日本を代表するヒーローであり、50年もの間、お茶の間の子どもたちを笑顔にしてきた「スーパー戦隊」。そんな「スーパー戦隊」シリーズが第49作目『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』を最後に、休止期間に入ることが発表されました。

50年間、ずっと悪と戦ってきた「スーパー戦隊」シリーズのヒーローたちですが、その道のりは平坦なものではありませんでした。毎年、新作が制作されるという過酷な環境はマンネリ化との戦いでもあったのです。

それを打破するため、作品ごとにさまざまな新要素が生まれてきました。歴代「スーパー戦隊」シリーズの中でも、いくつかの作品をピックアップして、その歴史を振り返ってみましょう。もしかすると、子どものころのヒーローがいるかもしれません。

50年の歴史が幕を閉じる「スーパー戦隊」。ゴレンジャー、バト...の画像はこちら >>

すべての始まりはゴレンジャー

秘密戦隊ゴレンジャー(1975年放送)

記念すべき「スーパー戦隊」シリーズ第1作目が『秘密戦隊ゴレンジャー』です。「仮面ライダー」シリーズの新番組案の一つだった「『スパイ大作戦』を参考にした複数の専門家が集まった5人の仮面ライダーからなるヒーローチーム」というものが採用されたことがすべてのはじまりでした。

コンセプトでは、敢えてコミカルな要素を入れることで新たなファン層を開拓し、老若男女を問わず高い人気を誇りました。その人気を象徴するエピソードとして、当時のプロデューサーが女子大学生のファングループの訪問を受けたと語っています。

スパイダーマンや聖闘士星矢をモチーフに

バトルフィーバーJ(1979年放送)

このころ、東映はマーベルコミックと業務提携しており、東映版『スパイダーマン』を成功させていました。そこで、東映版『スパイダーマン』で人気の出た要素の一つである巨大ロボット「レオパルドン」を取り入れた新作の制作に取り掛かりました。そのため、『バトルフィーバーJ』から本格的に巨大ロボット戦がはじまったのです。

また、マーベルコミックと提携していたため、同社のヒーローであるミス・アメリカをモデルにしたメンバーが登場し、それぞれのメンバーは各国を代表するヒーローとなっています。マーベルとの提携は『バトルフィーバーJ』だけでは終わらず、この後の作品でもマーベルコミックのヴィランをモデルにした悪役が登場しました。


超獣戦隊ライブマン(1988年放送)

『バトルフィーバーJ』から数えて10作目にあたる『超獣戦隊ライブマン』では新しい試みとして、1号ロボと2号ロボの合体が行なわれました。しかし、もともとは1号ロボのライブロボのみがデザインされており、そこに新たなロボである2号ロボのライブボクサーを合体させるのは苦労したとのことです。

そんな困難な状況の中、ライブロボとライブボクサーの合体ロボ、スーパーライブロボ誕生のきっかけとなったのは当時流行していた『聖闘士星矢』の聖衣でした。アクションフィギュアに武装パーツを着けるデザインをもとに、ライブボクサーは考えられたのです。当時の関係者曰く「難産だった」とのことで、完成を発表した時は会議でどよめきが起きたと言います。

また、キャスティングでも新しい試みが行なわれました。「スーパー戦隊」シリーズといえば、新人俳優の登竜門のイメージが強いですが、『超獣戦隊ライブマン』では、レッドファルコンに既に俳優・歌手として知名度のあった嶋大輔、ブルードルフィンに森恵が起用されています。

『ジュラシック・パーク』の影響も

恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992年放送)

マンネリ化を打破するため、戦うトレンディドラマという変化球をコンセプトに制作された前作『鳥人戦隊ジェットマン』。前作と差異化するため、王道の「スーパー戦隊」をテーマに『恐竜戦隊ジュウレンジャー』は制作されました。

しかし、王道とはいえ、マンネリ化を打破するための新要素がないわけではありません。モチーフには当時制作が発表され、話題となっていたスティーブン・スピルバーグ監督作の最新作『ジュラシック・パーク』の影響により、恐竜を採用されました。

そこにRPGブームの要素も加えてデザインするなど、全体を通して世相を反映した設定となっています。さらに『恐竜戦隊ジュウレンジャー』から本格的に6人目の戦士、俗に言う追加戦士が登場するようになります。


この『恐竜戦隊ジュウレンジャー』はアメリカに輸出され、『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』として人気を博しました。その人気は絶大で、おもちゃを買うための交通渋滞が起き、ニュースになるほどでした。現在ではディズニー+で、ドラマ版『パーシー・ジャクソンとオリュンポスの神々』のショーランナーの手によってリブートが進められています。

“百獣武装”と東日本大震災直後の作品

百獣戦隊ガオレンジャー(2001年放送)

「スーパー戦隊」シリーズ25周年記念作品として制作された『百獣戦隊ガオレンジャー』はCGが多く取り入れられ、1990年中ごろに途絶えていた劇場版制作を復活させるなど、記念作品として多くの新要素が盛り込まれました。

その新要素の中でも玩具の売上に貢献したのが“百獣武装”という設定です。巨大ロボの手や足のパーツが取り替えられるという設定は、これまでのおもちゃの販売モデルに変化をもたらし、新しい遊び方を提案しました。

海賊戦隊ゴーカイジャー(2011年放送)

「スーパー戦隊」シリーズ35作目を記念して制作された『海賊戦隊ゴーカイジャー』は、東日本大震災の影響を受けた作品でもあります。当初、レジェンド戦隊という名称で再登場する過去の出演者はそう多くなかったとのことでしたが、震災の影響を受け出演を決意した俳優もいたとのことです。

「最後のスーパー戦隊」劇場版で熱い展開に

ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー(2025年放送)

記念すべきスーパー戦隊50周年記念作品にして、休止期間に入る前の最後のスーパー戦隊が『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』です。主人公たちは戦隊リングによって変身し、歴代の戦隊リングによって、かつてのレッドに変身するユニバース戦士とときに協力し、ときに戦う物語となっています。

劇場版では全人類が歴代レッドの戦士に変身するなど、これまでのスーパー戦隊が紡いできた歴史が、日本を含め、様々なところで正義の心として根付いていることを描きました。また、初の公募での新戦隊を募集し、それにより誕生した50番目のスーパー戦隊『折リジナル戦隊オリガレッド』が登場するなど、最後に相応しい前例のない挑戦を続けています。

マンネリ化との戦いと、未来へ繋がるバトン

「スーパー戦隊」シリーズは常に新しいことに挑戦し続けました。そのため、一つとして同じ作品はなく、どの作品も魅力的なものばかりです。
しかし、作品ごとに新しい試みを取り入れ続けた「スーパー戦隊」は、一時的な休止期間に、言い方を変えれば充電期間に入ります。

ですが、その歴史が途切れるわけではありません。「スーパー戦隊」シリーズのバトンは「PROJECT R.E.D.」シリーズ第1弾『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』に渡され、東映特撮のヒーローの歴史は新たなものとして続いていくのです。

かつての「パワーレンジャー」シリーズのように、日本の特撮作品はクールジャパンとして世界に誇れるものになっていくことでしょう。そこには常に新しいものに挑戦する制作スタッフの姿勢がありました。今後、次の世代の子どもたちに向けて、どのようなヒーローが生まれるのかに注目が集まります。

<TEXT/鯨ヶ岬勇士>

【鯨ヶ岬勇士】
映画・ドラマ・アニメをメインとするフリーライター。エンタメ作品の取り巻く社会情勢や政治問題なども幅広く取り扱う。得意領域は特撮、アメコミ、ホラーなどエンターテインメント業界。X:@Sleeped_Beowulf
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