日系エアラインのCAから六本木のクラブママを経て作家となった蒼井凜花が、実体験や取材をもとに綴る連載コラム。今回は、近年急増している「メイク男子」に対する女性の本音をご紹介したい。

体育会系だった彼がヒゲ脱毛を機に“美容男子”へ豹変

「今日は65点かな」彼女のルックスに点数をつけた男の末路…ヒ...の画像はこちら >>
 取材に応じてくれたのは、美容系サロンに勤務する渡辺奈々さん(仮名・26歳)だ。奈々さんと交際2年になる彼は、アウトドアメーカー勤務の28歳。元実業団の水球選手で、日焼けした肌と鍛えられた体が魅力の体育会系男子だった。

「一緒にトレッキングやシュノーケリングをしたり、アクティブなデートが多かったですね。私は仕事柄、日焼けや紫外線にはかなり気を遣っていましたが、彼は美容に関しては無頓着。ヒゲ剃り後にローションを塗るくらいでした」

 転機は、知人の勧めで彼がヒゲ脱毛をしたことだった。ヒゲがなくなり、肌を褒められるようになった彼は、一気に美容に目覚める。シミ取りレーザー、美容鍼、小顔矯正、さらには男性用メイク用品まで手を出し始めた。

 ファンデーション、眉ペンシル、アイライン、ナチュラルカラーのリップ。出勤前、鏡の前でメイクをするのが日課になった彼を、奈々さんは最初こそ好意的に見ていたという。

 今や百貨店に男性用メイクコーナーがある時代。美意識を持つこと自体に否定的な感情はなかった。

美容アドバイスがエスカレートした結果…

 しかしある日を境に空気が一変した。

「『美容サロンに勤めてる割には、奈々の眉の描き方はイマイチだよね』って言われたんです。
冗談かと思いましたが、そこからが地獄でした」

 マスカラだけじゃなく、まつ毛パーマを勧められ、毛穴が目立つと指摘され、服装に合わせたリップグロスの色まで指定される。デートのたびに続く“美容ダメ出し”——。

「彼と会う前から『今日は何を言われるんだろう』って緊張するようになってしまって……それでも、少しでも気に入ってもらえたらと、メイクや服装を考えて家を出るんです。ある日、待ち合わせ場所で私を見るなり『今日は65点かな』って採点されました」

 自分なりに努力をして、今日こそは穏やかな時間を過ごせるかもしれないと願った、その瞬間に突きつけられた「65点」。怒りを隠せなかった奈々さんに、彼は慌ててこう言ったという。

「『ごめん、奈々はもっと可愛くなれると思って』って。でも、そう言われた時点で、私はもう“彼女”じゃなくて“評価対象”なんですよね」

美容に10万円、デートは施術三昧…

 その後も彼の美容熱は収まらなかった。美容クリニックで一緒に美容点滴を受け、ヘアサロンでは並んでヘッドスパをする。施術中、二人の会話はほとんどない。

 そのうえ、彼は眉のアートメイクに10万円を使い、あっさり金欠になった。あげくの果てには「この前のお詫び」と言って、海外ブランドのリップグロスをプレゼントしてきた。

「色は気に入りましたが、海外製は刺激が強くて唇が荒れてしまって……。彼には言えず、別メーカーの同じ色を自分で買い直しました」

「絶対に友達に会わせたくない」と思った理由

 女友達に相談すると、「ルックスに気を遣わない男よりいい」「美容情報を聞きたい」と羨ましがられることもある。しかし奈々さんは首を振る。


「絶対に会わせたくないです。どうせ裏で点数をつけるのが目に見えているので」

 結婚も意識していたが、毎回上から目線でダメ出しされ、顔色をうかがう恋愛に疲れてしまったという。最近は、彼とこの先も一緒にいるべきなのか、立ち止まって考えることも増えたそうだ。

メイク男子が陥りがちな勘違い

 一方、筆者が通う美容室の女性美容師(29歳)はこう語る。

「メイク男子自体は否定しません。でも、唇の血色や清潔感は気になりますね。唇がガサガサだと、不健康そうだし仕事ができなさそうに見える。無精ヒゲより、そこを見ます」

 メイクをするのが女性だけの時代は終わった。男性が美意識を持つこと自体は悪くない。しかしその結果、勘違いをしてしまう男性も現れる。「知った側」「上に立った側」になったつもりで、パートナーを評価し始めるのだ。

 女性が求めているのは、美容の先生でも審査員でもない。
一緒に笑って過ごせる対等な恋人だ。

 鏡を見る前に、相手の顔色を見てほしい。あなたのその一言は、愛情ではなく、採点になっていないだろうか。

文/蒼井凜花

【蒼井凜花】
元CAの作家。日系CA、オスカープロモーション所属のモデル、六本木のクラブママを経て、2010年に作家デビュー。TVやラジオ、YouTubeでも活動中。
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