俳優の米倉涼子さんが、麻薬取締法違反などの疑いで書類送検されたことが1月20日、FNNプライムオンラインで報じられた。関東信越厚生局麻薬取締部(マトリ)は、米倉さんが知人でアルゼンチン国籍の男性とともに違法薬物に関与している疑いが浮上したとして、2024年夏ごろに関係先を家宅捜索。
捜索では薬物のようなものが押収され、鑑定の結果、違法な薬物と判明したという。
報道によると、男性はすでに出国しており、マトリは薬物の所有者が誰なのかを慎重に捜査してきたとされる。米倉さんは2025年12月、自身の公式サイトで「自宅に捜査機関が入ったことは事実」とした上で、捜査に全面的に協力してきたこと、現時点で「一区切りついたと認識している」とコメントしている。今後、起訴するか不起訴とするかは、東京地検の判断に委ねられる。

こうした一連の経緯を踏まえ、書類送検とは何を意味するのか、自宅から薬物が押収された場合に誰の責任が問われるのか、同居・半同棲の関係にあった場合の法的評価などについて、弁護士に詳しく聞いた。

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「書類送検=軽い処分」ではない? 逮捕・起訴との決定的な違い

結論から言えば、書類送検は「身柄拘束をしない捜査手続き」にすぎず、有罪・無罪を決めるものではない。書類送検、逮捕、起訴という用語は混同されがちだが、アディーレ法律事務所の南澤毅吾弁護士によると、「逮捕とは、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合などに、身柄を拘束して捜査を行う手続きです。一方、書類送検とは、身柄を拘束することなく、捜査書類のみを検察に送ることを指します」と説明する。

つまり、犯罪の嫌疑があったとしても、必ず逮捕しなければならないわけではない。そして「起訴とは、検察官が裁判にかけると判断することを意味します。逮捕された事件・書類送検された事件、どちらも必ず起訴されるわけではなく、不起訴となるケースも多いです」とのこと。

南澤弁護士は「逮捕されているから必ず有罪になるわけではないですし、書類送検だから実刑にはならないともいえません」と強調する。

自宅から薬物が出たらアウト? 警察が最初に疑うポイント

薬物が自宅にあっただけで即アウトではないが、「知っていたかどうか」で結果は大きく変わる。自宅から違法薬物が発見された場合、どのような責任が問われるのだろうか。


「当たり前ですが、居住者が自分の意思で、薬物として認識・保管していたのであれば、麻薬の『所持』が成立し、麻薬取締法違反が成立します」と南澤弁護士は説明する。

問題は自分ではなく誰かが勝手に薬物を置いていたケースだ。

「法律上は、仮に薬物が他人のものであって、居住者がその存在を全く知らなかった場合には、罪に問われることはありませんが、たとえ薬物が他人のものであっても、居住者がその存在を知り、管理や使用を黙認していた場合には、法律上の『所持』とみなされます。例えば同居人が覚醒剤を自室の隣の部屋に置いていたことを被告人が知っていた場合、黙認していたとして間接占有が認定され、所持罪が成立します」

現実の捜査では「麻薬は他人のものだ」という弁解は珍しくない。「『他人に騙された』『他人の薬物だから知らない』というのは、いわば薬物犯罪においては、容疑者側の反論の常套句です。警察も文字通りに受け取ってはくれません。自宅から違法薬物が見つかった時点で、仮にそれが他人のものであっても、逮捕され、警察から厳しく取り調べを受ける可能性は高いです。真犯人との関わりが深ければ、所持を黙認していたとして、間接占有が成立し、有罪となるリスクもあります」

同居していただけでも疑われる? 「パートナーの薬物」が招くリスク

単に同居・半同棲していただけでは罪にならないが、薬物の存在を認識していれば「共同所持」と判断され得る。

「薬物の存在や場所を知っているけれども、相手を守りたくて警察に言えない、また、同居人から口止めされている、というケースもあるかもしれません。しかし、自分で麻薬を使用する意思がなかったとしても、薬物の存在や場所を知ってしまった時点で、薬物の間接占有が成立します。速やかに警察に通報しなければ、麻薬の所持を黙認・手助けしていたと評価されてもやむを得ず、麻薬取締法違反で逮捕される可能性は高いでしょう」

今回のケースについては「米倉氏が書類送検された原因として、仮に米倉氏のパートナーが薬物所持の主犯であっても、交際中かつ同居中という関係上、米倉氏自身が『薬物のことをまったく知らなかった』とするのは無理がある、と警察は判断したのでしょう」とのことだ。

「知らなかった」はどこまで通る? 薬物事件の分かれ目

薬物事件では、「知らなかった」という説明が通るかどうかが、有罪・無罪を分ける最大の分岐点になる。

「本人が薬物であることを知っていたかどうか、そしてそれを自己のものとして保持する意思があったかどうかが、有罪か無罪かを分ける決定的な要素になります。ここが証明できるかどうかは、起訴か不起訴か、有罪か無罪かの分水嶺といっても過言ではありません」

今回のケースでは、米倉涼子氏がパートナーの薬物使用をどれくらい認識していたのかどうか、また、薬物の保管方法・保管場所をどこまで知っていたのかポイントとなる。


起訴される人、されない人──検察が最後に見る“決定打”

最終的に問われるのは、検察が「有罪を立証できる証拠があるかどうか」だ。

「証拠が不十分であったり、本人の関与を直接示す事情が乏しかったりする場合には、不起訴という判断がなされます。今回のケースでは薬物そのものこそ発見されていますが、米倉涼子氏のパートナーが海外に逃亡してしまったことで、薬物使用・保管の実態に関する証拠が集めにくいという事情が、起訴へのハードルを高くしているでしょう」

本人の薬物への認識が乏しく、パートナーに騙されてしまったという実態であれば、不起訴という温情的判断になる可能性もあり得る一方、本人の関与度が高いという事実が明らかとなれば、起訴の可能性もある。今回のケースで、検察は「知らなかった」という説明をどこまで認めるのか。起訴か不起訴かの判断は、薬物事件における“責任の線引き”を示す一例となりそうだ。<取材・文/日刊SPA!取材班>

米倉涼子“違法薬物関与”疑惑で注目。パートナーの使用「知らなかった」では済まされない薬物事件の現実
アディーレ法律事務所 南澤毅吾 弁護士
「パチスロで学費を稼ぎ、弁護士になった男」という異色の経歴を持つ。司法修習時代は、精神医療センターにて、ギャンブルを含む依存症問題について研修を受けた経験があり、一般市民の悩みに寄り添った、庶民派の弁護士を志す。アディーレ法律事務所・北千住支店長として対応した法律相談数は、累計数千件に及び、多様な一般民事分野の処理経験を経て、現在は交通事故部門の責任者となる。
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