2025年も企業による大規模な人員削減が相次ぎました。
 公表されたデータで削減数が最も大きかったのが第一生命ホールディングスの1830人。
2位がジャパンディスプレイの1483人。3位が三菱ケミカルグループの1273人です。

 この3社のリストラは背景が大きく異なっており、「大企業にいるから安心だ」という会社員の思い込みが幻想であることを物語っているかのようです。

「大企業なら安心」はもはや幻想か…2025年に「1000人規...の画像はこちら >>

非保険領域の拡大を目指す第一生命

 第一生命は50歳以上の営業職を除く社員を対象に、4000人規模の希望退職者の募集を行いました。

 これだけ大規模なリストラに踏み切っているものの、足元の業績は決して悪いわけではありません。2025年3月期の純利益は前期比33.9%増の4296億円。いわゆる黒字リストラです。

 人員削減の背景には非保険領域の強化があります。

 第一生命は2024年度から2026年度までの中期経営計画において、2026年度に実現したい姿の1つに「保険サービス業への変革に向けた基盤構築」を挙げました。そして、非保険領域の拡大を行い、2030年度にグループ修正利益における10%規模まで成長させることを目指すとしています。

 2023年に官公庁や企業の福利厚生業務の運用代行を手がけるベネフィット・ワンへのTOBを発表。ベネフィット・ワンは医療情報サービスのエムスリーが買収を仕掛けて争奪戦になりましたが、第一生命が高値を提示して競り勝ちました。

 2025年10月にウェルス・マネジメントと資本業務提携契約も締結しています。
これにより、ウェルス・マネジメントを持分法適用会社に。この会社はホテルの開発・運営など不動産事業が中核であり、これも非保険領域の拡大を目指した動きです。

年功序列型制度の廃止に動いた

 会社が大きく変化する中で、第一生命は2027年4月を目途に人事制度を刷新する計画を立ち上げました。年齢や職種にとらわれない、役割・成果や専門性と連動した処遇を重視するのです。

 50歳以上と比較的年齢が高い従業員の中には、変化のスピードについていけない人も出てきます。この大規模なリストラは、新事業を成長させる中で年功序列という旧来型の組織を変えるためのもの。

 第一生命以外の多くの企業も成果や人材の専門性を重んじるようになってきた今、同じようなリストラに取り組む事例が出てくることを示唆しているようです。

業績が回復しないジャパンディスプレイ

 ジャパンディスプレイは業績が回復しないという、ド直球とも言えるリストラ策。すでに11期連続の赤字であり、今期も上期は113億円の純損失。

 2025年3月に鳥取工場での生産を終了。2026年には茂原工場を閉鎖してデータセンターに転用するなど、コスト構造の転換を急ピッチで進めています。

 ソニー、東芝、日立という日本を代表する電機メーカーのディスプレイ事業を統合して生まれた会社で、設立には官民ファンドである産業革新機構が関わりました。いわば国策とも言える会社。Apple向けのディスプレイとして存在感を発揮し、2014年に株式を上場。
売上は右肩上がりで2016年3月期に9890億円のピークに。しかし、これを境に減収へと転じました。

 これはスマートフォンのディスプレイの主役が有機ELに切り替わったためで、サムスンやLGにシェアを奪われたのです。現在は自動車向けの小型ディスプレイなどを中心に製造していますが、2025年3月期の売上高は1880億円。全盛期の1/5ほどにまで縮小しています。

構造改革を進めても損失を埋められない

 2025年7-9月における、鳥取・茂原工場生産終了の数量減は、43億円の営業利益下押し要因になっています。一方、工場の閉鎖と人員削減による構造改革により、61億円の改善効果が生まれました。従って、18億円のリストラ効果を生んでいるのです。

 しかし、この四半期の営業損失額は53億円であり、まだまだ大きな穴が開いているというのが正直なところ。

 非常に厳しい戦いを強いられており、中期的な人員削減が続くことも予想できます。

 なお、ジャパンディスプレイに出資をしていた産業革新機構(現在のINCJ)は、ジャパンディスプレイの全株をすでに売却しているものの、1547億円の損失を出したことが明らかになっています。

コングロマリット解消を目指す三菱ケミカル

 三菱ケミカルは今期の純利益が前期の1.8倍に拡大する予想を出しており、決して業績が悪いわけではありません。大規模な人員削減の背景にあるのは組織変革であり、第一生命と似ています。
異なるのは、事業領域の拡大の逆であるということ。コングロマリットを解消してコア事業への選択と集中を進めるのです。

 「中期経営計画2029」において、「ビジョンの整合性」「競争優位性」「成長性」の3つの基準に満たない事業は整理、撤退すると宣言しました。特に石油化学製品などのケミカルズ事業を最も稼ぐセグメントにするべく、コア事業の磨き込みを行う計画です。

 大胆な改革に伴い、人員構成の最適化を図るため、希望退職者の募集を行いました。

 三菱ケミカル以外の会社もかつては競争優位性を獲得するため、事業の多角化を進めた時期がありました。しかし、今はコングロマリットディスカウントという株価の低迷に悲鳴を上げるケースも少なくありません。複合的な事業展開をする会社に対して、市場が厳しい見方をするようになったのです。

 東証がPBR改善を各企業に迫る中、コングロマリットの解消は日本企業のトレンドの一つになるかもしれません。それにあわせた大規模なリストラが進行してもおかしくはないでしょう。

<TEXT/ 不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。
得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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