大御所芸能人のトラブルをきっかけに、「性接待」は社会問題として注目を集めてきた。しかし、その実態は芸能界に限らず、身近なビジネスの現場にも根深く残っている。
取引先との会食や仕事の延長とされる酒席で、立場の弱い側が性を求められたり、暗黙の了解として接待要員に組み込まれるケースは、コンプライアンスが厳格化した今も後を絶たない。
さらに2023年の刑法改正により、こうした場面が一転して刑事トラブルに発展するリスクも高まっている。若手女性の告発と弁護士の証言から、令和の性接待の実態に迫る。

不同意性交等罪が適用される男女のトラブルが続出

「嫁と別居中で癒やしがない」取引先の社長に“性接待”を求めら...の画像はこちら >>
’23年の刑法改正で「同意のない性行為」が処罰対象として明確化されて以降、不同意性交等罪が適用される男女のトラブルが続出している。「同意があったと思った」という加害者の供述が日々報じられ、過去の不同意性交疑惑を暴露される芸能人も散見されるのはご存じのとおりだ。

そんな性加害に対する認識の変化を受けて、大物芸能人の騒動を筆頭にした「性接待」問題もクローズアップされたが、一般企業でもいまだに横行している。お金や仕事という見返りを求めて自らの性を売る、ないしは力のある立場の人間が性を“上納”させる――。

性接待は見返りが発生するがゆえに、同意を得られやすく、問題として表面化しにくい。スタートアップ企業の広報として働く井田あかりさん(仮名・24歳)はそんな性接待被害に昨年遭った。

「取引先から、『うちのA社長と一緒に食事するから来ないか。あなたの会社との未来の話をしたい』と言われたのが最初でした。正直、不安もあったので、上司に相談したんですが、上司が『Aさんとは今、大きなプロジェクトの話もしていて、ぜひ繫がっててほしい。経費を使ってもいいから食事をしてきなさい』と言われて、参加したんです」

お酒も進んだ2次会で空気は一変

最初は他愛のない話をして盛り上がった、お酒も進んだ2次会で空気は一変した。

「A社長は『俺は男性アイドルと仲がいいから、今度の全国ツアーに2人で行こう』と徐々に口説きモードになっていったんです。
私も愛想笑いを続けていたのが悪かったのかもしれませんが、同席者がトイレに行って2人になった途端『嫁と別居中で癒やしがない』とアピールされ、引っ越しを検討していることを話すと『俺が家賃出すから、近くに住みなよ』と愛人契約の提案までされる始末でした」

取引先の社長で酒の席、上司からの『今、大きなプロジェクトを動かしていて……』の言葉が頭をよぎり、あかりさんは必死に耐えた。

「A社長は業界では顔が利く人で、メディア関係者の知り合いも多いんです。だから、むげにはできなかったんですが、3次会のカラオケで吐息が耳にかかるほど身を寄せてきたときに、もう限界と思い、会社の先輩に連絡して助けてもらいました。もしも、あのまま飲まされ続けてたらどうなったのか……」

性を要求される仕事の悪習は今なお蔓延

「嫁と別居中で癒やしがない」取引先の社長に“性接待”を求められた24歳女性の告白。芸能界だけの問題ではない
取引先の社長から愛人契約を迫られた井田さん。上司に報告しても黙殺された
後日、上司に相談しても「A社長はそんな人」と黙殺。彼女を意識的に接待要員として送り込んだのは明らかだ。

このような性を要求される仕事の悪習は今なお蔓延している。フリーの企業広報として働く40代女性が話す。

「取引先との打ち合わせには短めのスカートをはいてくるように要求する会社や、接待相手の隣に女性社員を座らせてお酌をさせる企業はまだあります。一方で、コンプライアンスを遵守する企業では、女性社員を接待要員として使わない代わりに、ギャラ飲み女子を呼んで取引先と宴会をやっています。そこで男女のトラブルが発生して、水面下で示談したなんて情報まで、PR仲間のLINEグループに流れてきます」

性交渉後の“支払いでも不同意性交の可能性が

性加害問題に詳しい加藤博太郎弁護士は「’20年にセクハラ防止対策が強化された影響で、お金で同意が得られやすいギャラ飲み女子やパパ活女子を接待要員として活用する経営者が増えた」と話す。それが、’23年の刑法改正で処罰範囲が拡大されたことにより、性接待をめぐるトラブル増加に繫がったと見ている。

「とにかく経営者の不同意性交に関する相談が非常に増えています。その多くに性接待が絡んでいる。ギャラ飲み女子を呼んで盛り上がり、その女子が自ら膝に乗ってきたタイミングで胸に手が当たってしまっただけで、不同意わいせつ容疑で訴えられた経営者もいました。
これだけで、6月以上10年以下の拘禁刑が科される可能性があります。

一方、お金を払う、ないしは仕事を提供することで同意を得て、性交渉に発展したら不同意性交だと訴えられるケースも。簡単に言ってしまうと、性交渉後にお金を渡した場合は、同意を得る前の性交渉だったと見なされやすいんです。だから、交渉のやり取りをLINEで残し、対価はPayPayで事前に渡すことで、『完全に同意を得ていたことを証明できるようにしている』と話す経営者がいました……」

なお、法的には18歳以上なら個人間の売春・買春自体には刑罰がないため、パパ活同様、性交渉を伴う接待そのものについては処罰の対象とはならない。だからこそ、問題が表面化しにくいともいえる。

加藤博太郎弁護士が目の当たりにした令和の性接待トラブル事例

「嫁と別居中で癒やしがない」取引先の社長に“性接待”を求められた24歳女性の告白。芸能界だけの問題ではない
当事者が告発[性接待]の実態
胸に手が当たり「不同意わいせつ」

接待の場に呼んだギャラ飲み女子が、自ら男性の膝の上に乗ってきたときに男性の手が胸に当たり、その“行為”が不同意わいせつ罪に当たると訴えられることに。

口頭合意後のお持ち帰りでも「不同意性交」

ギャラ飲み女子と交渉のうえ「同意」を得て性交渉し、事後にお金を払っても、「性交渉時に同意はなかった」「口止め料かと思った」と訴えられる可能性が。

接待で社員がセクハラ被害→安全配慮義務違反に

接待の場に連れて行った女性社員が、接待相手にセクハラされた場合、自らの上司と所属会社を安全配慮義務違反に当たると損害賠償請求訴訟を起こる例も。

【弁護士 加藤博太郎氏】
大手監査法人勤務弁護士などを経て加藤・轟木法律事務所設立。詐欺事件や性加害問題に強み。著書に『セックスコンプライアンス』
「嫁と別居中で癒やしがない」取引先の社長に“性接待”を求められた24歳女性の告白。芸能界だけの問題ではない
弁護士の加藤博太郎氏
※週刊SPA!2月3日号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[当事者が告発[性接待]の実態]―
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