今回お話を伺ったのは、住宅メーカーで営業職を務める小島さん(仮名・34歳)。物腰の柔らかい、清潔感のあるスーツ姿の男性ですが、実は、かつて空手で全国大会への出場経験もある武闘家なのだそうです。

 そんな彼が、仕事帰りのコンビニで遭遇した、滑稽かつ爽快なエピソードを語ってくれました。

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深夜のコンビニで群がる不良少年たち

 その日、小島さんは連日の残業を終え、疲れ果てていました。深夜の空腹を満たすため、営業車で自宅近くのコンビニへ立ち寄ったのは、日付が変わる少し前のことです。

「一刻も早く弁当を買って帰りたかったんです。でも、駐車場に入って驚きましたよ。入り口の目の前、唯一空いていた駐車スペースを、若者の集団が完全に占拠していたんです」

 そこには高校生くらいに見える少年たちが8人、車を停めるべき場所にベタ座りして、タバコを吹かしていました。小島さんがバックで車を寄せても、彼らは動く気配すら見せません。

「普通、車が近づけば反射的に避けますよね? でも彼らは違う。数名がこちらを鋭く睨み返してきたんです。夜の静寂の中で、その異様な光景に少しゾッとしました。ただの通りすがりの客としては、関わりたくないタイプの人種でしたね」
            

エスカレートする「ガキの挑発」

 無視して別の場所を探そうにも、そこしか空きはありません。小島さんは意を決して窓を開け、丁寧に声をかけました。

「すみません、停めたいんですけど、のいてもらえますか?」

 しかし、この誠実な対応が、逆に彼らを刺激してしまったようで、集団の中で最も体格の良い、親分らしき男が無言で歩み寄ってきたといいます。

「『俺らが先にいるんだから、なんでのかなきゃいけないんだよ。
どっか他に停めろよ』って、顔を近づけて凄んできたんです。彼らからすれば、私はただの弱そうなサラリーマンに見えたんでしょう。その勢いに乗じて、周りの連中も騒ぎ出しました」

 行為は次第にエスカレートします。数人が小島さんの営業車のタイヤを蹴りつけ、トランクを拳で「ドンドン!」と激しく叩き始めました。

「周りには他の客もいたんですが、みんな見て見ぬフリです。関わったら負けだと思っているんでしょうね。車を傷つけられるのは困りますが、正直、怖さは全くありませんでした。高校時代、空手で全国まで行きましたから。その気になれば全員、一瞬で地面に這わせる自信はあったんですけどね……」

一撃必殺の「魔法の言葉」

 暴力で解決するのは、社会人として失格です。かといって、このまま車を叩かせ続けるわけにもいきません。小島さんは、怒鳴りつけるよりもはるかに効果的で、かつリスクのない方法を瞬時に思いつきました。

「戦っても時間の無駄だと思ったんです。早く弁当を買って、風呂に入りたい。
だから、窓を全開にして、あいつらの目の前でスマホを取り出しました。そして、わざと聞こえるような大声で話し始めたんです」

 小島さんは、誰にも繋がっていないスマートフォンの画面に向かって、ハキハキと、事務的な口調でこう言い放ちました。

「あー、事件です。はい。今すぐお願いします。市役所向かいのセブンイレブンにいます」

 この「事件」というキーワードと、具体的な場所を告げる冷徹な声は、ヤンキーたちの耳に特大の警鐘として響きました。

コンビニの駐車場を占拠するヤンキー8人組を追い払った“効果的な方法”「イキがっていた彼らの顔色が一変しました」
警察騒ぎに
「『警察への通報』だと瞬時に判断したんでしょうね。さっきまでイキがっていた彼らの顔色が一変しました。主犯格の男が『やべえ、マジかよ!』と叫んだのを合図に、8人が蜘蛛の子を散らすように四方八方へ駆け出していきましたよ。あの逃げ足の速さだけは、全国大会レベルだったかもしれません」

静寂を取り戻した駐車場と、消えない余韻

 一瞬にして駐車場は静まり返りました。数秒前まで車を揺らしていた暴力的な振動も、耳障りな罵声も嘘のようです。

「本当に、漫画みたいに一目散に散っていきましたよ。
残ったのは、彼らが捨てたタバコの吸い殻と、少しだけ凹んだ私の車のトランクだけ。結局、彼らも警察という権力が一番怖い、ただの子供だったということですね。私はそのまま、何事もなかったかのように悠々と車を停めました」

 小島さんは入店し、当初の目的通り弁当と飲み物を購入しました。レジの店員は、外で何が起きていたか気づいていたようですが、気まずそうに目を逸らしていたといいます。

「買い物を終えて家に向かう道中、なんだか可笑しくて笑いが止まりませんでした。空手の技を使うまでもなく、スマホひとつで完全勝利ですから。でも、もしあそこで本当に手を出していたら、私の人生が変わっていたかもしれない。そう思うと、冷静になれて良かったです」

 帰宅して弁当を食べ終えた今でも、小島さんの脳裏には、必死の形相で闇夜に消えていった少年たちの後ろ姿が焼き付いていたそうです。

「今回はこれで済みましたが、もし彼らがまた別の場所で同じことをしていたら? あるいは、相手が私のようなフリをできない人だったら? そう考えると、少しだけ胸のざわつきが止まらないんです。あの『事件です』という言葉、いつか本当に使う日が来ないことを願うばかりですよ」

<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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