余暇時間を潰すにも、コンテンツの選択肢が多すぎて思考停止することはないだろうか。筆者は、一周回って「何も考えずに眺められ、なおかつ笑える動画」を欲することがよくある。

そう感じる人は少なくないのだろう。なぜなら「街角にある甲冑を着たマネキンが突然動く」という、シンプルなドッキリ動画が人気を博しているからだ。もっとも多いもので2460万回と、驚異的な再生回数を記録。川越や浅草の街角で往来する観光客を驚かせる姿は、不思議と飽きずに眺めていられるのだ。

さて、多くの人の目に留まっているわけだが、甲冑に包まれた彼の思いや背景は、今まで語られていないようだ。

この動画を制作する「PRANK JAPAN」を直撃し、意図や裏側を尋ねてみよう。

「カップルには容赦しない」浅草や川越に出没する“動く甲冑”の...の画像はこちら >>

未知の挑戦への投資…まず「30万円の甲冑」を購入

YouTubeチャンネルPRANK JAPANは、数人で運営されるチーム。今回、話を聞いたのは担当者A氏。なぜ匿名かというと、人数や年齢を含め、詳細は非公開とのことだからだ。まずは、ドッキリ動画を投稿し始めたきっかけについてだ。

「私は、もともと日本の伝統文化が好きなんです。大学生の時に、茶道や紙漉き(かみすき)、武道など、それぞれの専門家の方に協力いただきながら、子どもたちに体験してもらう活動をしていました。この時点で、日本の伝統文化を広める活動にやりがいを感じたんです。
ドッキリ系の動画に行き着いたのは、海外で流行っていたから」

情緒や伝統を感じられる川越や浅草を中心に活動していることからも、その思いは感じ取ることができる。本気度具合は、設備投資からも汲み取れる。

「動画を始めるにあたって、まず探したのが甲冑。どのくらい見てもらえるか全くわからないなかではありましたが、思い切って約30万円のものを購入しました」

カップルには容赦なし?撮影現場の意外な掟

老若男女、国籍問わず様々な人が驚く姿は、言語を超越したコンテンツになっているが、もちろんその裏には見えない苦労もあった。

「驚かそうと思ってやっているんですが、驚かれすぎるのもよくないんですよね。以前、大きな悲鳴が何度か続いてしまった時には、近所のお店の方から注意を受けてしまったことも……」

ドッキリは日常にイレギュラーを起こすことで面白さが発生するわけだ。だが、調整弁をコントロールできないと即トラブルに繋がる。

単に驚かすだけなら、突然大声をあげたり、追いかけたりすることも想定に入りそうだが、同チャンネルは、ほんの一瞬動くだけに留めていて、非常に抑制的だ。

「やっぱり、怪我をさせてしまったりしては元も子もありませんからね。自分たちに“掟”を課しています。お年寄りに仕掛けないこと、子どもには優しくということですね。特に小さい子は、親御さんが近くにいることを確認しながらやっています。一方で、カップルには容赦しないことも掟にしていますけど(笑)」

また、本来の目的が驚かすことではなく、日本文化に触れてもらうことであることも、オーバーになりすぎない理由になっているようだ。


「2460万回再生」の動画は、なぜ注目されたのか



登録者数20万人超のPRANK JAPANチャンネルの動画は、100万回再生を超える動画も複数ある。ひときわ飛び抜けた再生数を誇るのが、4年前に投稿されたもので、なんと2460万回。コメント欄には英語や中国語なども多く、海外でよく見られていることがわかる。

まさに規格外のバズり方。かつてのピコ太郎のように、世界的な有名人に紹介されたのだろうか。

「私の知る範囲では、そういう大きなきっかけみたいなものはなく、徐々に伸びていった感じですね。タイミングが良かったんだと思います。今は似たような動画を作っている方もいらっしゃいますが、当時はまだ珍しかったので」

しかし、よくよく話を聞いてみると、海外でも見られるような工夫が施されているそうだ。

「海外の方向けに、動画内のテロップは英語をメインに。それから、効果音も日本特有のものはなるべく使わないようにしています」

来られないからこそ、映像を届けたかった

PRANK JAPANのチャンネル開設は2020年。当時は、ご存じの通りコロナ禍真っ只中。街中にインバウンドの観光客の姿はほとんど見られなかった。

「最初の頃の動画は、日本の方が驚いているものがほとんどです。
日本に来られないからこそ、この動画を見て素敵な景色を感じてほしいという気持ちはありましたね」

そんなコロナ禍がターニングポイントを迎えたのが2023年5月。日本政府が、コロナの感染症を5類に移行し、あらゆる行動制限が解除された時期だ。甲冑の中から、その変化はどう映っていたのか。

「もちろん海外の方は一気に増えましたし、日本人も徐々に高齢の方が外に出て来られるようになったと感じます。時流に合わせて、お店もインバウンド向けが増えており、町の景色も日夜変わっています」

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今や「動画見ました」と、動くことをわかって近づいてくる人も増えているそう。「日本には魅力的な景色がある場所がたくさんあるので、まだ行ったことのない地域でもやりたいですね」と、さらなる意欲を語る。

旅先で、あなたがこの赤い甲冑を見かける日も近いのかもしれない。

<取材・文/Mr.tsubaking>

「カップルには容赦しない」浅草や川越に出没する“動く甲冑”の正体。世界中で見られる理由は意外と地味だった
PRANK JAPAN


「カップルには容赦しない」浅草や川越に出没する“動く甲冑”の正体。世界中で見られる理由は意外と地味だった
PRANK JAPAN


「カップルには容赦しない」浅草や川越に出没する“動く甲冑”の正体。世界中で見られる理由は意外と地味だった
PRANK JAPAN


【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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