’24年8月のSNS騒動を経て沈黙したフワちゃんが、次に選んだのは、逃げ場のないリング。これは“禊ぎ”ではない。
リングが次の夢の舞台!
「あと5分だけください! 本当にすみません。この髪形、久しぶりなんで時間かかっちゃって……」取材班が到着するなり、丁寧な挨拶で迎えてくれたフワちゃん。「まだ遅刻癖が直ってないと思われちゃう」とお団子頭をペコペコと下げる姿には、タメ口や遅刻も厭わないあの“自由奔放キャラ”の面影は薄い。
──心なしかお顔つきが変わったような気が。休業中はどう過ごされていましたか?
フワちゃん(以下フワ):反省の日々でしたが、時間はたくさんあったので、いろんなことに精進しようと心がけていました。ロンドンで語学留学したり、アマルフィでツーリングしてみたり。「インストール&アップデート」をテーマに、新しいことをたくさん吸収していて刺激的で楽しい時間でした。
──(※1)騒動当時の心境はいかがでしたか?
フワ:あのときは、事態が大きくなっていく様をただただ見ているしかできなかった状況でした。改めるべきところがいっぱいあったし、自分の行いを猛省しています。それに何より心苦しかったのは、あの一件でフワちゃんチームのみんなの生活を大きく狂わせてしまったこと。そんななか、チームのみんなが一人も欠けることなく、変わらずそばにいてくれたことがとにかくモチベーションでしたね。
「本気でプロレスを」決意の裏にLA道場
──その「やりたいこと」がプロレスラーとして、女子プロの名門「(※2)スターダム」へ入団することだったんですね。フワ:再起に関しては、世間からどう思われるかより「何がしたいか」を軸に考えました。禊ぎといえばプロレスみたいなイメージもありますが、そうではなくて。私がやりたくて、私が夢を叶えたくて、スターダムに入門したんです。
フワ:そうですね。それまでは試合を観たこともなかったのですが、企画でプロレスの世界に飛び込んで以降、完全に虜に。活動休止に関係なく、本気でプロレスをやってみたいという思いは心の片隅にずっとあったんです。でもどうしても、大人になってからの大きい夢って強い覚悟が必要で。毎日仕事に向き合うなかで、なかなか踏み出せなくって。そんななか、今回の活動休止でゆっくり考えられる時間ができたので、改めて大きい夢に向き合おうと腹をくくりました。覚悟が決まるまでは、ラスベガスまで(※4)WWEの試合を観に行ったり、海外のプロレス道場で練習したり、強制的にその環境に飛び込んで自分を試してました。不思議なもので体を動かしているうちに、絶対にプロレスをやりたいと強く思うようになったんです。
──海外の道場に!? 誰かからの紹介があったんですか?
フワ:いいえ、自分で! 一応日本からメールで問い合わせしたけど、音沙汰がまったくなくて。だから直接ロサンゼルスに飛んで、グーグルマップで「ProWrestring」と検索。上のほうに出てきた道場の門を叩いて、「プロレスラーになりたいので入れてください!」って頼みました。
LAで「下手くそ!」と罵られて、自分の弱さを知りました
──すごい度胸ですね……。海外の道場はいかがでした?フワ:誰も私のことを知らない環境での練習なのが、リアルで面白かったですね。これまで「才能の塊!」とか褒められてたのが一体なんだったんだってくらい、普通に「下手くそ!」とか言われるくらい、ちゃんと劣等生でしたよ(笑)。おべっかなしの自分の実力がわかって、メンタルもフィジカルも強くなったと思います。
──ストイックですね。それはどんな場面で感じましたか?
フワ:若いコたちが、夢に向かって切磋琢磨する姿に、刺激をたくさん受けましたね。改めて、夢があるって素敵。目標ができてからは活動休止中のぼんやりした生活が一気に輝きだしたのが自分の中で印象的でした。
──なるほど。そこから生活が一変したわけですね。
フワ:今は(※5)他の新人選手たちと同様、「練習生」として週に4~5回、基礎からミッチリ鍛え直しています。
フワ:はい、まったく。選手の皆さまも、新人選手の一人としてフラットに接してくださってます。企画で挑戦したときとは違い、いまはほかの若手選手とともにトレーニングしているのですが、私だけできないことや理解してないと感じる瞬間が多々あり、ふがいない思いをすることだらけです。でも若手選手の間でできないところはお互い当然のように教え合っていて。ライバルでありながら高め合う、仲間同士の爽やかな優しさにすごく助けられてます。練習自体は厳しく過酷ですが、みんなと過ごす青春は楽しいです。
──練習当初と比べて、ほかに変化はありましたか?
フワ:最初のうちはやっぱり、相手を殴ったり蹴ったりすることに抵抗がありましたね。ただ相手を「傷つける」ことと「倒す」ことは別物だと理解してからは、躊躇せずやり合えてます!
──確かにプロレスは危険も伴う競技です。何がそこまで引きつけるのでしょうか。
フワ:最初は、純粋にヒーローに憧れるみたいな気持ちに近かったです。どう考えてもカッコいい! 闘う人たちに魅了されるのは、本能なのかな! 一方、その華やかさの裏で、常に限界を超えた練習を重ね、怪我と隣り合わせで闘っている。
再デビュー戦の相手に「師匠」を指名した理由
──来たる(※6)12月29日の再デビュー戦の相手には、テレビ企画のときからの師である(※7)葉月さんを指名しましたね。フワ:葉月さんは3年前からの付き合いで、私にこの世界の厳しさを教えてくださった大切な師匠です。スターダムに入団するときも、誰よりも先に相談に乗っていただきました。葉月さんは昔から、私の練習のために、ご自身が忙しいなかでかなり時間を取ってくださっています。私の下手なドロップキックやエルボーも自分自身が練習台になってくれ、弟子である私のことを一番に考えてくださる本当に愛情の深い方です。心から信頼している師匠にデビュー戦を受けていただけて、高まる気持ちでいっぱいです。それに葉月さんは私の師匠であることとは関係なく、最高のプロレスラー! 本当に面白い試合をする、推し選手なんです。試合では自分より背の大きい選手を軽々と持ち上げて、思いっきし蹴り上げるんですよ。あんなきれいなお姉さんが、どうしてあんなに強いの! なんだか小さい頃に、(※8)「キューティーハニー」に憧れた気持ちを思い出します。
フワ:葉月さんからは3年前の時点から、とにかくプロレスの基礎の「受け身」を徹底的に叩き込まれました。
葉月さんは一番の恩人だし、絶対倒さなきゃいけない相手
──「師匠にボコボコにされるのは予定調和では?」という意地悪な見方もあるようですが……。フワ:「出る前に負けること考えるバカいるかよ!」っていう猪木さんの言葉! 私もいちプロレスラーです。負けることなんて一切考えていません。この世界で本気でやっていくためにも、大好きな師匠の葉月さんを、倒すしかないと思ってます。
──改めて伺うと、周囲の方々と強い絆を築いていますよね。
フワ:この状況でも支えてくれたみんなには、言い表せないくらい大きな感謝の気持ちでいっぱいです。そして、私のYouTubeやラジオを応援してくれていた「フワギャル」たちも! これまでプロレスを見たことなかったのに「フワちゃんが出るから!」って、初めてチケットを取ってくれた人もいるみたいで。
【Fuwa-Chan】
TVに出演する傍ら、自身のYouTubeチャンネルの映像編集やアートデザインなど、クリエイターとして活動。’24年、芸能活動休止の後、満を持してプロレスラー転身を発表。大胆不敵で型破りなキャラクターを武器に、プロレス界の頂点をひたむきに目指す!
(※1)騒動当時
タレントのやす子に対し、SNSで不適切投稿。後日やす子に謝罪し、和解に至った
(※2)スターダム
日本最大級の女子プロレス団体。モットーは「明るく、激しく、新しく、そして美しく輝く」。上谷沙弥など人気選手が多数所属
(※3)’22年にテレビ番組の企画で挑戦
’22年10月、テレビ番組『行列のできる相談所』の企画でデビュー戦に挑んだ。2戦目は’23年4月。いずれもタッグは師匠の葉月
(※4)WWEの試合
World Wrestling Entertainmentの略で、米国が本拠地の世界最大のプロレス団体。ショー的要素とドラマ性のある試合展開が人気
(※5)他の新人選手たち
本ページでフワちゃんの練習相手を務めた、金屋あんねもその一人。負傷欠場していたが、12月8日の試合で復帰
(※6)12月29日の再デビュー戦
「STARDAM DREAM QUEENDOM 2025」。王者・上谷沙弥が安納サオリと対戦するなど、王座戦が何試合も組まれている
(※7)葉月さん
スターダム所属レスラー。155㎝、52㎏、28歳。中学卒業後、’13年に入門。’22年のテレビ企画時からフワちゃんのコーチを務める
(※8)キューティーハニー
永井豪原作の少女型アンドロイド・如月ハニーが主人公のスーパーヒロイン作品。1973年に初代アニメが放送。映画や舞台化も
取材・文/アケミン 撮影/尾藤能暢 スタイリスト/吉野美咲 メイク/藪みのり
―[インタビュー連載『エッジな人々』]―
【アケミン】
週刊SPA!をはじめエンタメからビジネスまで執筆。Twitter :@AkeMin_desu
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