国土交通省が運営するウェブサイト「住まリテ」によれば、賃貸契約時における初期費用は、家賃の5~7カ月分を目安に用意しておくことが推奨されている。新生活を控える人にとっては、少なくない出費だ。

 一方で、LIFFUL HOME’Sが発表した2025年の首都圏『敷金・礼金』動向によると、実は敷金0・礼金0の物件が増加傾向にある。しかし、賃料や物価は上昇しており、初期費用削減のニーズは高まっていると考えられる。

 物件契約や引っ越し時に発生する費用は一定程度軽減されつつも、金銭的にも心理的にも依然として負担が大きい。そのため、家具家電まで手が回らない人も少なくないだろう。実は、筆者も春から新社会人として上京する一人として、その壁に直面している。

 こうした背景の中で注目を集めつつあるのが、家具や家電のサブスクリプション(以下、“サブスク”)である。

 そこで今回は、家具・家電からレジャー用品、ベビー用品に至るまで幅広く製品を取り揃えるサービス「CLAS」を展開する、株式会社クラス代表取締役社長の久保裕丈氏に話を聞いた。家庭用耐久品のレンタルは、私たちの暮らしにどのような影響をもたらすのだろうか。

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理想の部屋作りに立ちはだかる費用の壁

——いきなり私事の話なんですけど、来春から一人暮らしを始めようと思っていて。物件だけでなく家具家電もこだわりたいと考えている一方で、当然使える費用にも限りがあるわけです。せっかくだから妥協はしたくないんですよね……。

久保裕丈:価格重視で家具や家電を購入すると、どこかで不便に感じる点が出てくることもありますよね。当然高性能なモデルは値が張ってしまう。
なにより初期費用の負担も同時に発生しますから、悩ましいところですよね。

 実は私も社会人になって数年経った時に引っ越しをしたんです。でも、初期費用がとんでもない額になりまして……。良い部屋に引っ越したものの、必要なものがなかなか揃わず苦労したことがあります。

——引っ越しあるあるですね。多機能で使い勝手の良い製品への憧れが捨てきれません。

久保裕丈:実際に購入すると1つのアイテムだけでも数万円、冷蔵庫や洗濯機など複数の家電を取り揃えようとすると数十万円掛かりますよね。ですが、「家具・家電のサブスク」を利用すれば、お財布事情が厳しい人にとっても数千円から生活に必要な耐久品を取り揃えることができるんです。

——たしかに。特に新生活を控える人にとって、レンタルをすることによって費用面でのハードルが下がることは魅力的ですね。

久保裕丈:最近では、サブスクを利用する人も年々増えており、「家具や家電を買わずに利用する」というライフスタイルが広がりつつあります。

——「レンタルするよりも購入した方が最終的にはお得なのでは?」とも思ってしまうのですが……。
実際のところ、どうなんでしょう。


久保裕丈:もちろん欲しい商品が最初から決まっているなら、買った方がお得なケースもあります。長期的な利用を考えている場合は、分割払いなどもありますし。ただ、引っ越しが多い人やコストを抑えることが最優先事項の人にとっては、初期費用を抑えられる点は大きなメリットかなと。

「2年」が分岐点? 継続期間で見極める賢い選択

家具家電は買わなくていい?初期費用を抑える“サブスク暮らし”の現実。「とりあえず安物」を買うのが“一番の無駄”
久保裕丈氏
——とはいえ、サブスクの月額料金が物価高によって高騰する可能性もありますよね?

久保裕丈:小売のように大幅な値上がりをすることはあまりないですね。小売店では30~40%ほど価格が高騰するケースもありますが、レンタル品は商品を長く使い回す仕組みですので、物価の影響が小さくなります。

——なるほど、それは嬉しいポイントですね。実は先日、近所の家電量販店に足を運び、冷蔵庫の価格を確認してみたんです。約150Lの小型モデルで、最安値は4万2千円ほどでした。

久保裕丈:新生活を控えるにあたって、それは大きな出費ですよね。一方、一人暮らし向けの冷蔵庫のレンタル費用は、安いもので月額999円からあり、138Lのもので月額1,800円です(※2025年12月時点)。

——ざっくり計算してみたんですが、138Lの冷蔵庫が23カ月間の継続利用で約4万1千円、24カ月間で約4万3千円になりますね。購入した方がお得か、それともレンタルした方がお得かは、2年使うかどうかが判断材料になりそうです。


久保裕丈:そうですね。ただ、「CLAS」では4カ月目以降の利用には割引が適用されるんですよ。そして気に入った商品はあとから購入も可能なんです。もちろん、レンタルで払った金額は差し引かれますから、借りている期間も無駄にはなりません。

必要な時だけ利用、動画配信のように身軽な暮らし

——では、費用面以外のメリットについて教えてください。

久保裕丈:暮らしに“自由さ”が生まれることです。例えば、気になる最新家電を数カ月ほど試した上で、購入するかどうかを決めることができます。ですので自身が購入した商品に縛られず、さまざまなアイテム商品を使うことができる点はメリットと言えるでしょう。

——必要な時に、必要なモノを使うことができる。例えば、私は動画配信サービスを契約する時は、視聴したい作品が複数出揃ってから課金しています。このように、自分で利用時期を決めることは、サブスクだからこそ実現できたことですよね。

返却時期を自分のタイミングで決めることができる点は魅力的です。しかし、レンタル品を使用する上で気になるのが衛生面です。
例えば、洗濯機のクリーニングはどのように行われているんですか?

久保裕丈:分解洗浄や高圧洗浄、薬品を用いた「リペア(修繕)・クリーニング」を行っています。さらに、クリーニングにおける作業工程を複数人で振り返ることで、限りなく新品に近い状態でお客さま様のもとにお届けできるよう徹底しているんです。

ライフステージに合わせて、住まいを自在に着せ替える

——それなら安心して利用できそうな気が。あと、どんな家電でもいつかは寿命がやってきます。レンタル期間中に動かなくなってしまったらと思うと、心配で眠れなくなりそうです。

久保裕丈:普段使いをする中で故障が発生した場合は、無償で交換対応を行っております。関東であれば最短4日、関西であれば最短1週間ほどでお届け可能ですので、“使えない期間”を最小限に抑えることができます。レンタル品を利用する際の「心理的ハードル」を下げることこそが、サービス利用を継続していただく上で重要だと考えています。その結果、家具や家電を「気軽に借りて使う」という選択肢も今後増えていくでしょう。

——最近では、子供向けのおもちゃやアパレル用品、日本酒など、業界を問わず多岐に渡ってサブスクサービスが展開されています。つまり、「商品を買う時代」から「商品提供というサービスそのものを買う時代」に移行しつつあると言えますね。

久保裕丈:その通りです。所有することにこだわらず、例えば単身赴任や同棲といったライフスタイルの変化に合わせて、柔軟に家具や家電を入れ替えていく。
そんな新しく自由な暮らしを提案していきたいと考えています。

資源高時代を生き抜く、モノを捨てない「循環」の価値

——ユーザー側の利便性の高さが伺えます。その背景には、商品を長く活用できるような仕組みを整えていることも大きいのでしょうか。

久保裕丈:商品を循環させることによって、お客さまにコスト面でのメリットや新しい暮らしを提供しながら、同時に無駄な廃棄を減らしています。

——環境にやさしいと言えますね。

久保裕丈:ただ、SDGsを追求するあまり、品質面でユーザーの利便性が損なわれてしまうケースもあります。その点は注意が必要です。

——たしかに。紙ストローが示すように、“利便性”と“SDGs”の両立は非常に難しいですよね。

久保裕丈:その通りです。ですから、業界全体としてユーザーフレンドリーの姿勢が求められていると言えますね。

——その上で、環境問題にも向き合うことが重要ですね。


久保裕丈:はい。例えば、最近では世界各地で資源競争が起きています。特に日本円の価値は弱くなっており、獲得競争に負けてしまう。その結果、最終価格の高騰につながってしまうのです。今ある家具や家電を捨てて買い換えるというこれまでの定番は、物価高の影響も相まって難しくなる。

 だからこそ、限りある資源を節約できる「循環」の仕組みがますます重要になると考えています。商品を必要な人のもとに届け、不要になったモノはメンテナンスして次の人に届ける。このような連続した流れは、環境問題の観点からも非常に理にかなっています。

——なるほど。そして、利用者はレンタル品を使うことで使い勝手の良さを享受しながら、無意識のうちに環境へ配慮した行動ができているということですね。

久保裕丈:品質面・コスト面・利便性において、購入時と同等もしくはそれ以上の満足度をお届けする。こうして、ユーザーの暮らしに自由を生みながら、環境問題にも貢献していく—そんな姿を目指しています。

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 北欧風の部屋を目指している私は、自然の温かみを感じられるナチュラルテイストのソファや、シンプルなデザインの洗濯機をレンタルしようかと、今まさに検討しているところ。

 初期費用の負担を軽減しながらも、自分らしい理想の部屋づくりを追求したい。そんな欲張りな思いが、気がつけば環境にやさしい選択へとつながっていく。暮らしにも環境にも無理のない、サブスクによって実現できる新しい生活のかたちなのかもしれない。

<取材・文/中川恭輔>

【参照】
国土交通省 住まリテウェブサイト 
LIFULL HOME’S 

【中川恭輔】
現役大学生兼ハガキ職人。ラジオ番組に年間で1000通以上ものメールを送る生粋のラジオ好き。高校生の頃から毎週欠かさず聴いているお気に入りの番組は、「星野源のオールナイトニッポン」。大学では趣味と学業をうまく両立させながら、無事すべての単位を取り終えることに成功。春からは就職のため上京予定である。現在は卒業を待ちながら、企画や執筆のお仕事に挑戦中。
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