第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が近づいてきた。下馬評では日本、アメリカ、ドミニカ共和国の3強といわれているが、全20チームが優勝をかけて3月5日から約2週間にわたって覇権を争う。

 各チームの登録メンバーは30人まで。井端弘和監督率いる侍ジャパンの陣容も徐々に固まりつつある。

残る11枠は1月中に決着へ

 昨年12月に大谷翔平ら8人の代表入りが先行発表され、今月16日に新たに11人がメンバーに加わった。2月6日には、全チームの最終メンバーが公式に発表されるため、残る11人も今月末をメドに明らかになるだろう。
 現時点で侍ジャパンのメンバーに入っているメジャー組は、大谷のほか菊池雄星、松井裕樹、菅野智之の4人。このうち菅野はオリオールズからFAとなっており、去就は未定のままだ。一部報道では、古巣の巨人へ復帰する可能性も取り沙汰されているが、WBCの期間中に新天地が見つかる可能性もあるだろう。

 侍ジャパンの強みはやはり、メジャー組を中心とした層の厚い投手陣だ。特に大きいのが、今季でメジャー8年目となる菊池の存在だろう。日米通算121勝を誇る左腕は、これまでなぜかWBCとは縁がなかったが、過去7シーズンにわたって大きな故障もなくメジャーの強打者と対峙してきた経験値は何とも心強い。

勝敗を分けるのは「リリーフ左腕」?

 ただWBCではラウンドごとに球数制限が適用される。そのため先発投手がどれだけ好投していても、4~5回から継投策に入らざるを得ない場面も出てくるだろう。

 当然、そのあとを投げるリリーフ陣がカギを握ることになるが、松井に次ぐ左腕がもう2枚は欲しいところ。残り11枠の候補には、今永昇太や宮城大弥、曽谷龍平らサウスポーの名前も挙がっているが、いずれも本職は先発。
井端監督からサプライズ発表があるとすれば、リリーフ左腕になるのではないだろうか。

 一方の野手陣はどうか。二刀流・大谷以外は今のところ、NPB組で占められている。源田壮亮、牧秀悟、牧原大成、近藤健介、周東佑京は3年前の前回大会に続いての招集。他には阪神から佐藤輝明、森下翔太、坂本誠志郎の3人、さらに若月健矢が坂本と並ぶ正捕手候補としてWBCに初めて選出されている。

初WBC捕手陣にのしかかる重責

 野手陣に一抹の不安があるとすれば、その捕手と外野手ということになりそうだ。

“扇の要”と呼ばれる重要なポジションを任される坂本と若月の2人だが、先述したようにどちらもWBCには初めての参戦。第3の捕手として経験豊富な中村悠平が選ばれる可能性もあるが、おそらく坂本が正捕手の最有力候補ということになりそう。

 坂本は昨季、プロ10年目にして初めて正捕手の座をつかんだ苦労人だ。打撃面には不安を残すが、司令塔としてリードには定評がある。昨秋に行われた韓国との強化試合では、本番で適用されるピッチクロックとピッチコムも経験。短い投球間隔に苦しんだようだが、自ら“パワプロ風”の球種設定を発案するなど、対策に余念がなかった。

外野守備は連覇への最大の不安材料に

 むしろ捕手陣以上に不安を抱えているのが、外野陣かもしれない。

 今のところ、近藤、周東、森下の3人がメンバー入りしており、これに鈴木誠也と吉田正尚のメジャー組が加わるとみられる。
実績を考えれば、近藤、鈴木、吉田の先発が濃厚だが、そうなるとポジション問題が発生する。

 近藤と吉田は昨季、それぞれのチームで主に指名打者(DH)を務めており、守備範囲には大きな不安が付きまとう。しかも、そのDHにはチームの要を担う大谷がいるため、2人の打撃を生かすためにも守備に就くことが求められる。

 おそらく近藤と吉田の2人が両翼に入り、鈴木がセンターを務めることになるとみられるが、鈴木にとってもセンターは本職ではないポジション。広島時代は名手のイメージもあるが、メジャーでは“守備失格”の烙印を押されるほど。3人の打力と引き換えに、外野の守備は大きな不安を抱えることになるだろう。

 また、残る2人のうち森下は大学時代にセンターを守っていたが、プロでの出場は2023年の阪神での6試合だけ。守備範囲の広さなら周東に任せたいところだが、足のスペシャリストとして試合終盤の代走起用がメインとなるだけに悩ましい。

ヌートバー離脱で浮上した“センター不在問題”

 そこで思い出されるのが、3年前の前回大会で不動の1番を担った「たっちゃん」ことラーズ・ヌートバーの存在だ。3年前はスーパープレーを連発し、投手陣を救った。

 外野ならどこでもこなす器用さも持ち合わせており、チームのムードメーカーとして、リードオフマンとして大きな役割を果たしたのを記憶しているファンも多いだろう。

 昨季はカージナルスで自己最多の135試合に出場。
打撃成績こそやや落としたが、侍ジャパンに入れば間違いなくセンターの守備で貢献することになっていたはずだ。

 しかし、ヌートバーは昨季のレギュラーシーズン終了直後に両かかとを手術。WBCどころかレギュラーシーズンの開幕も間に合うかどうかといった状況に陥っている。果たして侍ジャパンはヌートバー不在の危機を打破できるのか。外野の守備も連覇に向けたカギの一つとなる。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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