2026年の野球界は2月のオープン戦から本格的に始まり、3月にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開催が予定されている。

アメリカは投手陣も本気モード

 第6回を迎えるWBCは、アメリカもかなりの本気モード。調整の難しさもあって、過去5回は投手陣の層がやや薄かったが、今回はタリク・スクバル(タイガース)とポール・スキーンズ(パイレーツ)のサイヤング賞投手2人も出場を予定している。


 野手もアーロン・ジャッジ(ヤンキース)を筆頭に、カル・ローリー(マリナーズ)、カイル・シュワーバー(フィリーズ)など一線級が顔をそろえる。連覇を目指す日本にとって、前回大会で決勝を戦ったアメリカは避けては通れない最難関の相手となるだろう。

 注目の侍ジャパンもアメリカに負けていない。現時点で出場予定と発表された日本人メジャーリーガーは、大谷翔平、菊池雄星、松井裕樹、菅野智之(去就未定)の4人だけだが、今後、山本由伸や今永昇太らの名前が加わっていってもおかしくない。

 記憶に新しい3年前の第5回WBCは、栗山英樹監督の下、愛弟子の大谷がチームを引っ張り3大会ぶりに優勝。吉田正尚が準決勝のメキシコ戦で放った奇跡の同点3ランや、ラーズ・ヌートバーの躍動なども日本を大いに盛り上げた。

 アメリカとの決勝戦では、大谷が当時のチームメートだったマイク・トラウトと歴史に残る名勝負を演じ、世紀の名シーンとして長く語り継がれることになるだろう。

前回WBCの“視聴率フィーバー”を振り返る

 今大会は井端弘和監督の下、3年前の再現が期待されるが、“国内の盛り上がり”という点では、大きな変化が起こると予想されている。ここで3年前のWBCを「視聴率」という視点で改めて振り返ってみよう。

 4つのグループに分かれて行われた1次ラウンドは、侍ジャパンの試合が国内で行われたこともあり、世帯視聴率は4試合すべてで40%台を記録した(ビデオリサーチ調べ いずれも関東地区)。中国やチェコといった“格下”相手の試合も多く、4試合すべてが6点差以上だったにもかかわらず、ファンの注目度は高かった。

 結果として、同年の年間視聴率ランキングの上位のほとんどを侍ジャパンの試合が占めた。主にWBCを取り上げた報道番組も含めれば、11位までを侍ジャパン関連が独占していたというから驚きだ。


 特に大谷が3番投手兼指名打者として先発マウンドに上がった準々決勝のイタリア戦は48.0%という高視聴率をマーク。これは2023年の年間視聴率ランキングで断トツの数字だった。

 前回大会は準々決勝までを圧倒的な展開で5連勝を飾った侍ジャパン。その勢いはアメリカに移動後の準決勝と決勝も衰えなかった。

 メキシコ戦は日本時間午前中の試合開始にもかかわらず、祝日という後押しもあって、42.5%という高視聴率を記録。翌日のアメリカとの決勝は平日の午前9時開始だったが、それでも42.4%を記録した。

ネットフリックス独占配信がもたらす現実

 まさに紅白歌合戦や箱根駅伝を大きく凌駕する“国民的行事”と化したWBCだったが、あれから3年がたち、今年のWBCはかなり様相が異なっている。今大会は、もし侍ジャパンが快進撃を見せたとしても、3年前と同じような盛り上がりにはならない可能性が高い。

 その最大の理由が、野球ファンなら既知の通り、アメリカの定額制動画配信サービス『ネットフリックス』が第6回WBCの日本におけるメディアライツを獲得したためだ。

『ネットフリックス』が大会の全47試合をライブとオンデマンドで配信するが、その権利は独占契約となっており、地上波中継については録画を含めて放送する予定はないという。

『ネットフリックス』は、大会期間中に日本代表選手の出身地の自治体などでパブリックビューイングを行う方針を示してはいるものの、これまでのように手軽に自宅のテレビで観戦することは難しくなったというわけである。

歓迎と落胆が交錯する「地上波なしWBC」

 これにはSNSなどで残念がるファンの声がほとんどを占めているが、一部からは歓迎の声も聞かれる。

「ニュースが大谷ばかりなってて本当にしつこったかから、地上波なくて良かったです」
「大谷選手は大好きですが、正直うんざりな部分があった」

 過去2年はドジャースが2連覇したこともあって、大谷の一挙手一投足が昼の情報番組や夜のニュース番組で取り上げられる機会が多かった。いわゆる“大谷疲れ”を起こしていた人たちにとって、WBCが地上波で放送されないことは朗報だったといえるだろう。


スポーツ観戦の転換点となる可能性も

 3年前と同じように地上波で放送されれば、多くの国民が視聴することになっていたはずのWBC。6回目にして初めて地上波での視聴が不可能な大会となるが、果たしてどれだけのファンが料金を支払ってまで試合を視聴するのか——。

 第6回WBCは、スポーツ界にとっても、テレビ界にとっても、大きな転換点となるかもしれない。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
編集部おすすめ