現在、6つの裁判所で争われている同性婚訴訟は、札幌高裁などが「違憲」または「違憲状態」という判断を示し、流れが固まりつつあった。しかし’25年11月、東京高裁の合憲判決で事態は五分五分に。
今後は最高裁の出す「統一見解」に注目が集まっている。
“白ブリーフ判事”こと元裁判官の岡口基一氏は、「東京高裁・同性婚訴訟「合憲」判決」について独自の見解を述べる(以下、岡口氏の寄稿)。

婚姻は“生殖”のため?東京高裁「同性婚を認めないのは合憲」判...の画像はこちら >>

「婚姻は生殖のため」ゆえ合憲。逆転東京高裁判決の時代錯誤

 現在、「同性婚訴訟」が起こされているのは全国で6件。そのうち、5件の高裁レベルではすでに、同性婚を認めないのは「違憲」もしくは「違憲状態」という判断が示されている。そのため、「結婚の自由をすべての人に!」とのスローガンを掲げて闘ってきた同性愛者にとっては、ようやくその固く閉ざされた未来が開かれる可能性があったのだ。

 ところが、昨年11月に出された東京第2次訴訟の高裁判決は、期待に胸を膨らませ傍聴席を埋め尽くす支持者らに冷や水を浴びせる結果だった。

 結論から書くと、同性婚を認めないのは「合憲」──。

 しかも、これまで地裁や高裁が少しずつ積み重ねてきたロジックをすべて“ちゃぶ台返し”するような、杜撰な判決内容だったのだ。

「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立する」

 憲法24条1項に書かれているこの「両性の合意」という記述について、東京高裁は男女のペアリングのみを想定していると判断。その実質的な理由として「婚姻は生殖のためにある」と令和とは思えない復古主義的な見解を堂々と開陳し、憲法前文にある「われらとわれらの子孫のために」という一文をその根拠と言い切ったのだ。

 これでは、国民は国家の維持存続のために「生殖を強要される機械」扱いされているに等しい。
「われらとわれらの子孫のために」のくだりは、こんなバカげた趣旨で憲法前文に書かれているはずがない。

 不妊症患者や高齢者による婚姻を例に挙げるまでもなく、婚姻が子供をつくるためだけにするものではないことくらい誰にでもわかる。

 さらに、この判決にはご丁寧に、「性自認が身体的性別と一致しない者は、特例法による法律上の性別の変更を経て法律婚を選択することができる」から、同性婚制度がなくてもいいという趣旨の説示まである。ゲイ・レズビアンとトランスジェンダーの違いさえよくわかっていないのだろう。

すべての同性婚訴訟は最高裁で審理される

 この時代錯誤の判決を書いた裁判長は、法務省帰りの東亜由美裁判官である。これまで法務省で訟務課長などを歴任してきたそうだ。

 東京第2次訴訟は当初、増田稔裁判長が担当していたが、知財事件の経験がまったくないにもかかわらず知財高裁所長に“ご栄転”となったため、新たに就任した東裁判長が、最後の期日の審理にだけ関与し、この判決をパパッと書いたものである。

 これで、すべての同性婚訴訟は最高裁に係属した。支持者の中ではすでに楽観論は消え失せている。

 一方、高裁では5勝1敗だが、一つでも合憲判決が出たことで、最高裁としては合憲の判断がしやすくなった。しかも、現在の最高裁長官は、トランスジェンダー当事者のトイレ利用に係る最高裁判決で当事者に不利な意見を書いた裁判官でもある。

 しかも、そもそも最高裁には無難に逃げおおせる判決の書き方がいくつもある。


「同性婚を認めないのは不平等」といったリップサービスだけして、「同性婚実現には準備の時間が必要なので、現時点ですぐさま憲法違反とは言えない」といった逃げ方だ。

 問題を先送りにし、お茶を濁す可能性も大いにある。

<文/岡口基一>

【岡口基一】
おかぐち・きいち◎元裁判官 1966年生まれ、東大法学部卒。1991年に司法試験合格。大阪・東京・仙台高裁などで判事を務める。旧Twitterを通じて実名で情報発信を続けていたが、「これからも、エ ロ エ ロ ツイートがんばるね」といった発言や上半身裸に白ブリーフ一丁の自身の画像を投稿し物議を醸す。その後、あるツイートを巡って弾劾裁判にかけられ、制度開始以来8人目の罷免となった。著書『要件事実マニュアル』は法曹界のロングセラー
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