「お米」の値上がりが止まらない。農林水産省の発表によると、1月5日の週の平均価格は「5kgあたり4,267円」。
最高値を更新した前週の「5kgあたり4,416円」よりは多少下がったものの、高いことに変わりはない。米は日本人の主食でありながら、今や「貴重品」「高級品」のイメージが付いてしまった感すらある。
だからこそ、手元で確保してある米はなるべく丁寧な炊き方をして、少しでも美味しくいただきたいものである。そこで米の選び方や保管方法、研ぎ方や炊き方など、一般家庭でも簡単にできる米のハウツーを、今回は「お米のプロ」とも言える食品ブランド「AKOMEYA TOKYO in la kagū(神楽坂店)」の店長・渡邉大樹(わたなべ もとき)さんに実演していただいた。

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保存方法は「冷蔵庫+ペットボトル」が安価で機能的

「お米」を台無しにする“間違った研ぎ方”とは。プロ直伝の「炊飯術」と回避すべきNG行為
産地別に梱包されたAKOMEYA TOKYOの米
まずは米選びから始める。お米の性質は食感の固さやコクの深さなど、日本国内の産地によって様々。AKOMEYA TOKYOでは複数産地の米を揃えており、パネルやパンフレットで産地ごとの個性を説明している。一般のスーパーで同量・同価格帯で産地が違う米があれば、ラベルや産地をチェックしてからスマホなどで味の傾向を調べつつ、好みの方を買うと良いだろう。

また、米は一般的に5kg、小さくて2kg、大きければ10kgの袋で売られている。これらをまとめ買いした後で保管する際のコツや注意点はあるのか。

「できるなら少量ずつ買っていただき、購入から2週間以内にすべて消化するのがオススメです。市販のお米を入れているビニール袋は実は微細な穴が空いており、長期間置いておくと少しづつ品質が変わっていくので、少量を買ってすぐ食べることを推奨しています」

とはいえ、大量のお米袋を複数買い置きする家庭は珍しくないし、一人暮らしであれば米の消費スピード的にも「買ってすぐ全部食べる」は困難である。こうした時の保管のコツを聞いてみた。


「購入時の袋から密閉容器に移し替えて、冷暗所に置いておくことですね。特に冷蔵庫の野菜室は環境的に一番ちょうど良い。容器はゴムパッキンのついた容器や米びつのほか、大きめのジップロックなどでも代用できますよ。」

こうしたニーズに対応して、AKOMEYA TOKYOでは冷蔵庫に収納しやすい「スリム米びつ」も販売している。ほかに、渡邉さんは冷蔵庫での米の保管にあたり、身近ながら意外な入れ物を挙げた。

「中身を洗って乾燥させた2Lペットボトルであれば密閉性も高く、冷蔵庫のドアポケットに収納できますし、米を取り出す時もペットボトルを持って計量カップへ注げばいいので便利です」

ペットボトルを使うとはかなり驚きだが、上記のように機能的なメリットが多いうえに、専用の収納器具を買う必要もなく導入コストが激安である。かなり利用価値の高い小ワザと言えるのではないだろうか。

米を研ぐ時「力を込めてガシガシ」はNG!

「お米」を台無しにする“間違った研ぎ方”とは。プロ直伝の「炊飯術」と回避すべきNG行為
最初にボウルに注ぐ時点で米の量を計っておくと良い
いよいよ米炊きを始めていく。最初に米を研ぐ時は水の中で勢いよく米を混ぜ回し、力を込めてギュッギュッと米をこすりがち。しかし実は、これは米を美味しく炊くうえでは重大な「NG」行為なのだという。

「今は精米技術が昔より向上しているので、ほとんど『研ぐ』というより『汚れを洗う』くらいで問題ないですよ。しかもお米は腐らないように水分量を約15%前後まで乾燥させてから出荷しているので、周囲の汚れごと水を吸いやすい。なので、なるべく米糠で汚れた水に触れている時間は少なくするためにも、サッと『手早く洗う』方をおすすめしています」

「お米」を台無しにする“間違った研ぎ方”とは。プロ直伝の「炊飯術」と回避すべきNG行為
水を注いだ後は「研ぐ」というより「かき混ぜる」程度で良い
厨房で実演してもらった米研ぎの工程も、まさに手早く、優しくといった雰囲気であった。

「力を入れすぎたせいでお米が傷ついたり割れたりすると、変な粘りやベトベト感の原因にもなってしまいますので、なるべく『手早く、優しく』です。
米研ぎ用のザルも販売されていますが、ああしたものも網目部分で米が割れやすいので、推奨していません」

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研ぐ時はこれくらいの水量で良い。ここでも力は込めない
米の入ったボウルに水を注いだら、力を込めずにサッとかき混ぜ、米糠が舞い上がって不透明になった水をサッと捨てる。そのまま米の表面にまとわりついた水分だけで、こねるようにして軽く米を研ぐ。少し研いだら水を足す。それを3~4回ほど繰り返せばOKだ。

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研ぎ終わった後の水。多少白濁していても問題ない
「米を手に取ってみて、糠のニオイがしなければ大丈夫です。その状態で残っている半透明の白い水はお米の旨味にあたるので、取ってしまうと逆にもったいない。過剰に洗いすぎないのもコツです。どうしても残り水が気になるときは、米をザルにあけて1~2分ほど軽く水切りしましょう」

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丁寧に磨かれた米は粒の輝きが違う
お米のプロ「アコメヤお米コンシェルジュ」である渡邉さんの手により、優しく丁寧に磨かれたお米を見せてもらった。顔を近づけると確かに糠くささは全くなく、見た目も米粒に欠けやヒビはなく、綺麗なビーズのように透き通ってさえいる。炊き上がったご飯の美味しさに期待がふくらむような仕上がりであった。

米と水の量を計って「30分~1時間」浸けるのがベスト

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研ぐ前の米(300g)。途中で水を吸って若干膨らむ
研いだお米は水を注いですぐ炊くこともできるが、しばらく浸漬(水に浸けておく工程)を行うと、水が米の中に入ってふっくら感が増すことは良く知られている。普段は釜内側の目盛りと勘を頼りに、蛇口から水を直接ザッとやってしまいがちだが、ここでも実は「水の量を最初に計量することが凄く大切」だという。

「白米(研ぐ前)に対して最適な水の量は、一般的な家庭用炊飯器であれば米と水が1:1.4、今回使用する当社製の土鍋であれば1:1.2になります。
今回はお米2号(≒300g)を炊きますので、土鍋であれば水360ml(≒360g)、炊飯器なら水420ml(≒420g)ですね。この計算方法を知っていれば1.5合や2.5合などでも上手に炊けるので、中途半端にお米が残っていてもしっかり使い切れるのが良い所です。」

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研いだ後の米に水を注ぎ、適切な量(合計660g)にする
この計算量をベースにして、若干固めのご飯が好みなら水を減らし、逆に柔らかくしたければ少し水を足し……と調整すればよい。また、浸漬の時間についてはどうすべきか。

「最低30分、できれば1時間以上浸けておくと良いですね。基本的にしっかり浸けておいた方が、炊き上がりにも間違いが少なくなります。丁寧に浸けたお米は炊飯器でよくある『早炊き』『エコ』などの時短モードでも、むしろパッとふっくら炊きあがりますよ」

逆に浸漬時間に上限はあるか尋ねたが、限界まで水を吸った米はそれ以上吸わないので、長時間浸けておいても大丈夫だという。例えば前日の夜や当日朝に研いだ米を水に浸けておいて、それを冷蔵庫などに保管しておけば、夜の仕事帰りなどにすぐ米を炊けるので便利だ。

備蓄米を美味しく炊くコツは「オリーブオイル」?

2025年は米価高騰への対策として、より安価な「備蓄米」の放出を巡って数多くのニュースが流れた。備蓄米を浸漬する時に、新米との時間の違いや、その他の注意点はあるだろうか。

「備蓄米は昨年もしくは一昨年のお米なので、新米よりも中の水分や油分が抜けてしまっています。普通に炊くとパサついてしまうので、新米以上に水に浸けておくことが重要ですね。また、お米を美味しく食べるための添加剤や米油もスーパーなどで販売されていますので、そうしたものを少量(1~2滴ほど)だけ垂らすことがおすすめです」

米油については常備していない家庭も多いだろうが、そうした場合はオリーブオイルでも代替可能だという。比較的身近なオリーブオイルで古米を美味しくできるというのだから、意外かつ実践しやすいテクニックだ。
ただし油であれば何でも良いわけではなく、ゴマ油などは香りが出過ぎるので非推奨とのことであった。

「お米」を台無しにする“間違った研ぎ方”とは。プロ直伝の「炊飯術」と回避すべきNG行為
新米だから水は控えめでいいとは限らない
逆に新米は油分を含んでピチピチの状態にあたるのだが、その油分が水を弾いてしまうので、やはり時間を取った浸漬は重要なのだという。米が新しいか古いかに関わらず、しっかり30分~1時間ほど水に浸けるのが肝心ということだ。

炊き上がったら早めに上下をほぐして蒸らす

「お米」を台無しにする“間違った研ぎ方”とは。プロ直伝の「炊飯術」と回避すべきNG行為
美味しく炊けるうえに時短という優れものの土鍋
研いで浸漬した米を炊く道具は、もちろん電気炊飯器でも良いが、一人暮らしなどで1食分の米をご飯にしたい場合は土鍋炊きもオススメである。スーパーなどで販売されている普通の土鍋で米を炊く時に注意点はあるのか。

「炊飯器であればお米を洗ってから水に浸ける時間を計算して炊き上げてくれるものもありますが、土鍋の場合はそれがないですからね。その分、30分~1時間ほどしっかり水に浸けておくのが重要です」

なお、AKOMEYA TOKYOで販売されている有田焼の黒釉土鍋は鍋蓋が二重になっているのが特徴だ。二重蓋が圧力鍋のように働くことで、米が時短でふっくら炊き上がるのだとか。土鍋によるお米の炊き時間は通常20~25分ほどかかるが、AKOMEYA TOKYOの商品であれば火にかけている時間は10分程度だという。

「お米」を台無しにする“間違った研ぎ方”とは。プロ直伝の「炊飯術」と回避すべきNG行為
土鍋に2つ空いた穴から湯気が出る
鍋蓋の穴から勢いよく上がる湯気が、炊き上がりが近いという合図だ。蒸らしが終わってから土鍋の蓋を開けると、しっかり粒が立ち、ツヤツヤと美しく輝く米があらわになった。

「お米は炊き上がったあと、放っておくとだんだん固くなってしまいます。なるべくすぐに開けて、ほぐした方が良いですね。
窯の中で上下に温度差があるので、しっかり天地を返すようにして、全体の温度が均一になるようにしましょう」

「お米」を台無しにする“間違った研ぎ方”とは。プロ直伝の「炊飯術」と回避すべきNG行為
渡邉さんが慣れた手つきで米をほぐしていく
米の上からしゃもじで十時型、もしくはそれ以上に細かい切れ目を入れ、ひっくり返すようにほぐしていく。

「お米」を台無しにする“間違った研ぎ方”とは。プロ直伝の「炊飯術」と回避すべきNG行為
お米にこれだけ深い味わいが!と驚かされた
土鍋から茶碗に盛っていただいたご飯は、キラキラした粒がふんわりとした湯気をまとっている。実食すると米粒一つひとつの弾力と柔らかみがしっかり自己主張しているうえに、噛みしめると米本来の甘味やコクが実に濃厚。ご飯だけでも1合程度なら軽く完食できそうな美味しさであった。

「お米」を台無しにする“間違った研ぎ方”とは。プロ直伝の「炊飯術」と回避すべきNG行為
取材同伴者も含めて一同ごはんタイム
もちろん、ふりかけ類や魚のほぐし身など、「ごはんのお供」とセットで食べても、その味わいは抜群である。お米自体の品質の良さを考慮しても、炊き方だけでこれだけ食感や味が変わるのかと感動的な体験であった。ごちそうさまでした!

「美味しいお米」の文化を続けるために

AKOMEYA TOKYOは渡邉さんが店長を務める神楽坂の旗艦店のほか、渋谷や立川など東京都内を中心に複数店舗を展開。深い信頼関係のある日本各地の農家から米を取り寄せて客ごとに提案・販売しているほか、「ごはんのお供」にあたる食品類や調味料、米粉を使用したスイーツ、米炊きに関わる食器や調理器具など、様々な製品を販売している。

「それに加えて、お米の試食販売などを店内で定期的に行っています。実際に食べてもらうことで、お客様ごとの『米の好み』を知ってもらい、お米選びを楽しんでいただくことが目的ですね」

渋谷店などで年数回開催されるメディア向けイベント「ごはんの”お友(おとも)”会」では、人気商品の「ごま和え胡麻」や超薄切り鶏肉を用いた「サクサクふりかけ」、豚そぼろ大葉味噌といったAKOMEYA TOKYOの商品を、上記の製法で美味しく炊かれた土鍋ご飯とともに食べられる。これらも「よりお米を楽しんでもらいたい」と世に広めるための取り組みの一つだ。

「例えばコーヒーのような嗜好品だと、味の好みによって焙煎具合や豆の産地を選ぶ文化は広く普及しています。
主食であるお米も同じように『どういう味が好みか』『どういう料理に合わせるか』を基準に選んでもらっていいんです。そのお米を、本日実演したようにしっかり炊いてもらえれば何よりです」

さながらワインのソムリエのように米について語る渡邉さんからは、米という農産物と食文化に対するAKOMEYA TOKYO全体の真摯さが感じられた。昨今の米高値を受けて、巷では「一部家庭では米を食べる回数を減らし、うどんなどを代用食に……」といった大変寂しいニュースも時おり見かけられるが、一方で政府では高値対策で「おこめ券」配布も検討されているという。日本人にとって「ごはん『が』おとも」が当たり前となる日が戻ってきてほしいものである。

<取材・文/デヤブロウ>

【デヤブロウ】
東京都在住。2024年にフリーランスとして独立し、ライター業およびイラスト業で活動中。ライターとしては「Yahoo!ニュース」「macaroni」「All Aboutニュース」などの媒体で、東京都内の飲食店・美術館・博物館・イベント・ほか見所の紹介記事を執筆。プライベートでも都内歩きが趣味で、とりわけ週2~3回の銭湯&サウナ通いが心のオアシス。好きなエリアは浅草~上野近辺、池袋周辺、中野~高円寺辺りなど。X(旧Twitter):@Dejavu_Raw
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