人気カフェチェーンの「スターバックスコーヒー」(以下、スタバ)では、レジなどで店員が客に気さくに話しかける光景がおなじみであり、スタバの高い接客サービス品質の表れの一つとされている。だが一方で、客に話しかける回数が店員の人事評価や昇給などに影響を与える評価項目になっているという噂をSNS上で目にした。
実際のところはどうなのか、スタバを直撃した。
スタバの店員の“声がけ”はノルマだった?「客に話しかける回数...の画像はこちら >>

2位ドトールにダブルスコア…国内店舗数はスタバが独走

 1996年に東京・銀座に日本1号店をオープンして日本に上陸したスタバは、全国に積極的に店舗網を拡大させ、2013年には1000店舗を達成。その後も出店の勢いは衰えることなく、長年にわたり国内トップの座に君臨していたドトールコーヒーショップを逆転。現在ではスタバの店舗数は約2077(25年9月30日時点)、ドトールは1083(25年11月末時点)と約2倍の差がついている。ちなみにカフェチェーンの店舗数としては3位のコメダ珈琲店は1055(25年2月末時点)とドトールに肉薄、4位のタリーズコーヒーは約800。

 コーヒー1杯(Sサイズ)の価格を比較してみると、スタバの「ブリュード コーヒー」は380円(税込)、ドトールの「ブレンドコーヒー」は280円、コメダの「コメダブレンド」は460円、タリーズコーヒーの「本日のコーヒー」は390円。フルサービス型喫茶店をうたい客が席についたまま注文するスタイルのコメダよりは低く、タリーズと同等、ドトールより100円高いという水準だ。

ドトールと対照的な高単価戦略

 スタバにとって重要な集客アイテムとなっているのが、頻繁に投入される期間限定メニューだ。たとえば現在は「玉露抹茶 フラペチーノ」(700円)、「ホワイト ピーチ & ジョイフルメドレー ティー フラペチーノ」(790円/限定店舗)などが販売されている。女性客から人気の高い「キャラメル フラペチーノ」「抹茶 クリーム フラペチーノ」などのフラペチーノ類としては500円以上のメニューが並ぶ。

「ドトールと比べてスタバは女性客の比率が高く、ふんだんにホイップクリームやキャラメルクリーム、チョコレートチップなどが乗せられたフラペチーノやエスプレッソを、スイーツとして楽しむという顧客行動がみられる。また、居心地の良い店内空間づくりにも注力しているため客の滞在時間が長い分、客は割高な支払いを惜しまない。こうした要因が重なり、ドトールと比べて客単価が高くなっているとみられる。このほか、店舗でのコーヒー豆やタンブラーなどの各種アイテム販売、コンビニやスーパーなど他社の小売店向けのビバレッジ商品、コーヒー豆の販売にも注力して比較的高単価を維持しており、トータルで高い売上と利益率の実現につながっている」(外食チェーン関係者)

 こうしたスタバの戦略は業績に表れている。
単純比較はできないが、ドトールの運営会社・ドトール・日レスホールディングスの25年2月期(店舗数1073)のドトールコーヒーグループ売上高は約884億円(コンビニ等へのコーヒー製品の販売事業なども含む)なのに対し、スタバの上場廃止前の14年3月期(店舗数1007)の売上高は1256億円と約1.4倍となっている。

フレンドリーな接客に賛否の声も…

 スタバの魅力の一つが、店員による“フレンドリーな接客”だ。メニュー選びで迷っていると「よろしければお手伝いしましょうか」とサポートを受けたり、顔なじみになった店員から「暑いですね」「休日なのにお仕事ですか?」「●●がおすすめです」といった声をかけられた経験がある人は少ないないだろう。

 店員との他愛のない会話は多くの人にとっては軽い息抜きとなるが、少し前にあるXユーザーが「毎回話しかけてくるのガチ嫌」「話しかけるとボーナスポイント貯まる制度でもあるの?」と投稿。これに対し、元店員とみられるユーザーから、スタバでは店員は積極的に客に話しかけるよう教育され、声がけの回数が人事評価や昇給に影響するという声が多数寄せられているのだ。

ノルマは設定されているのか。真相は?

 これは事実なのかを確認すべく、スターバックス コーヒー ジャパンの代表電話に複数回問い合わせ、担当部署より折り返す旨を告げられたが折り返しがなかったため、お客様相談室に問い合わせたところ、以下の返答が得られた。

「ノルマのようなものは設定されておりませんので、お客様にご満足いただけるようなサービスをさせていただいている状況でございます」

 外食チェーン関係者はいう。

「一般論として、接客業である限りは、どれだけ丁寧に顧客と接しているのか、どれだけ積極的にコミュニケーションを図り顧客の不満やストレスを取り除いて顧客満足度の向上に貢献しているのかという点は、従業員への重要な評価ポイントとなるのは当たり前です。特に飲食チェーンのなかでは高いブランド価値と顧客ロイヤルティの維持を重視するスタバだけに、スタッフ一人ひとりの接客サービス品質の向上には強く意識を払っているでしょう。将来接客業に就くことを考えている学生が経験を積むため、勉強のためにスタバでアルバイトをするというケースも少なくなく、その経験が実際に就活で有利にはたらくといわれるほど、その接客サービスのクオリティの高さは、外食チェーンのなかでは群を抜いているといっていい」

 スタバを訪問した際には、店員が接客する様子を注意深く観察してみると、新たな気づきを得られるかもしれない。

<TEXT/山田浩二>

【山田浩二】
飲食チェーンや学習塾、小売り企業を経てIT企業でシステム開発業務に従事。現在はフリーのライターとして主に企業・ITなどのジャンルに関する取材・記事執筆を行っている。

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