発症した際に激しい痛みを伴う疾患は数多く存在するが、なかでも“三大激痛”と呼ばれているのが尿管結石と心筋梗塞、それと膵炎だ。
 ちなみに主な原因は、アルコールの多量摂取や胆石症だが、原因不明の特発性も全体の2割を占める。
しかも、慢性膵炎ではなく急性膵炎だったとしても再発のリスクは高く、アルコールが発症の原因でなかったとしても飲酒を控えるのが望ましいとされている。

「なんでウーロン茶?」病気を理由に断酒中の部下に酒を飲ませよ...の画像はこちら >>
 そのため、常識的に考えれば、相手が膵炎の罹患歴を理由にお酒を断ってきたら、それ以上は何も言わないのが当たり前。そもそも相手が理由を言わなくても、お酒を勧めるのは注意すべきである。特に会社で上司がこれをやってしまうと、アルハラになりかねない。

課長のパワハラが常習化

 主婦の和田穂香さん(仮名・40歳)の前職は信用金庫の行員。夫の転勤先に一緒についていくことになり退職したが、そこで唖然とするようなアルハラの現場に遭遇したことがあるという。

「私が勤めていた支店の忘年会でのことです。当時40代半ばだった課長が、直属の部下である主任の飲んでいたのがウーロン茶であることに気づき、『なんでウーロン茶なんか飲んでいるの?』と言ったんです。明らかに『お酒を飲んでいないことが気に入らない』といった感じでした」

 問題の課長は、この年の春にほかの支店から異動してきたばかり。でも、一部の社員に対しては当たりが強く、主任は「パワハラのターゲットにされている」と噂になっていた。

「主任は融資担当なので日報を提出しているのですが、課長は『書き方や言い回しがおかしい』とネチネチ文句を言っていました。ただし、ほかの人にはそういった細かすぎる指摘もないですし、主任の日報について前任の課長や支店長から問題視されたこともなかった。目に余る行動だと感じました」

「どうってことないだろ?」アルハラがエスカレート…

 なお、主任はこの数年前には原因不明の特発性の急性膵炎で半月ほど入院。もともとお酒に強いタイプではなく、職場の飲み会でも1~2杯程度しか飲んでいなかったが、これ以降は再発を恐れて断酒しているとか。


 主任は膵炎を理由にお酒を飲むことができないと断ったが、課長は「そのくらいどうってことないだろ?」と飲酒の強要をやめようとしなかったそうだ。

「さすがに耳を疑いました。私の父親も昔、膵炎で入院していたことがありますが、そこまで珍しい病気じゃない。仮に知らなかったとしても、持病や体調を理由にお酒が飲めないと話しているのに、それでも『飲め!』と言うなんて、特に今の時代はありえない。アルハラにしてもたちが悪すぎます!」

「本気でおっしゃってるんですか?」と言い放った結果…

 これはもう見て見ぬフリはできないと和田さんは、「課長、膵炎で入院されていた主任に酒を飲め!って本気でおっしゃってるんですか?」とあえて少しトゲを含んだ言い方でチクリ。

 一歩間違えば、今後は彼女が新たなパワハラのターゲットになってもおかしくないところだが、実はこのときすでに夫が翌春、転勤することが内定。2月末で退職する旨を伝えていた。だから、相手がパワハラやアルハラを平気で繰り返す人間でも、まったく恐れる必要のない“無敵の人”状態だったのだ。

「課長は『こういう場でお酒が飲めないのはかわいそうだと思ったから……』と苦しい言い訳をしていましたが、膵炎は三大激痛のひとつで再発の可能性が非常に高い病気です。ただ、それ以前に本人が断った時点で理由に関係なく『お酒を無理に勧めないのが常識だ』と話しました。そして、『それ以上続けるようだと支店長に報告せざるを得ません』とも言いました。私自身は課長から直接被害を受けていたわけじゃないですが、あの人が来てから職場の雰囲気が悪くなったし、その原因を作っていた課長にも思うところがあったので……」

別の行員が支店長に課長のパワハラを報告した結果…

 和田さんに面と向かって言われたことで課長もマズいと思ったのか、それ以上主任に絡むことはなかったが、あからさまに不服そうな表情をしていたという。

 ただ、話はこれで終わらない。
実は、この様子も含めて一部始終を目撃していた別の行員が、離れた席で飲んでいた支店長に報告したのだ。

 支店長はすぐに社長を呼び出し、そのまま一足先に帰宅。どんなやりとりがあったのかは知らないが、帰るように命じられたのは想像に難くない。

「会社としてこの件でちゃんとした処分が下されたわけではないですが、社長から厳しく注意されたと聞いています。主任からは『和田さんのおかげです。本当にありがとうございました』と何度も頭を下げられ、ほかの同僚からもお礼を言われました。本来、私自身はいくら気に入らないことがあっても我慢しちゃうタイプ。自分の退職が控えていたことも大きいですが、私も課長には相当イラッとしてしまったのでしょうね(笑)」

 職場内だけでなく飲食店でこのようなアルハラは、店の従業員や居合わせたほかの客にとってもいい迷惑。退職間近だったとはいえ、上司から逆恨みされるリスクを恐れずに注意した彼女には拍手を送りたい。

<TEXT/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

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