ここ数年、怒涛の出店攻勢をかけている「バーガーキング」。店舗数ベースでは「ロッテリア」を抜き国内ハンバーガーチェーン業界3位に浮上し、2028年末までに現在の約1.8倍となる600店まで拡大させるという計画を掲げており、「近くに店舗がない」という課題が徐々に解消されようとしている。

 バーガーキングをめぐっては以前から「ボリューミーで本格派のバーガーだけど価格が割高」というイメージが強かったが、業界トップのマクドナルドがここ数年、値上げを重ね、さらにバーガーキングにはアプリ利用による大幅な値下げや常時提供されている500円台からのセットメニュー「オールデイ・キング」もあることから、両チェーンの実質的な価格差は徐々に縮まりつつある。

 そこで気になるのが、商品のボリュームやクオリティ、価格などを勘案すると、コスパ面ではどちらに軍配が上がるのかという点だ。外食業界に詳しい識者の見解を交えて検証してみたい。

今や「バーガーキングのほうが低価格」というケースも…それでも...の画像はこちら >>

「25年12月だけで25店舗」怒涛の出店攻勢

 かつて日本市場から撤退したバーガーキングは07年に日本へ再上陸し、19年には店舗数は70店台にまで減少したが、その後は徐々に回復。24年1月には公式X上に「店舗を増やしたいのですが、物件探しに困っています。バーガーキングにぴったりの空き物件をぜひ紹介してください。実際に成約した場合には10万円差し上げます!」と投稿し、これが出店攻勢の狼煙に。25年12月だけで25店舗、同年1年間で85店舗もの新規出店を行い、約2年前の23年7月時点では191だった店舗数は25年末時点で337店舗にまで拡大。今後も手綱を緩めることなく出店を重ねていく計画だ。

 背景には経営面での大きな変更が影響しているとみられている。香港の投資ファンド・アフィニティ・エクイティ・パートナーズは25年11月、バーガーキングの日本事業を米ゴールドマン・サックス(GS)系ファンドに売却すると発表。GSはバーガーキングの価値を向上させて将来的に高値で売却する意向だとみられている。

今や値段はマクドナルドと変わらない?

 バーガーキングのファンにとって店舗の増加は歓迎すべきことだが、同チェーンの大きな魅力の一つが、ボリューミーかつ“肉々しい”パティだ。他の大手バーガーチェーンとは異なり、鉄板ではなく独自のブロイラーを使った直火焼きスタイルでパティを焼き上げ、「ワッパー」は一般的なハンバーガーの約1.4倍の大きさ。
各種ワッパーには一回り小さく価格も低い「ワッパーjr.」が用意されており、こちらは通常のハンバーガーと同じくらいのサイズとなっている。

 そんな他チェーンとは一線を画すクオリティを誇るバーガーキングにとって集客面でのハードルとなってきたのが、店舗数の少なさと「価格が割高」というイメージだ。実際には、競合他社のたび重なる値上げの影響などもあり、価格差は徐々に縮小。たとえばマクドナルドの「ダブルチーズバーガー」が450円(税込、店舗によって異なる/以下同)なのに対しバーガーキングの「ダブルチーズバーガー」は460円、マクドナルドの「てりやきマックバーガー」が400円なのに対しバーガーキングの「スモーキーテリヤキバーガー」は350円といったかたちで、商品によっては価格差がほぼない、もしくはバーガーキングのほうが低価格というケースも出ている。

「バンズの大きさ的にはバーガーキングの『ワッパーチーズJr.』とマクドナルドの『ダブルチーズバーガー』は同じくらいで、価格はともに450円だが、『ワッパーチーズJr.』はパティ1枚が肉厚な上、トマトとレタスが入っており、オニオンの量もマクドナルドのバーガーよりも多いため、食べ応え的にはバーガーキングのほうが上だと感じる。この2品の比較だけみればバーガーキングのほうがコスパが良いということになる」(外食チェーン関係者)

 また、バーガーキングの公式アプリ上では毎日のように値引きクーポンが配信されており、複数の条件が重なると半額以上割引になることも。加えて、曜日や時間帯を問わずバーガー類・フレンチフライ・ドリンクのセットメニュー『オールデイ・キング』が500円台から提供されており、マクドナルドのセットメニューに引けを取らない。以上から、いまや「バーガーキングは高い」とはいえない状況になりつつある。

「品質面のみ」ならバーガーキングに軍配が上がるが…

 
 マクドナルドとバーガーキングをコスパ面で比較した場合、どのように評価できるのか。料理人・飲食店プロデューサーで南インド料理「エリックサウス」総料理長の稲田俊輔氏はいう。

「あえて品質面のみで比較するならば、率直にいってバーガーキングに軍配が上がると思います。パティの原材料そのものはどちらも十分すぎるほど上質なものですが、バーガーキングはそれを直火で焼くことで、余分な脂を落としつつ、スモーキーな香ばしさを備えています。レタス、トマト、玉ねぎといった野菜の質感やフレッシュさにおいても、やはりバーガーキングに軍配が上がります。
個人的には、玉ねぎの差が特に大きいと感じています。食感や辛味など、玉ねぎの『薬味』として魅力がしっかり生かされているのがバーガーキングです。量と価格のバランスに関しては、ほぼ同等と感じます。メニュー表だけを見ると高く感じるバーガーキングですが、実際のボリュームに換算すると、ほぼ差がないどころか、クーポン等をうまく活用すればむしろバーガーキングのほうが計算上割安になるパターンもあります」(稲田氏、以下同じ)

 とはいえ、コスパやクオリティの高さがストレートに消費者の購買行動に結びつくわけではないという。

「品質的にはバーガーキングのほうが上、しかも価格は同等となれば、完全にバーガーキングの勝ちです。しかし単純にそうはならないのが飲食の面白いところです。脂を落として香ばしく焼かれたバーガーキングのパティより、牛脂にまみれたワイルドな風味の(臭みを残した)マクドナルドのパティのほうを好む人は案外少なくありません。実は私もその中の一人です。フレッシュな辛味を残したバーガーキングの玉ねぎより、完全に辛味を抜いたマクドナルドのほうが食べやすいと感じる人もたくさんいるでしょう」

マクドナルドには「バーガーキングにないもの」が

 そしてマクドナルドの大きな強みが、商品ラインナップの豊富さだという。

「マクドナルドは商品の幅が圧倒的に広いです。バーガーキングの『ワッパー』に相当するマクドナルドの商品は『ビッグマック』ですが、もっとシンプルに素材そのもののシンプルな味を楽しみたければ、『ダブルチーズバーガー』があり、『フィレオフィッシュ』があり、朝マックの『ソーセージマフィン』もあります。もっとも、バーガーキングにもほぼ同様な商品はあります。しかしマクドナルドにあってバーガーキングにないもの、それは、いかにも現代の日本人が好みそうな、複雑かつ一口目からインパクトの強い味付けです。
代表例は『サムライマック』でしょうか。パティの肉の味を覆い隠さんばかりの濃い味のソースは、日本人の嗜好と見事にマッチしています。

 また最近のマクドナルドは、『チキンタツタ』や『グラコロ』といった伝統的な人気メニューを期間限定で復活させる場合、オリジナルそのままのシンプルな仕立てに加えて、いかにも現代的な複雑濃厚な新バージョンも並行してリリースしています。あくまで正統派のアメリカンクラシックなバーガーにこだわるバーガーキングとの大きな違いはそこです」

どう使い分けるのが正解か?

 では、両チェーンの良さをより大きく享受しつつ利用する方法とは何か。

「個人的には、マクドナルドの真価はやはり、ごくシンプルな昔からの定番商品にあると思います。移動の途中や仕事の合間にも、素朴ながら良質で安心感のある味でひと時リラックスしたければマクドナルド。ランチやディナーとして地に足のついた食事を落ち着いて楽しみたければバーガーキング。そういう使い分けこそが、真の満足度につながるのではないでしょうか」

 近くにバーガーキングが出店した場合には、1度店舗で実食し、マクドナルドとの違いを自分なりに分析してみるのも楽しいかもしれない。

<TEXT/山田浩二、協力/稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長>

【稲田俊輔】
料理人・飲食店プロデューサー。鹿児島県生まれ。京都大学卒業後、飲料メーカー勤務を経て円相フードサービスの設立に参加。和食、ビストロ、インド料理など、幅広いジャンルの飲食店の展開に尽力する。
2011年、東京駅八重洲地下街に南インド料理店「エリックサウス」を開店。現在は全店のメニュー監修やレシピ開発を中心に、業態開発や店舗プロデュースを手掛けている。近著は『ミニマル料理 日々の宴』(柴田書店)。

【山田浩二】
飲食チェーンや学習塾、小売り企業を経てIT企業でシステム開発業務に従事。現在はフリーのライターとして主に企業・ITなどのジャンルに関する取材・記事執筆を行っている。
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