「セクシー女優を名乗ると、結構嫌な目に遭うことが多いんですよ」と口にすれば、「そんな仕事を選んだお前が悪い」という批判が飛んでくるのは、もちろん承知している。私は偏見などのリスクを覚悟したうえで女優業を始めたが、やはり気持ちがどんよりする出来事は引退後も山ほどあった。

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 むしろ、引退後の方がデメリットを感じる気がする。なぜなら現役時代は、業界人とそこに理解を持つ人々ばかりと接して、防御策を取れる環境にあった。

 外の世界に出ると、当たり前だけど色々な人間がいる。私の本格的なスタートはある意味ライターデビュー以降の人生で、現実を知ったのもいい歳になってから……といっても過言ではない。

元セクシー女優の元に届く“詐欺案件”

 まず初めにめちゃくちゃ嫌だったのが、ビジネス目的で近寄ってくる輩があまりに多いこと。俗に言う“やばいヤツ”が謎のサプリや投資とか、事務所・メーカーの設立やらを提案し「君の肩書を活かして一緒にやろう!」と言い出すのだ。

 事務所やメーカーなら元女優を活かせる部分はあるものの、裏方経験がない人間からすればハードルは高い。そしてサプリや投資は本当に意味がわからず、明らかに女優界隈や夜職の人間をカモにするのが狙いであろうグレーな話もいくつかあった。簡単に言うなら、ほぼ詐欺だ。

 元女優の肩書は注目されやすいので、民衆の目を引くために私たちのような存在を利用したい輩はこの世に多く存在する。うまくいくかは別の話だし、たまに「出資して」という「明らかに何かが起きればドロンする気満々」なパターンも多い。使うだけ使って後はポイ、そんな“見下し”が見え透ける相手に声を掛けられるのが、最初は苦痛だった。

表向きは笑顔、裏では悪口の「全肯定マン」

 セクシー女優の中には、超ピュアな人がいる。他人を疑うことを知らない子、ただの世間知らずなど、一口に“ピュア”と言ってもタイプは様々なのだが、私は前者と後者の要素をミックスしたアホだった。
よって、相手の心を正確に読み取るのが昔は苦手だったのである。

 以前、元女優だったことを知ったある女性に、この仕事をしていたことについて褒められることがあった。女性からは偏見の目を向けられる機会が多いため、私も警戒するものの、あまりに肯定してくるので「こんな人もいるのか」と勝手に感動してしまったのだ。

 しかし、褒め言葉など表向きのものにしか過ぎず、のちに裏で悪口三昧だったことが発覚。「やばいよね、どのツラ下げて生きてるのか」的なニュアンスの発言をしていたようで、めくれた時に大ショックを受けた。たぶん私に密告してきた人も、その時は一緒になって悪口に加担している可能性が高かったことから、私は軽く人間不信へと陥った。

 結局のところ、彼女たちも変なビジネスを持ちかけてくる輩と根本は同じ。うっすらと見下す気持ちを持つからこそ、褒めておけば図に乗ると判断するのだろう。この件で「全肯定マンほど警戒すべき」「元女優という肩書きはハンデになり得る」という当たり前の学びを得たのだった。

肩身が狭い思いをした経験も

稼いだカネの代償はあまりに大きい…元セクシー女優が明かす「引退後の“肩身の狭い現実”」
元セクシー女優で現在はフリーライターの「たかなし亜妖」
 明らかに歓迎されていない目線を向けられたら、人は絶対に萎縮する。そんな経験をしたのは、とある相手との打ち合わせでのこと。すっかりたかなし亜妖としてライター活動していた頃の話だ。

 やばい輩も全肯定マンも、その他諸々の問題児など、だいたいのことを乗り越えるとメンタルが鍛えられるもの。
おごらず冷静に対応する能力を身につけていた気にはなっていたが、打ち合わせに同席する研修の女性の視線がとても冷ややかである。氷のような目を向けられ、我がメンタルに亀裂が走った。

 担当者2人は私を呼んだ張本人だったので、腹の中で何を考えていようが目の前ではフレンドリーな姿勢を見せる。けれども新人女性はあまり納得のいかない表情を浮かべ、未確認生物を見るような目つきだ。きっとこの手の存在に触れたことがないから戸惑っているのかもしれないけど、彼女からは歓迎ムードをまったく感じない。

 立場が上の人間は担当者2人だからこそ、本来であれば気にする必要はないだろう。せこい発言をするなら「そこに好かれればオッケー」なのだが、気にしがちな性格の私にとって、ジトッとした視線はだいぶキツい。冷たい視線を感じ取ってからも無難に対応しつつ、話す時は怖くて目を見られずに研修女性の唇付近を見て勝手に肩身の狭い思いをした。

稼いだお金の代償は大きい

 このように、肩書のせいではっきりとしたリアクションを浴びせられることも珍しくはない。偏見の多い仕事をしている以上は、肩身の狭い経験も居心地の悪さもある程度は受け入れるのが使命なのだから、仕方がないと割り切るのがベストなのだ。

 ……とは言いつつも傷つくものは傷つくし、嫌なものは一向に慣れない。使命だと頭では理解しようとしているものの、たまに「元女優じゃなかったら、こういう経験をせずに済んだかな?」などを考える夜も私にはある。


 稼いだお金と貴重な景色を見たぶんの代償は、そこそこ大きい。“なんとなく”で始めた仕事のマイナス面を今になって回収する我が人生は、本当に波乱万丈。昨今の夜職ブームで気軽に飛び込む若者が増えているけれど、このような悪い部分にも目を向けてほしいと記事を書きながら常に願ってしまう自分がいつもいる。

文/たかなし亜妖

―[元セクシー女優のよもやま話]―

【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。
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