遠い親戚と会うのがしんどい
神奈川県在住の鈴木陽斗さん(仮名・14歳)は、家族の繋がりを大切にする家で育ちました。毎年お盆と正月は親戚で集まり、みな近況を報告しながら食卓を囲むのだそう。「よく会う親戚は慣れてるし、良いんです。ただ、お正月はお盆とは比べ物にならないくらい人が集まります。ひいおばあちゃんに兄弟が多いから、その兄弟の家族が集まると1クラス分くらいの人数になるんです。どの家もそんな人数受け入れられないから、横浜の中華街のちょっと良い店を予約して行くんですよ。くるくる回るテーブルに美味しい料理が並んだら、嬉しいはずじゃないですか。でも全然嬉しくないんです」
その理由を陽斗さんはこう言います。
「なじみのない大人に緊張するんですよね。両親が気を遣っている姿を見るからとかそんなんじゃなくて、知らない人になに話していいのか分からない。だから、やたら目の前の食事に集中して、いっぱい食べるんです。そうすると、大人も『よく食べるな~』って喋らなくても笑ってくれるし。
そう語る陽斗さんの横顔は随分大人びて見えました。確かに頻繁に顔を合わせ、気が置ける親戚には近況の報告もしやすいですが、毎年40人ほど集まっていると、毎回全員と話すこともないでしょう。しかも、大人はお酒も入っているから、一体どこまで自分の話を覚えてくれているのかも図りにくい。そうした中で、無邪気に近況報告ができる度胸はなかなか持てないのではないでしょうか。
旅館が楽しいのは大人だけだから!
愛知県名古屋市在住の武藤渉さん(仮名・11歳)は年末年始恒例の家族旅行にうんざりしていると訴えます。
渉さんは母子家庭で、普段はお母さんと祖父母と一緒に4人で暮らしています。お母さんが自身で会社をやっているから忙しく、主に祖父母が面倒を見てくれているそうです。そんな渉さんがお母さんとゆっくり過ごすことができるのは、まとまったお休みが取れる年末年始。お母さんは日頃かまってあげられないことを負い目に感じ、旦那さんと別れてからは毎年渉さんと、面倒を見てくれているご両親とで家族旅行に出掛けるようになったのだとか。
その一方、渉さんは「最初は珍しいし、楽しかったけど最近はそんな」と不満をこぼします。
「旅館のご飯、おいしくない!」
「旅館のご飯は、お刺身とか天ぷらとかだけど、僕は別にそれを特別だとは思わない。それよりも、ハンバーグや唐揚げ、カレー、オムライスが食べたい。えびの天ぷらくらいしか喜べるものがない」と言い切ります。
確かに、和食を心から喜べるようになったのは、筆者も20歳を過ぎてお酒を嗜むようになってからです。それまではこういった落ち着いた食事にそれほどテンションは上がりませんでした。もっと単純な味で、ジャンクな食べ物のほうが嬉しかったです。渉さんもそうなのでしょう。
温泉の楽しみ方も分からない
渉さんは続けて温泉へも苦言を呈します。「そもそも、お風呂が好きじゃない。髪や身体を洗ったりするすべての動作が面倒くさいのに、温泉はさらにルールもある。おじいちゃんは、黙ってじっくり浸かりたいみたいだけど、僕からしたら死ぬほど退屈。すべての風呂に10秒ずつ浸かったら、もうなにもすることがない。大人はなんであんなにゆっくりしたがるの!?」
旅館で過ごすことへの不満が止まらない渉さん。大人でもお風呂が嫌いな人はたくさんいます。昨今「風呂キャンセル界隈」というワードが浸透するほどです。かくいう筆者も風呂キャンセル界隈の人間です。
“子ども”という役を押し付けないで
渉さんの宿泊する旅館は、年末年始特別興行として落語家を招き、披露してくれるそう。その最後に質問などが募られるが、その場面に対してどうしても譲れない不満があると言います。
「ああいう場面があると、大人は子どもを前に出したがるよね。子どもに『あんた手挙げて質問しなさい!』って母も言うんだよね。こっちからしたら、興味のない落語見せられてそれだけでうんざりしてるのに、さらに質問しろって。でもさ、その小声は僕だけが聞こえてるんじゃなくて、周りにも届いてて、僕が手を挙げることをその場にいる大人全員が期待してるんだよ。だから手を挙げざるを得ないの。で、質問も真面目なものじゃなくって、子どもらしいちょっとふざけたものを期待されてること、分かるんだよね。その期待通りの質問を投げると大人は『かわいいね』って褒めてくれるし、お母さんも『あんたバカなことを……!』って困ったようにして喜ぶんだよね。正直、しんどい。
渉さんは両親の不仲な時期を見てきて、なんとか離婚を避けようと必死に両親の顔色をうかがっていたそう。だからこそ、“大人が自分になにを期待しているのか”を敏感に察知する能力を身につけてしまった。
渉さんのお母さんは楽しい時間を過ごして欲しいと思い、この旅行をプレゼントしているが、果たして渉さんのことをほんとうの意味で見つめられているのだろうか。渉さんがお母さんのことをよく見つめている分、その気持ちを考えると苦しくなる。
<取材・文/後藤華子>
―[年末年始の憂鬱]―
【後藤華子】
サブカルと外食が生きがいのアラサー人妻ライター。ライブハウスと居酒屋は実家みたいなものです。短所は好きなものの話になると、早口になるところ。
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