緊張高まる日中関係の裏で、中国のフリマアプリで自衛隊や警察の制服などが「正規品」として多数出品される現状が明らかになった。防衛省も流出の事実を認めるなか、悪用リスクについてリポートした!

出品者は「本物」と太鼓判! 防衛省も流出を「認識」

中国のフリマアプリに「日本の警察や自衛隊の制服」が大量出品…...の画像はこちら >>
中国のフリマアプリに「日本の警察や自衛隊の制服」が大量出品…一体なぜ?警察手帳や国会議員のバッジまで
「閑魚」に出品されていた自衛隊の制服。なぜ中国のフリマアプリで販売されているのだろうか
 高市早苗首相による「存立危機事態発言」を契機に悪化した日中関係が緊張を強め、レーダー照射問題で軍事的緊張はさらに高まっている。

 世論からは安全保障体制の強化の声が上がるなか、看過できない事態が発生していた。


「中国のフリマアプリで、自衛隊グッズが多数、出品されているんです」

 こう述べるのは中国事情に詳しいライターの広瀬大介氏だ。実際にSPA! 記者がアプリ「閑魚」を覗いてみると、問題の出品はすぐに見つかった。

 約5万2000円で売られていたのは、金糸の肩飾りが威厳を醸し出すジャケット。左胸部分に記念章や功労章が連なっている。これは、陸上自衛隊の一佐の常装服だという。

 一佐と言えば、陸上自衛隊の制服組トップの陸上幕僚長から数えて4つ目のポストに当たる上級幹部である。

防衛省報道室の回答は…

中国のフリマアプリに「日本の警察や自衛隊の制服」が大量出品…一体なぜ?警察手帳や国会議員のバッジまで
中国で自衛隊服が大量に売られている!
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出品者に入手ルートに関して聞くと態度が急変。説明できない事情があるということか
 また、旭川駐屯地に司令部を置く陸上自衛隊第2師団の肩章が縫い付けられた冬用迷彩作業服の上下と防寒用ベストのセットは約6万円。

 海上自衛隊の三佐のものと見られる常装冬服は約6万3000円などが並ぶ。さらにヘルメットや水筒、自衛隊手帳といった装具もあった。

 こうした出品物に共通するのは「本物」「官給品」など正規品だと記されていることだ。

 そこで迷彩作業服を3万円で出品していた人物に、購入希望者を装い、「本物か?」とDMしてみた。すると「タグを見ればわかるとおり、間違いなく本物」と丁寧に返信があった。

 しかし、入手ルートについて尋ねた途端、態度が一変。
「説明する必要はない」という言葉を3連投したのち、連絡が取れなくなった。

 一方、海上自衛隊の常装冬服の出品者は、「海外にいる友達に頼んで買ってもらった」と答えたが、それ以上の具体的な説明はなかった。

こうした装備品や制服がもし日本で悪用されたらどうするのか。防衛省報道室は「流出や転売という事態を認識している」と認めた上で、SPA! の取材に対し、こう回答した。

「制服などの装備品については、管理状況を確認するため、定期的に各個人ごとの現況調査をする等により、引き続き、厳格な管理を行ってまいります。なお、制服などの装備品を不正に売却し、業務上横領や窃盗など、規律違反の事実が認められた場合には、懲戒処分の対象となります」

 実際に4月には、海上自衛隊の3等海曹が、制服や靴などを盗み、フリマアプリに出品して懲戒免職となっている。

 50代の元自衛隊員は別の流出ルートもあると示唆する。

「予備自衛官や予備自衛官補の招集訓練時に、官給品の装具などが紛失するケースがよくありました。どうやら、一部の予備自衛官にミリオタが紛れていて、コレクションとして盗んでいるのではないかという話でした」

カンボジア詐欺事件で使われた警察の制服

中国のフリマアプリに「日本の警察や自衛隊の制服」が大量出品…一体なぜ?警察手帳や国会議員のバッジまで
中国で自衛隊服が大量に売られている!
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本物かは不明だが警察手帳も見つかった。自衛隊服には氏名・部隊名が記されている商品も
 複数の流出ルートが存在するようだが、一方で中国フリマアプリには自衛隊関連のほかにも、警察関連の出品が複数、確認できた。

 警視庁の制服や滋賀県警の肩章、機動隊制服などなど。レプリカと明記したものもあれば、本物と説明する出品も。

 4月に中国人男性が神奈川県警の制服を着用して日本国内で歩く姿がXに転載され不安の声が上がったこともあった。

 さらに5月にカンボジアで日本人29人が詐欺容疑で逮捕された事件でも、警視庁や長野県警の制服が押収されたという報道も。
治安機関の制服だけに悪用が心配される。

 SPA! は警察庁に問い合わせたが、締切までに回答はなかった。

 前出の広瀬氏は、こうした出品物の多くはコスプレ目的での使用が多いと言う。

「自衛隊や警察官は、日本の映画やアニメに親しんでいる中国人にとっては馴染み深く、関連グッズには一定のコレクターが存在します。コスプレ文化は日本より盛んなので、制服をはじめ、身につけることのできるものは特に人気が高い」

本物に執着するのはテロリストよりオタクとしても…

中国のフリマアプリに「日本の警察や自衛隊の制服」が大量出品…一体なぜ?警察手帳や国会議員のバッジまで
中国で自衛隊服が大量に売られている!
 自衛隊や警察だけではない。調査を進めると消防隊員やJR職員の制服も。さらに国会議員のバッジ、参議院手帳まであるではないか。

 マニアのコスプレ用であればまだマシだが、やはり悪用の懸念もつきまとう。9月には偽の国会議員バッジをつけた日本人男性が、官公庁や国会への侵入を繰り返し逮捕された事件も起きているからだ。

 考えたくもないが、日中関係が緊張するなか、一部の中国人が身分を偽装して、妨害活動や詐欺を行う可能性もゼロではない。そんな懸念について、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はこう話す。

「’11年にノルウェーで69人の犠牲者を出した銃乱射事件の犯人は、警察官の制服を着用していました。不正流出した警察官や自衛官の制服が犯罪組織などの手に渡り、テロや詐欺などに利用されることは理論的にはあり得ます。
ただし、犯罪目的であれば、正規の制服を着用する必要はなく、レプリカでも事足ります。むしろ、趣味で本物の制服を手にした人物が、着用するだけに飽き足らず警察官や自衛官に成りすまし、何らかの犯罪に走ることのほうが懸念されます。いずれにしても、関係各所は不正流出させないよう厳格管理を徹底すべき」

 制服のみで相手を信用することは危険な時代になったのかもしれない。

テロ犯人が軍や警察を装ったケース

•2004年 インド、パハルガムでのテロ事件
カシミール紛争下、武装勢力が治安部隊への偽装等を用いて潜入する手口が常態化。観光客や巡礼者を標的とした攻撃が断続的に発生

•2004年 イングーシ共和国襲撃
チェチェン武装勢力が警察官等の制服を着用して侵入。検問所を制圧して偽の検問を行い、警察施設等を襲撃して多数の治安当局者を殺害

•2011年 ノルウェー連続テロ事件
極右テロリストが警察官の制服を着用してウトヤ島に上陸。警備確認を装って参加者を集めて油断させ、至近距離から銃撃し69人を殺害

•2016年 インド、パタンコート空軍基地襲撃
武装集団がインド陸軍の軍服を着用して空軍基地内に侵入。軍関係者を装って警備網を突破し、治安部隊と長時間にわたる銃撃戦を展開

•2017年 アフガニスタン軍事基地襲撃
タリバン戦闘員が国軍の軍服を着用し軍用車両で基地へ侵入。負傷兵の搬送を装って検問を突破し、非武装の兵士らをモスクや食堂で襲撃

コスプレ目的!? ほかにもヤバい出品物が目白押し

中国のフリマアプリに「日本の警察や自衛隊の制服」が大量出品…一体なぜ?警察手帳や国会議員のバッジまで
中国で自衛隊服が大量に売られている!
•警察官 ……… 3万7000円

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•JR職員 ……… 2万8000円

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•消防署員………1万3500円

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中国で自衛隊服が大量に売られている!
•議員バッジ……3万7000円

取材・文/青山大樹 奥窪優木

―[中国で自衛隊服が大量に売られている!]―
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