材料ありきで高騰した日本株
「2026年の日本経済は、そもそも日本の株価は上がりづらい展開だと思われます。高市政権からの期待で日経平均株価も史上最高値の5万円を超えて推移していますが、株価に対しての収益率であるPERを見ると20倍前後で推移しています。ここから上値を追う展開は難しい」そう話すのは業界歴30年超えのベテランFPである深野康彦氏。株式投資におけるPERはその株価が割安か割高かを判断する指標になる。一般的にはPERが10倍以下ならば割安、PERが10倍以上ならば割高である。現在の日経平均株価が20倍前後であるならば若干割高水準に入りつつあるというわけだ。
「PERはどれくらいが適切な水準なのかは一概に言えないとは思いますが……。AI株や半導体株などが上昇して現在の利益よりも割高に評価されているアメリカ株の水準にまで日本株が上がるとは考えにくい。日経平均株価が5万円を更に超えていくためには更に材料が必要で、その材料は2026年中に出てくるとは限らないのではと思ってます」
金利のある世界で投資したい金融商品は?
そこで候補に上がるのが債券への投資と深野氏は語る。「国債や社債など債券への投資は元本保証があるのが大きなメリット。リスクを抑えながら資産を増やすことが可能です。
ぱっと債券を見回してみると2024年頃には5%台の利回りも付いていたアメリカ国債などが候補に上がるが……。
「現在のアメリカ国債はFBRの利下げの影響もあり、利回りは4%台に低下しています。今後もFRBは利下げ基調ですから、この利回りは下がる可能性があります。今から、米国債券に投資するとすれば黄信号。早めに行わないといけません」
資産を守りながら増やすコツ
とはいえ、アメリカ国債だけが債券投資わけではない。そこで深野氏が着目するのは社債である。「例えば、ソフトバンク社債。昨今では7年物の個人向け社債で3.98%が発行されていました。格付けはシングルAを取得すると言われています。ソフトバンク社債に限らず、そもそも日本での社債は『BBB(トリプルビー)』でないと実質的に発行できないとなっていますから、リスクは株式よりもかなり低いと考えて問題ないでしょう」
さらに30年以上に渡って金融市場を見続けてきた深野氏は「金利がある世界においてはこんな金融商品もある」と指摘する。
「昨今では9年ぶりに『MMF』の復活が報道されたのも話題になりました。日本のMMFはマネー・マネージメント・ファンドの略。
日本国内のMMFはマイナス金利下の影響で2016年には販売停止になっていました。2008年頃のMMFの年換算利回りは0.5%ほどで当時の銀行預金金利よりも0.3%ほど高く設定されていましたから、銀行金利よりも高利回りが期待できます。今回の金利上昇で債券投資周りは今後も盛り上がっていくと思います。こういった金融商品を組み込みながらポートフォリオを考えていくことが資産を守りながら増やすコツです」
相場のアノマリーでは辰巳天井、午(うま)尻下がりと言われる。辰年と巳年が上がり安く、午年は下がる年で、まさに2025年は巳年であった。今後の金利がある世界では債券の動きにも着目しながら、手堅く資産を増やしたい。
<構成/上野智(まてぃ社)>
【深野康彦】
ファイナンシャルリサーチ代表。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社。その後、1996年に独立し、現在の有限会社ファイナンシャルリサーチは2社目の起業。FP業界歴35年(2024年10月現在)を誇り、そのキャリアを通じて日本経済の浮沈を見守ってきた。メディア出演やセミナーを通じて、資産運用や住宅ローン、生命保険、税金、年金など幅広く「お金の知識」を発信している。
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