「結局、セックスが自分を認めてもらえる方法だった。セックス依存症だったんだと思います」
そう語るのは、波乱万丈な人生を題材にしたエッセイマンガで注目を集める朝日奈愛コ(あさひな あいこ)さん。
彼女のマンガには、「周囲と同じように生きられない」女性の辛い実体験が赤裸々に描かれています。

醜形恐怖や自己肯定感の低さ、妊娠・中絶経験や、双極性障害での閉鎖病棟への入院。そして、「オフパコで出会った」という12歳年下の男性との結婚。波乱万丈な朝日奈さんの人生について聞きました。

セックス依存で経験人数は500人…女性マンガ家が双極性障害を...の画像はこちら >>

いじめられていた小学生時代

――朝日奈さんは小さい頃からマンガ家になりたかったんですか?

朝日奈愛コ(以下、朝日奈):私は生まれつき重度のアトピー性皮膚炎で。肌は真っ赤だし、ずっと身体を掻いているし。

肌が化膿して、下着に貼り付いちゃうこともありました。そんな点が変に思われてしまって、小学校のときにイジメられたんです。

でも、私は友達がほしくて、クラスの人気者が主役のマンガを描いたんですよ。それがウケて、面白い奴としてクラスに居場所ができたんです。

――絵の才能があったんですね。

朝日奈:母親が昔の少女マンガ風のイラストをよく描いていて、それを見て「自分も描きたい!」とマネしていました。

母親の反対を押し切りマンガの専門学校へ

――ご両親はどんな方ですか?

朝日奈:とにかく「普通でいてほしい」って親でしたね。将来は公務員、結婚して子どもを作って……みたいな。
とくに母親はすごく過保護で、型にはめようとするタイプ。

私は好き勝手やりたいタイプなので……仲は悪くないですが、性格的に合わなかったです。

――そんなご両親が、よくマンガ家を許してくれましたね。

朝日奈:許してはいないです(笑)。私、高校は進学校でしたが、在学中に「私はマンガ家になる!」って、マンガばかり描いていました。おかげで小さな賞ですけど受賞できたんですが、代わりに勉強は全然。

それで先生が「どこでもいいから進学してくれ!」って、見つけてきたのがマンガの専門学校だったんですよ。親は最後までイヤがっていましたけど。

醜形恐怖症の反動

――専門学校に進んでからは、マンガ家への道を一直線に。

朝日奈:……それもですけど、同時にヤリまくりの生活にも突入しました(笑)。学生ですから、飲み会が頻繁にありますよね。で、飲み会に行ったら毎回ヤル、みたいな。

――なぜそんな性生活を?

朝日奈:もともとアトピーがひどかったのもあって、醜形恐怖症だったんですよ。
「私はなんて醜いんだ」「こんな私を好きになる人はいない」って、自己肯定感も低かったです。

でも「身体を許せば男の人は私を見てくれる」と気付いて、その感覚にハマってしまったんですね。

――自分が女として認められる感覚ですか。

朝日奈:はい。私にとって「女として認められる」=「人間として認められる」だったんです。それがあって、次から次に、みたいな。

――そもそも、セックス自体は好きなんですか?

朝日奈:正直、好きかと言われると…? 気持ち良いのはたしかだし、相手から「うまい」とは言われますが、それはただ経験数が多いだけで。

経験人数は500人以上

――結局、現在までに何人と経験したんですかね?

朝日奈:今まで全部だと、500人はいっているかも。でもちゃんと数えていないので、神様に「実は1,000人だよ」って言われても驚かないです(笑)。それくらい中毒的だったと思います。

――3桁いくだけでも相当ですけどね(笑)。専門学校を卒業した後の進路は?

朝日奈:1年くらいフリーターをしながらマンガを描いて。

応募した出版社からある日突然、私のマンガが掲載された雑誌が送られてきたんです(笑)。
たぶん代原(雑誌に掲載予定のマンガが間に合わないときに、代わりに掲載するマンガ。代理原稿)なんですけど、それがデビューですね。

でも、マンガ1本じゃ食べられないので、アシスタントやイラストの仕事、あとはバイトでなんとか、な状態でした。

妊娠から中絶、双極性障害で閉鎖病棟へ入院

――男性関係のほうは相変わらずですか?

朝日奈:相変わらずです。いろいろな人と付き合ったり、ワンナイトしたり。……ツラい思い出もありますね。

22歳か23歳の頃、ツラすぎて自分のなかも記憶がぼやけているんですが、妊娠して中絶したんです。そのときの彼氏が避妊をせず無理やりしてきたのですが、当時の私は拒めませんでした。

――産もう、とはならなかった。

朝日奈:彼氏は賛成してくれず、両親に相談したら「堕ろしなさい」と。それで中絶したんです。

でも罪悪感がすごくて、もともとうつ病気味だったのが錯乱状態みたいになって、精神病院の閉鎖病棟に入院しました。病名は「双極性障害」でしたね。


数か月間入院して、その後25歳のとき、ネットで知り合った10歳上の男性と結婚したんです。

結婚するもセックスレスが原因で浮気・離婚

――いきなりですね。

朝日奈:ツラくて自分の経験を誰かに聞いてほしかったんです。そのとき、しっかり話を聞いてくれて「愛コちゃんはすごくいい子だと思う。ツラいなら一緒に暮らそう」って言ってくれた人で、結婚したいと思いました。

でも、私が浮気してしまって……。彼は許してくれたんですが、私から頼んで離婚してもらいました。

――なぜそんないい人を裏切ってしまったんでしょう。

朝日奈:実は彼とはセックスレスで。でも私は身体の関係を持つことで自分の存在意義を保ってきた人間なので、「夫に求められない」状態が耐えられなかったんです。

そこに躁状態も重なって、浮気に走ってしまったんですね。彼は何も悪くないので、本当に申し訳ないことをしました。

乳がんを患って右胸を全摘

――その後、乳がんが判明。右胸を全摘なさった。


朝日奈:はい。アトピーの薬を塗っているとき、胸のしこりに気付いたんです。それで病院に行ったら、乳がんでした。

がんは乳首のほうまで到達していて、全摘を勧められたので取っちゃおう、と。幸い、ステージ0でした。

――胸を全摘して、性欲や恋愛に影響はありました?

朝日奈:性欲は変わりませんね(笑)。オフパコをしていましたし、それで今の夫にも出会っているので。

オフパコで12歳年下の男性と出会い結婚

――オフパコって、どういうものなんですか?

セックス依存で経験人数は500人…女性マンガ家が双極性障害を経て“精神的に安定”するまで。「周囲と同じように生きられない」壮絶な半生
オフパコ相手と結婚するまでの過程はすべてマンガになっている
朝日奈:オンライン=ネットで出会った相手と、オフライン=現実世界でパコるから「オフパコ」ですね。で、私が44歳のとき、12歳年下の夫に出会ったんです。

私は年も年だし、適当に遊びながらひとりで生きていくつもりだったんですけど……彼が好きすぎて「絶対一緒になりたい!」という気持ちが高まってしまって。

――それでご結婚。おめでたいですが……セックス依存症のほうはどうなったんでしょうか?

朝日奈:それは大丈夫です!夫と結婚して、もうほかの男性としなくて良いのにほっとしたくらいでした。

夫は医療関係者なので、私の病気(双極性障害)にも理解がありますし、なによりご両親がすごく良い人たちなのも大きいです。


私自身も双極性障害の薬を20年以上飲んで、病気との付き合い方もわかったので。そういうタイミングがピッタリとハマって、結婚できたんだと思っています。

「パイプカット」が原因で大炎上

――旦那さんが朝日奈さんのことをしっかり見ていて、認めてくれているのも精神的な安定につながっているんでしょうね。

朝日奈:うちの両親は、大反対していましたが(笑)。でも彼がいい人で、今では「なんであんな人が、あんたみたいなのをもらってくれたんだろうね」って感謝してるくらいです。

だから、夫のおかげで両親とも和解できました。

ただその後、夫にパイプカットをしてもらったことをマンガにしたら、SNSで大炎上してしまいました。

――おふたりが話し合って決めたんですよね?

朝日奈:はい。私は中絶経験にすごく罪悪感があるということを、夫にすべて打ち明けました。

そもそも双極性障害の薬は妊娠禁忌なので、1%でも妊娠の可能性があるのは怖かったんです。夫もそこを納得して、受け入れてくれました。実際にパイプカットをされた男性に話を聞きに行って、不安な点を聞いたりして。

そういう経験をしたことがある人は少ないだろうなと思って、マンガにしたら炎上しました。

――強制したなら問題ですけれども、そうじゃないのに炎上したんですね。ところで、パイプカットしても日常に不便はないんですよね?

朝日奈:夫は「ない」と言っていますね。射精もできますし、量も変わらないですし。

――初めて知りました。しかし、本当に波乱万丈と言うか、いろいろなことが起こる人生ですね。

朝日奈:本当に、おかげでエッセイマンガのネタには困りません(笑)。

――最後に、今後の目標について教えてください。

朝日奈:エッセイマンガ以外にも、シリアスなストーリーマンガも描いているので、どちらも頑張っていきたいですね。連載企画のご相談も歓迎しています!実話ベースのエッセイマンガや、人間関係や感情の機微を描くヒューマンドラマが得意です。

<取材・文/蒼樹リュウスケ>

【蒼樹リュウスケ】
単純に「本が好きだから」との理由で出版社に入社。雑誌制作をメインに仕事を続け、なんとなくフリーライターとして独立。「なんか面白ければ、それで良し」をモットーに、興味を持ったことを取材して記事にしながら人生を楽しむタイプのおじさんライター
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