)だ。

 さて、W杯で名を上げた選手は、現所属より格上のクラブにステップするもの。古くは、98年W杯後の中田英寿氏のキャリアがまさに当てはまる。中田氏は、念願叶って当時最高峰とされたイタリア・セリエAに移籍を果たしたわけだ。だが、四半世紀を経て、覇権はフットボールの母国に渡った。今現在、世界一レベルが高いリーグは間違いなくプレミアリーグだろう。

 そこで今回は、W杯での生配信にも期待が高まるプレチャンのりょーさん、伊藤さん、ヨップさんの3人に、門外漢でもわかる“プレミアリーグの魅力”とはなにかを語ってもらった。

プレミアリーグを「年に300試合以上配信する」3人組を直撃。...の画像はこちら >>

プレミアリーグには「画面越しでも伝わる熱がある」

——まず、前提としてプレミアリーグの魅力はどういったところにあるのでしょうか。

りょー:どのチームが勝ってもおかしくない。そんなドキドキハラハラを毎試合味わえる点は最大の魅力と言えると思います。


ヨップ:たしかに。ハズレの試合はないですね。

伊藤:直近では、第14節のフラムとマンチェスター・シティの一戦で、4対5という点を取り合う派手な試合もありました(笑)。

りょー:さらに、W杯で活躍した選手がプレミアリーグでも躍動する。例えば日本人で言うと、前回のカタールW杯で活躍した三笘(薫)選手が、その後チームでも結果を残していましたね。これによって、プレミアリーグの人気も高まったのではないでしょうか。

ヨップ:スタジアムの雰囲気も唯一無二だと思いますよ。画面越しでも伝わる熱があるので、深夜の配信でもつい盛り上がっちゃいます。

「年に300試合以上配信」好きになるきっかけを作りたい

——試合の画面を映さずに一緒に雑談をしながら観戦できる生配信も、プレチャンの人気コンテンツの一つですよね。年間でどれくらい配信しているんですか?

伊藤:試合ごとに時間帯がバラバラなので、合計すると年に300回以上は配信をしていると思います。特におすすめしたいのが、ヨップのリアクションです。

りょー:ヨップの嘆きは人気ですね。Tシャツにもなってます(笑)。


ヨップ:恥ずかしいからやめてほしいですね(笑)。

伊藤:そんな我々の反応を楽しみながら、チームが勝った時の喜びやゴール時の盛り上がりを一緒に味わってほしいですね。

——私も生配信を何度も拝見していますが、同級生と部室で会話をしているような感覚でサッカーを見ることができるので、非常に楽しいです。

りょー:ありがとうございます。そして配信をした試合を中心に、その節ごとにあった試合を解説する「節まとめ」の動画も投稿しています。ほかには、移籍選手の情報からクイズ企画まで、プレミアリーグを好きになるきっかけの一つになってくれれば嬉しいという思いで活動しています。

ヨップ:知識を深めるというよりも、プレミアリーグを一緒に楽しめる場を提供していきたいですね。

推しは「アーセナル」と「マンチェスター・シティ」

プレミアリーグを「年に300試合以上配信する」3人組を直撃。「部室で盛り上がっているような空気感」で登録者数は23.4万人に
りょーさんが応援するアーセナルは目下絶好調を維持
——たとえばJリーグであれば、地元のチームを応援する……というのが自然な流れかと思います。一方で海外のリーグの場合、“推しチーム”を作るうえでのハードルがあるかもしれません。皆さんに応援するチームの魅力について熱く語っていただくことが、迷える初心者の一助になるはずです。

りょー:僕は15年以上「アーセナル」を応援しています。現在はプレミアリーグ、そして欧州の強豪チームがしのぎを削るチャンピオンズリーグ(以下、CL)の2つで首位を走っているアーセナルですが、実は長年、優勝から遠ざかっています。ファンとしてはもどかしいです(笑)。


 しかし、そんな不器用ながらも、もがいているところに魅力があると感じています。プレミアリーグでは3年連続で2位。この成績からも分かるように、良いサッカーをしているけれどもなかなか報われない。

 だからこそ「放っておけない、支えたい!」と強く思うんです。20年以上優勝していないアーセナルがタイトルを獲得したらどんな気持ちになるんだろう……。想像がつかないんですよね。

——ぜひ、優勝が決まった瞬間のりょーさんを、生配信で見たいですね。では、伊藤さんの応援しているチームについて教えてください。

伊藤:僕が応援している「マンチェスター・シティ」の最大の魅力は、やはり“強さ”でしょう。史上初の4連覇を果たしたほどですから、間違いなく結果にコミットしてくれます。

 その上で、所属選手のキャッチーさにも注目してほしいです。特にノルウェー代表のハーランド選手は、世界の中でもトップオブトップのストライカーなんです。


 しかし、一世を風靡したシティも昨シーズンは苦しい時期を過ごしました。黄金期が過ぎ、今は再構築している状態。これまではスマートにあっさりと勝ち抜くことが持ち味だったシティが、若い新戦力たちを迎えて粘り強く戦う姿に、ぜひ注目してほしいです。

かつて常勝軍団だった「マンチェスター・ユナイテッド」

——マンチェスターと言えば、ヨップさんが応援するチームもマンチェスターにあるんですよね。

ヨップ:はい。僕は同じマンチェスターでも、「マンチェスター・ユナイテッド」を応援しています。良くも悪くも派手なチームなので、最近サッカーに興味を持ち出した人であったとしても、見ていてとても面白いと思います!

 そしてチームのブランド力も魅力の一つです。かつては常勝軍団として、プレミアリーグを超えて世界のサッカーを先導してきました。歴史・知名度は随一だと思います。

 ただ、近年は結果がついてこない。苦しいシーズンが続いています。ですが、昨シーズン途中から指揮を取るルベン・アモリム監督のもと、最近はチームの状態も上向きなんです!

 ぜひ、再び力強さを取り戻す過程を一緒に応援してくれたら嬉しいですね。
 
——皆さんの応援するチームには代表クラスの選手も多いので、所属選手がW杯のメンバーに選ばれる可能性も高いでしょう。
なので今から追っておくと、より熱量を持ってW杯を観戦できそうですね。


今期の新加入で“当たり”の選手は?

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マンチェスター・シティは実績十分のGKを獲得
——各チームの魅力が伝わる熱いプレゼンをありがとうございます。ところで、皆さんの応援するチームは、移籍市場においても主役であるように感じています。そこで今季の推しチームにおける「欠かせなかった“マスト・バイ”の移籍」を教えてください。

•アーセナル→マルティン・スビメンディ(スペイン代表)

りょー:堅守を誇るアーセナルにとって、スペイン代表のスビメンディの獲得に成功したことは素晴らしい補強でした。ボランチやアンカーなど、中盤の底を主要ポジションにしており、彼がチームのバランサーなんですよ。

 そして、守備だけでなく攻撃面でも真価を発揮しています。特にパスの配給面は強みです。スペイン代表でも主軸ですから、W杯でも彼のプレイを楽しめることでしょう。彼が他のチームに移籍していたらと思うと……。恐ろしいですね(笑)。

•マンチェスター・シティ→ジャンルイジ・ドンナルンマ(イタリア代表)

伊藤:僕は今シーズン移籍してきたイタリア代表のゴールキーパー、ドンナルンマを挙げたいです。実は、当初はこの移籍には懐疑的でした。


 というのも、シティの下部組織出身であるジェームズ・トラッフォードに、これからのシティのゴールマウスを守ってほしいと思っていたからなんです。しかしシーズンが始まると、少し不安定なパフォーマンスが続いてしまいまして……。

 そんな中、パリ・サンジェルマンでCLを制した世界最高クラスのGKドンナルンマを獲得できることになったんです。手のひらを返すようで悪いですが、彼がゴールマウスを守っているだけで、安心感が違いますね(笑)。今考えると、彼の移籍は“マスト”であり“サプライズ”な移籍でした。

•マンチェスター・ユナイテッド→ブライアン・エンベウモ(カメルーン代表)

ヨップ:今のユナイテッドにとって、エンベウモを獲得できたことは素晴らしかったですね。攻撃的なポジションを担っている選手で、現状、チーム内で最も得点を決めている選手なんです。

 彼がいると、攻撃のクオリティが明らかに一段階上がります。得点力はもちろん、走力や馬力は非常に魅力的です。さらに守備も懸命にこなしてくれるので、今シーズンに移籍してきた選手ですが、今ではもう欠かせない選手です。今後さらに世界を代表する選手になっていくと確信しています。

今でも色あせない日本人選手の記憶

——まさしく、今季のチームを象徴する選手たちですね。そして近年の移籍市場全体を見ても、日本人選手を始めとするアジア圏の選手も人気です。それに伴い、日本におけるプレミアリーグの人気も高まっていますよね。長い期間プレミアリーグをご覧になられているプレチャンの皆さんも、それは感じていますか?

りょー:そうですね。1番の転換期は、香川真司(現セレッソ大阪)がユナイテッドに移籍したことだと思います。

ヨップ:たしかに。前年度、欧州におけるベストイレブンに選ばれた香川を、ユナイテッドが主力待遇で獲得したんです。当時、最強時代とも言われていたチームに日本代表の10番が移籍したわけですから、大きな話題となりました。

伊藤:さらに岡崎慎司もレスターというチームで、奇跡のプレミアリーグ優勝に貢献しましたから、日本人にとってプレミアリーグが少しずつ身近なリーグになっていったと感じますね。

現地で見るからこそ感じられる熱気が

プレミアリーグを「年に300試合以上配信する」3人組を直撃。「部室で盛り上がっているような空気感」で登録者数は23.4万人に
現地で観戦するメリットは簡単には語りつくせない
——プレミアリーグがますます身近な存在になっていく中で、「一度は本場で観戦したい」と思う人も増えていそうです。プレチャンでは現地観戦のイベントも企画されているとか。

りょー:そうなんです。2月に「プレたび」という現地観戦ツアーを開催予定です。強豪同士のビッグマッチですから、スタジアムの熱気はいつにもまして高いことでしょう。参加者は若者から親子連れまで幅広く、1人で参加される方も多いですね。

伊藤:1人での現地観戦に不安を抱いている方には、ぜひ参加してほしいです。

——画面越しでも楽しいプレミアリーグですが、現地で見ると価値観が変わりそうです。

ヨップ:間違いないですね。スタジアムの熱量に圧倒されるだけでなく、実際に動いている選手を生で見ることができる。これは非常に貴重な体験です。

りょー:さらにプレミアリーグは選手の入れ替わりも激しいと感じています。ですから「この組み合わせが見られるのは今だけ」という瞬間に立ち会えることもあります。そう考えると、現地で見る意味はものすごく大きいですよね。

前回W杯がチャンネルの転換期に

——プレミアリーグで活躍する選手も多く参加するであろうW杯が、来年開催されますね。

りょー:前回のカタール大会では、ありがたいことに非常に大きな反響をいただきました。僕がドイツ戦で鼻血を流した瞬間がバズっていましたし(笑)。

伊藤:やはりW杯の影響力は凄いなと実感しましたね。

りょー:前回大会は、間違いなくプレチャンの転換期となりました。なので今大会もたくさん配信していきたいと考えています。

伊藤:そうですね。今大会に懸ける思いも強いです。その上で、W杯後のプレミアリーグ人気も高めていきたいんですよね。

ヨップ:たしかに。W杯をきっかけにプレミアリーグを含む海外サッカーを楽しんでもらう。そんな企画を考えていきたいと思っています。

「部室で盛り上がっているような空気感」を大切に

——配信やイベントなど、充実した期間が続いている印象です。最後に今後のプレチャンが目指す姿について教えてください。

ヨップ:僕たちをきっかけに、海外サッカーに関するインフルエンサーが増えてほしいと思っています。サッカー人気をW杯の瞬間だけでなく、継続させていきたいんです。だからこそ、僕たちが海外サッカーの入り口になれたら嬉しいんです。

伊藤:ただ、チャンネルの規模が拡大しても、友達と部室で盛り上がっているかのような空気感は崩したくないですね。

りょー:それは間違いないですね。その上で、サッカーバラエティとして、海外サッカーのインフラになれたら嬉しいです。サッカーを好きになった人たちが、「もっとサッカーを知りたい!楽しみたい!」となった時に、真っ先にプレチャンを選んでくれるようなことを、オフラインでもオンラインでも増やしていきたいですね。

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 プレミアリーグの選手も多数出場することが予想される北中米W杯。日本と同組のオランダ代表の中には、“世界一のセンターバック”と名高いフィルジル・ファン・ダイク(リヴァプール所属)がいる。今のうちから日常的に視聴しておけば、W杯本番でより没入できるはずだ。

 初戦のオランダ戦は2026年6月15日、日本時間午前5時キックオフ。月曜日の早朝という視聴者泣かせの時間帯だが、画面から目を離せない一戦になることは間違いない。眠気と戦いながら職場へ向かう人も多いことだろう。

 それなら、プレチャンと一緒に熱狂しながら日本代表を応援するのも一つの楽しみ方。大変な時間帯だからこそ、共有する興奮もひときわ大きくなるはずだ。

<取材・文/中川恭輔>

【中川恭輔】
現役大学生兼ハガキ職人。ラジオ番組に年間で1000通以上ものメールを送る生粋のラジオ好き。高校生の頃から毎週欠かさず聴いているお気に入りの番組は、「星野源のオールナイトニッポン」。大学では趣味と学業をうまく両立させながら、無事すべての単位を取り終えることに成功。春からは就職のため上京予定である。現在は卒業を待ちながら、企画や執筆のお仕事に挑戦中。
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