政権発足から2か月で70%を超える高い支持率を維持している高市政権。外国人を巡る問題については、小野田紀美担当大臣を司令塔に、土地取得の規制や在留資格の厳格化など、制度面での見直しが進められている。

一方で、在留外国人の数は昨年だけで36万人増加(流入超過)し、今年も上半期の実績から同程度の増加が見込まれている。このペースが続けば、在留外国人が1000万人を超えるのは約16年後となる計算だ。人口減少が続く日本社会において、外国人受け入れ政策の行方は、将来の社会構造にも大きな影響を及ぼしかねないテーマとなっている。

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「規制」と「受け入れ継続」の間にある温度差

外国人受け入れ政策の見直しについては、現時点では維新との連立覚書に基づき、総量規制の是非が議論されている。ただし、土地規制や帰化要件の厳格化といった具体策が進む一方で、受け入れ人数そのものに関しては、明確な方針が示されているとは言いがたい。

欧米諸国では移民政策を巡る社会的混乱や反発が報じられており、日本国内でも外国人問題は関心の高いテーマだ。高市首相自身も、所信表明演説で「毎年、文化等が違う人たちを国内に入れる政策はいったん見直す必要がある」と述べている。

一方、政府の人口戦略本部では、人口減少対策の一環として外国人の受け入れを念頭に置いた「秩序ある共生社会」の推進が掲げられている。こうした発言や政策をどう読み解くかについては、受け入れ拡大が今後も続く可能性があると見る向きもあり、政策の方向性には一定の幅が残されている。

外国人受け入れ政策が転換しにくい背景

外国人労働者を巡る議論では、規制強化が語られる一方で、受け入れ政策そのものの見直しには慎重な姿勢が続いている。23日に政府が示した素案では27年開始の「育成就労」制度の受け入れ人数の下方修正は、僅かな幅に留まっている。また、誤解が無きように言うと、政府の素案で、特定技能と育成就労の上限として定められた123万人の数字は、あくまで28年度末までの計画であり、「打ち止め」というわけではない。その後も政府が人手不足と考えれば、新たな受け入れ枠が設定されることになり、人口予測を見れば、そうなる可能性は高い。

こうした背景には、外国人労働者を受け入れる制度が、さまざまな主体に経済的な影響を及ぼしている点があると考えられる。


在留外国人を移民的観点から見ると、大きく二つのルートが存在する。一つは、技能実習や特定技能といった在留資格で、主に人手不足とされる労働集約型産業に従事するケース。もう一つは、「経営・管理」ビザや、留学後に「技術・人文知識・国際業務(技人国)」などへ切り替え、長期滞在や永住を目指すルートだ。制度全体を見ると、結果として定住を視野に入れた設計になっている側面も否定できない。

人手不足の背景にある賃金の問題

高市政権の外国人政策に見る「規制」と「受け入れ継続」の温度差。16年後に“在留外国人1000万人”の衝撃予測
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人手不足が叫ばれる一方で、実際には黒字リストラが相次ぐホワイトカラー分野と、慢性的な人手不足に悩む労働集約型産業との間で、賃金水準の差が大きいという指摘もある。経済学的には、人手不足が深刻であれば賃金上昇が起きるとされるが、現実には企業の利益率が高水準を維持している。

実際、地方であっても半導体や自動車関連など、比較的高い賃金を提示する工場には全国から日本人労働者が集まっている。こうした状況を踏まえると、人手不足の一因として、賃金水準の問題が存在すると見ることもできる。

技能実習制度などを通じて外国人労働者を活用することで、企業が人件費の上昇を抑えやすくなっている側面があるという分析もある。

技能実習制度を巡る不透明な構造

技能実習制度を巡っては、「送り出し機関」「日本語学校」「監理団体」「受け入れ企業」など、多くの組織が関与している。その中で、監理団体の役割や資金の流れについては、不透明だと指摘されることも少なくない。

監理団体は非営利組織とされているが、受け入れ企業から実習生1人あたり月額数万円の監理費を得る仕組みとなっている。団体によっては情報公開が十分でないケースもあり、制度全体の透明性向上が課題とされてきた。

また、技能実習から特定技能へ移行した後も、登録支援機関への費用負担が発生するなど、複数の支援組織が関わる構造となっている。
こうした制度設計が、結果的に一定の経済規模を生み出している点は注目される。

増え続ける外国人労働者と制度の行方

新たに始まる育成就労制度では、同一業種内での転籍も可能となる。制度変更によって利便性が高まる一方、関与する団体や事業者の役割がさらに拡大する可能性もある。

外国人労働者の受け入れを巡っては、企業側の人手確保だけでなく、多様性や国際競争力を期待する声もある。一方で、制度のあり方や透明性については、引き続き検証が求められている。

外国人労働者の数が増えることで利益を得る主体が存在する一方、社会全体としてどのようなバランスを目指すのか。高市政権の判断だけでなく、日本社会全体が向き合うべき課題となっている。

<文/九戸山昌信>

【九戸山昌信】
大学卒業後、新聞社に入社し、社会やスポーツ面を担当。退職し、出版社にて週刊誌記者を経て独立。現在は雑誌、ウェブ記事等に寄稿。取材範囲は経済、マネー、社会問題、実用、医療等。X:@kudoyama456489
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