全国に約1300店を展開する「Hair Salon IWASAKI」(以下、イワサキ)は、カットが980円(税込)、平日10~12時はタイムサービスで690円(店舗により異なる)という破格の安さを誇っている。気になるのが、低価格ゆえに仕上がりの品質面や衛生面などで一定の水準が維持されているのかどうか、つまり「安かろう悪かろう」になっていないのかという点だ。
そこで今回は実際に店舗を訪問してカットしてもらい、QBハウスとの比較も交えて検証してみた。
全国47都道府県に進出、従業員数は4000人
イワサキは、1986年創業で約40年の歴史を持つハクブンが全国に展開する、東京・自由が丘発祥の美容室チェーン。「いつでも気軽に美しく」「親子3代で通えるファミリーサロン」をモットーに掲げ、ビルやスーパー、ショッピングセンターなどの商業施設、マンションなどに出店。駅近などの一等地にこだわらず住宅地の店舗も多く、なかにはドラッグストア「サンドラッグ」内やディスカウトストア「MEGAドン・キホーテ」内で営業する店舗もある。全国47都道府県に進出しており、北海道には42店舗、沖縄には16店舗を展開している(2025年12月末時点)。従業員数は4000人(パート従業員含む)を超え、同社公式サイトによれば売上高は149億円に上るが、上場はしていない。ちなみにQBハウスを運営するキュービーネットホールディングス(HD)は東証プライム市場に上場しており、売上高は255億円(25年3月期)、従業員数は3066名(25年6月末時点)。国内店舗数は585店舗(同)であり、イワサキのほうが2倍以上多いということになる。
QBハウスは積極的な海外進出を展開
両チェーンの違いとしては、イワサキの店舗は国内のみなのに対し、QBハウスは香港、台湾をはじめとするアジア、北米、カナダなど海外に約140店舗を展開しており、積極的な海外進出を進めている点があげられる。また、QBハウスは東京23区内の駅ナカなど都心部への出店も多いが、イワサキは住宅街などをメインの商圏に据えている模様。料金体系としては、QBハウスは1400円のワンプライス制なのに対し、イワサキはカット・ドライ付きが980円、カット・シャンプーが1980円、カット・シャンプー・ブローが2500円、さらにはパーマ(カット・シャンプー・ブロー)が3800円、カラーのセルフドライが1690円、ドライ付きが2190円といったかたちで複数のメニューを用意している。
格安価格でサービスを提供する一方、衛生面での対策にも力を入れている。
QBハウスとイワサキ、何が違うのか
気になるのが、仕上がりや接客サービスの品質だ。実際の利用を経験すべく、平日の17時頃に東京都内のイワサキ店舗を訪問してみた。店内に入ると自動発券機で「カットのみ」などのメニューを選択し、発券される受付票を受け取るというシステム(支払いは退店時に対人での会計)。受付票にはQRコードが記載されており、スマートフォンで読み取るとサイト上で呼び出し状況が確認できるため、待つ間に外出することが可能。ちなみにQBハウスも入店時に自動発券機で受付を行う方式だが、発券時にセルフで支払いを済ませる点がイワサキとの違いだ。また、QBハウスでは待ちスペースのベンチに座り、前の人のカットが終わるたびに徐々に一人分ずつ前に移動して席を詰めていく必要があるが、イワサキが番号が呼び出される方式なので、ずっと同じ席で待っていればよい点も異なる。このほか、QBハウスは呼び出されてからカットする座席前のロッカーに荷物やコートなどを入れるが、イワサキは入店時に店舗入口横のカギ付きロッカーに荷物を入れる流れとなっている。
イワサキの美容師のほうが業務負担が多い?
筆者が訪問した際は、前に2名ほど呼び出しを待つ客がおり、10分ほどで番号を呼び出された。シャンプー用の席も含めて計6席で美容師が3名という体制であり、同時並行で3人の客のカットが行われていた。カットが終わると担当した美容師がレジのところへ行き、客の会計を行い、さらに床に切り落とされた髪の毛を清掃して次の客を迎える準備も行っていた。QBカットでは精算は客が入店時に自動発券機でセルフで行うため、会計対応の分、イワサキの美容師は業務負担が多くなっているように感じた。ちなみに筆者は荷物を入店時にロッカーに入れておくというシステムを把握していなかったため、席に呼び出された際に荷物とコートを持って席へ行こうとし、美容師に指摘されて慌てて店舗入口横のロッカーに持っていくことになった。
一般的な美容室ではカットした髪の毛が服の中に入らないように首にエプロンのようなネックシャッターを装着してくれるが、イワサキでは紙のネックペーパーを使用。クリーニング代・乾燥代などを削減する目的があるのだと考えられる。
「細かいリクエスト」を伝える客に対する反応は?
いよいよカットが開始。まず、どのような仕上がりにするのかを聞かれ、耳の周りや後ろを刈り上げて、上部はスポーツ刈りくらいに短くカットしてくれるよう伝えたところ、「全体的に丸い感じになるようにするのか。もしくは上が平らに近い感じにするのか」「刈り上げは上のほうまでやってよいのか」「上の髪の毛はどれくらいの長さにするのか。半分くらい切ってしまってもよいのか」など、細かく丁寧に質問してくれ、このあたりは一般的な美容院と比べて遜色はない。ちなみに他の客は前髪やもみ上げの長さなどについて細かいリクエストを伝えていたが、担当する美容師は面倒そうな様子は一切見せずに「~のようになりますが、よろしいですか?」などと一つひとつ確認していた。こうした丁寧な接客サービスはQBハウスも同様であり、大手チェーンゆえの徹底した従業員教育が行われている様子がうかがえる。
カットが終わると、手持ち鏡で後頭部や頭部側面の仕上がりを見せてくれ、問題ないと伝えると、天井から伸びる掃除機のホースのようなもので頭や顔についた髪の毛を吸い取ってくれる。肌にあたる部分がブラシ状になっているのだが、QBハウスのものより少し硬く、時折ブラシが肌に刺さって少し痛みを感じてしまった。トータル15分ほどで終了し、入口付近のレジで担当美容師がレジ対応をしてくれる。今回訪問した店舗はQRコード決済には対応していなかったので、現金で支払いを済ませた。
ちなみに、店内に置かれた紙のメニュー表には「男性客も大歓迎」と書かれていたが、滞在時間30分ほどの間、女性客の姿は見当たらなかった。筆者は普段、QBハウスを利用しているが、QBハウスでも女性客を見かけたことはなく、現時点では両チェーンの主要客は男性なのかもしれない。
仕上がりとカット時間に大きな差はなし
もし自宅の近くに両チェーンの店舗がある場合は、1度、試しに両方を利用して比較してみると、思わぬ気づきを得られるかもしれない。
<TEXT/山田浩二>
【山田浩二】
飲食チェーンや学習塾、小売り企業を経てIT企業でシステム開発業務に従事。現在はフリーのライターとして主に企業・ITなどのジャンルに関する取材・記事執筆を行っている。
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