小回りコースのため、距離のごまかしがある程度利くともいわれるが、今週半ばに降雨があった影響で例年以上にタフさも求められそう。また、位置取りと道中の折り合いも非常に大事で、“長距離戦は騎手で買え”という競馬界の格言通り、騎手の技術も重要なファクターとなるだろう。
そこで今回は、2500m以上の「長距離G1」と、特殊な「中山芝2500m」という2つの条件から、期待できる騎手と過度な期待はできない騎手を探った。第70回有馬記念に騎乗予定の16人の騎手を両条件下の通算成績を基にひもといていこう。
長距離G1経験組で“期待しづらい2人の騎手”
まず2500m以上の長距離G1に当てはまるのは、菊花賞、天皇賞・春、そして有馬記念の3レース。16人の中で長距離G1を初めて経験するのが、ミステリーウェイに騎乗予定の松本大輝騎手だ。同馬と武豊騎手が騎乗予定のメイショウタバルのハナ争いにも注目が集まるが、経験の浅い23歳の松本騎手はどんな作戦を思い描いているのか。スタート次第では、56歳のレジェンド武騎手に“忖度して”下げる可能性も十分あるだろう。
長距離G1経験組で期待しづらいのは、川田将雅騎手(アドマイヤテラ)と松山弘平騎手(タスティエーラ)の2人だ。川田騎手はマイルG1にめっぽう強いが、2500m以上になると【1-2-1-40】で、複勝率は10%にも満たない。今年G1を2勝している松山騎手にしても、この条件は【0-1-0-21】とサッパリだ。
アドマイヤテラとタスティエーラの2頭はおそらく5~7番人気あたりになると予想されるが、思い切ってバッサリ消去でもいいのではないか。
長距離G1で結果を残している騎手は?
一方、長距離G1で結果を残しているのが、C.ルメール騎手(レガレイラ)と武騎手の2人。どちらも上位人気濃厚の有力馬に騎乗を予定している。ルメール騎手は長距離G1で【11-7-4-15】で、複勝率は60%に迫る。武騎手も【17-16-11-55】という好成績で、8年前にはキタサンブラックとのコンビで逃げ切り勝ちを収めている。やはり長距離の一戦は、武騎手の熟練の技に一目置かなくてはいけない。
他には【2-2-2-15】の戸崎圭太騎手(ダノンデサイル)、騎乗機会は限られるが、【2-0-1-6】の横山武史騎手(コスモキュランダ)の2人も気になる存在。特に戸崎騎手はお手馬のレガレイラとダノンデサイルから、後者を選択しているだけに、意地でも勝ちに来るだろう。
中山芝2500mの得意・不得意を分析してみると…
ではここからは中山芝2500mにおける各騎手の通算成績を見ておきたい。年間10鞍ほどしか組まれていない特殊なコースを得意にしているのは、やはりルメール騎手と武騎手の2人。ルメール騎手の通算成績は【12-10-10-18】で、複勝率は驚異の64%にも上る。武騎手も【11-13-8-41】で、複勝率はルメール騎手に次いでメンバー中2位だ。そして戸崎騎手も【12-16-4-50】と、乗り方を熟知しており、有馬記念2勝の実績も光る。
逆に期待しづらいのは、ここでも川田騎手だった。
当然、名手のC.デムーロ騎手が騎乗予定のミュージアムマイルも気になる1頭だが、同騎手はJRAの長距離G1で通算【0-1-1-5】、中山芝2500mも【1-1-2-8】といまひとつの成績。2500mの距離もやや長いとみて、今回は評価を少し下げてみたい。
結論としては、2つのデータで買い要素がそろった「ルメール×レガレイラ」「武×メイショウタバル」「戸崎×ダノンデサイル」が中心。ただし、穴党として推さずにはいられない爆穴候補が他に1頭いる。
爆穴候補となる馬は?
同馬は今年3月にデビュー5戦目で勝ち上がったものの、春のクラシックには間に合わなかった。しかし、6月のラジオNIKKEI賞を制し、続く菊花賞で3着に好走。結果的に差し馬が台頭する流れの中、4角早め先頭から3着に粘り込んだスタミナと先行力は、有馬記念でも警戒しておいて損はない。
結婚後に覚醒した荻野騎手の“一撃”はあるのか
また、エキサイトバイオの買い要素は騎乗予定の鞍上の荻野極騎手にも。これまで2500m以上の長距離G1は1度しか経験していないが、それが今年の菊花賞だった。さらに中山芝2500mのコースも3回騎乗しただけだが【0-1-2-0】で複勝率は100%をマークしている。
荻野極騎手といえば、今年5月に鹿戸雄一調教師の娘でタレントの成瀬琴さんとの結婚を発表。それを機に勝ち鞍を一気に増やした。11月には15勝の固め打ちを見せたが、これはルメール騎手の30勝、C.デムーロ騎手の24勝に次いで全騎手の中で堂々3位。最も勢いに乗る若手騎手が繰り上がり出走という幸運を味方に高配当をもたらす可能性は十分あるはず。
今年の有馬記念は、レガレイラ、メイショウタバル、ダノンデサイルの有力どころ3頭に加えて、エキサイトバイオと横山武騎手のコスモキュランダの伏兵2頭にも印を回してみたい。
文/中川大河
【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。
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