近年、特殊清掃業者で悲惨な現場などをSNSで共有する業者が増えてきた。ブルークリーン株式会社もその中の一つである。
だが、そういった動画の中には、よく見ると、依頼主のプライバシー情報がダダ漏れの動画も見受けられる。
都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、動画を作る際に気を付けていることについて話を聞いた。

依頼主のプライバシーを守るには…

「臭い」「ヤバい」孤独死の現場で“バズ狙い”の特殊清掃業者が...の画像はこちら >>
モザイクをかけるべきところにかけていない業者もまれにいる。

「バズ狙いなのかもしれませんが、悲惨な現場をありのままの姿で公開している業者はいますね。動画の素材をカットしていく中で、けっこう細かく見ていかないと、ふとしたところに依頼主の個人情報が映ってしまっていることって多いんですよ。

たとえば、何気ないところで年賀状が映ってしまっていたとかよくある話です。“プライバシーを守る”ということが、本人とわからないようにするまででいいのか、本人の尊厳ごとしっかり守っていくのか、きちんと決めなくてはなりません」

必ず守らなくてはいけないプライバシーとは何なのか。

「基本的には顔、住所、名前など、個人情報がわからなければいいと思います。書類とかが意図せず映りがちなんですよね。あとは、Googleマップから場所を特定しようとする人が増えてきたので、窓から外の風景が見えないようにするなど。

状況の説明にも気を使います。『都内某所で発覚した孤独死』といってモザイクをかけていても外の風景が明らかに歌舞伎町となると、すぐに場所が特定されてしまいます。今の時代は情報が漏れる原因はネットしかないので、そこの対処をしっかりしなくてはいけないと思います」

現場で「臭い」と言う業者も

特殊清掃業者の動画を見ていると、部屋に住んでいた人の尊厳を守らないようなやり方で発信する人も多いという。

「平気で『臭い』とか『ヤバいです。
このニオイ』とか言ってるんですよ。そういう発言は、個人の尊厳を守っていない行動だと思うんです。また、モザイクをかけていても部屋の様子を事細かに説明したり、見つけた写真で『女の人と写っています』とか、『こんな仕事をしている人です』とか、具体的なことまで言う業者もいます。

そういうコアなところまで突っ込んでいく動画って人気があるんですよ。でも、我々は特殊清掃業をアングラな仕事ではなく、衛生問題を解決する専門家で、プロフェッショナルなんですよ、というのを知ってもらいたいと思っています。たんなるバズ狙いの業者とはスタンスが違います」

特殊清掃を始めたばかりの業者は、動画でバズって会社の知名度を上げたいという目論見があるというが……。

「過激な動画を作って、知名度を上げたとしてもそれが仕事に繋がるかどうかは別の話です。どの業者に頼もうかと考えていた時に、ネットで調べてみて、プライバシーもへったくれもない動画を作ってる業者だったとしたら、そこに頼みますか? この業者にお願いしたら、親戚の家もこんな感じでネットに公開されちゃうのかなって。我々もSNSに動画を出している業者なので、常に気を付けなきゃいけないと思っています」

しかし、いくら気を付けていても、はたから見ればプライバシーを無視した行動だと捉えられてしまう可能性もある。

「昔は、定期的に現場の実態をアップしていきたいという気持ちはありました。なので月に何本、現場の映像を撮ると、目安を作って動いていきました。ですが、最近は他の業者の現場に密着する動画を見ていて、“これは一体何のためなのか? 本当に良いことなのだろうか?”と疑問が浮かんできました」

あくまで特殊清掃業者の仕事を伝えるため

「臭い」「ヤバい」孤独死の現場で“バズ狙い”の特殊清掃業者が増加…発信する側の倫理とは
鈴木亮太さん
時代の流れなのか、動画でバズって収益を上げたいという業者はかなり増えてきたようにも思える。

「最近、基本的には外部から密着の取材の依頼が来ている時以外は、現場の動画を撮らないようにしています。
我々の動画は現場を曝け出すというよりは、特殊清掃業者というのは一体どういう仕事なのかというのを発信する方向に傾いているので。

いままで撮った動画は消さずに残してありますが、基本的にはYouTubeチャンネルでのコラボ依頼とかがない限りは、自分たちで現場を撮るのは避けることにしました」

海外から取材の依頼も

「臭い」「ヤバい」孤独死の現場で“バズ狙い”の特殊清掃業者が増加…発信する側の倫理とは
海外から取材も
「最近は外国のジャーナリストから密着をお願いされることがあります。ドキュメンタリーのような感じで、現場で起こってることをありのまま撮るという案件です。そういった場合は、依頼主にきちんと動画の趣旨などを説明して許可をもらって撮影に挑んでます」

外国からの取材依頼として、「孤独死」は先進国の中でかなりホットな話題となっているらしい。

「先進国はどんどん少子化が進んでいて、世界的に孤独死が増えているんです。それで、自国の問題を見つめる時、外国(日本)ではどういった対応をしているのかというのをありのまま撮りたいというお話をいただくことはあります。

いまや孤独死は日本だけの問題ではなく、世界の多くの国で注目されているトピックスでもあります。ただ、ドキュメンタリーといっても全て包み隠さず撮るわけではありません。遺族の方にその都度確認して撮っています。誰が死んだかわからなければ自由に使ってくださいと言われることもありますが、その場合は、部屋の説明は最低限に抑えて、プライバシーに配慮した映像になるよう心がけています」

<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。
これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
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