落ちぶれた会社に残り、定年までやり過ごす――。そんな人生設計は、もはや通用しないと専門家は断言する。
AI化と人余りが進むなか、真っ先に居場所を失うのは、会議ばかりの中間管理職だという。さらに“静かな退職”を選んだ結果、仕事だけでなく家族との関係まで壊れてしまうケースも少なくない。会社に残るも、転職に踏み出すも地獄が待つ50代は、いま何を選ぶべきなのか。

落ちぶれ企業にしがみついても生き残れない

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落ちぶれ企業にしがみついて、果たして定年まで逃げ切れるのか――。人事コンサルタントの平康慶浩氏は、「そんな甘い人生設計はもうないですよ」と語る。

「グローバル競争の観点で見れば、今の日本には成長産業がない。その衰退していくなかでもAI化で事務や人事、企画などのホワイトカラーも不要になる。特に社内で会議ばかりしている次長や担当課長の中間管理職が居場所を失う可能性は高いでしょうね」

その結果、「勝ち逃げできると思っていた50代以上が貧困層に転落する可能性もある」と平康氏は続ける。

「おそらく70歳まで雇わないといけない時代が10年以内に来ます。企業としては若い世代に投資するために、貢献しない中堅社員の配置転換が行われて、給料も大幅カットしていくのは当然のこと。インフレやリストラが進むなかで会社に依存して定年まで食っていけるかは疑問です」

家族関係に影響するケースも…

それに“静かな退職”が、のちの家族関係に影響するケースもよくあるという。

「いわゆる静かな退職をしている人は、仕事そっちのけで家族にリソースを使っている人が多いのですが、子どもが大人になってから愛想を尽かされるパターンが意外と多い。幼い頃はよく面倒を見てくれるパパでも、大人になって社会に出ると自分の親が“やる気のないダメ社員”であることに気づいてしまうんですね。そのときが本当の地獄です」

家族に見放されたくないと思うのなら、目指すべきは“社内のブルーカラー”だと提言する。


「AIが進化しても代替されないエッセンシャルワークの価値が高まるので、50代からでも新しいスキルを学ぶことが重要です。会社に残る選択をしたのなら、非エンジニア職でもプログラム言語を学ぶなど手に職をつけるための行動をしなくてはいけない。自分の積み重ねてきたベースと新しい知識を上司にアピールしながら、積極的に社内転職を目指していくのもありですね」

大企業出身の看板でも書類選考すら通らない

「定年まで安泰」は幻想だった…落ちぶれ企業に残る50代を待つ“過酷すぎる”現実
[落ちぶれ企業]で働く地獄
では、50代で転職市場に飛び出した場合はどうなのか。

「大企業出身でも200~300社にエントリーしても面接まで進めるのはやっと数件です」と話すのは、中高年のセカンドキャリアを支援する市原大和氏だ。

「求人には年齢不問と書いてありますが、実際にはシビアな年齢制限がある。40~60歳まで1年おきに市場価値は下がるので、50代の転職は給料が下がるのが当たり前。それに本当に優秀な人材は在職中に声がかかっていて、公開市場に出てこない。たいていのシニアは『50代でもすぐ決まるだろう』と楽観視していますが、現実を知って後悔する人は多い。ほとんどのシニアは、給与面だけで言ったら辞めずにしがみついたほうが得ですよ」

また、50代の転職先が一番決まりやすい年収300万~500万円の求人募集には、思わぬトラップも多いという。

「例えば、パワハラや給与の遅延、経費が自腹。ほかにも採用後に『試用期間は条件面が違うから』と給与も職種も変えられたりすることがある。決まってない焦りから藁にもすがる思いで飛び込んだ先がブラック企業で、心身が疲弊して退職する人も多いんです」

好条件の転職先を見つけるには?

好条件の転職先を見つけるコツは「社外ネットワークが重要」と市原氏は語る。

「特に大企業のサラリーマンは社内の付き合いが中心になっていることが多い。
50歳を超えたら『出世ゲーム』より社外のネットワークづくりに頭を切り替えるほうが、その先の転職に繫がる可能性もある。同窓会やオンラインコミュニティ、近所のバーなど、まずは新しい環境に飛び込むことから始めるのが大事です」

“静かな退職”には、相応の覚悟が必要だ。

【人事コンサルタント 平康慶浩氏】
セレクションアンドバリエーション代表。アクセンチュア、日本総合研究所などを経て、現職。グロービス経営大学院客員准教授
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人事コンサルタントの平康慶浩氏

【BEYOND AGE 市原大和氏】
東京海上日動火災保険で15年勤務したのち、’22年にBEYOND AGEを設立。3000人以上のシニアのセカンドキャリア支援に注力
「定年まで安泰」は幻想だった…落ちぶれ企業に残る50代を待つ“過酷すぎる”現実
BEYOND AGEの市原大和氏
※週刊SPA!1月27日号より

取材・文/週刊SPA!編集部

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