近年、大御所芸能人のトラブルをきっかけに、「性接待」は大きな社会問題としてクローズアップされてきた。だが、その蛮行は芸能界やビジネスの場にとどまらない。
時には、相手を貶めるため、あるいは機密情報を引き出すための手段として使われる――それがハニートラップだ。
甘い誘いの裏で仕組まれるのは、スキャンダルの捏造や弱みの掌握、そして情報漏洩という深刻なリスク。俳優・川崎麻世氏の証言と、元公安捜査官の警鐘から、性と情報が結びつく危うい現実に迫る。

メディアが仕掛けるハニートラップ

川﨑麻世がメディアの仕掛けるハニートラップを激白「最初からそ...の画像はこちら >>
性接待を仕掛ける側の目的はカネや仕事ばかりではない。時には機密情報を入手する、ないしは相手をハメて貶める手段として用いられる。いわゆるハニートラップだ。元妻との泥沼離婚裁判を経て、’24年に料理研究家・花音氏と再婚した川﨑麻世氏が話す。

「最も記憶に残っているのは、20年以上前に元妻の留守中に舞台女優を自宅に連れ込んだと報じられたこと。その日は、舞台の共演者など30人ぐらい呼んで自宅でBBQをやったのですが、一人の舞台女優さんがソファで寝てしまい、その様子を誰かが撮影したんです。そんな写真が流出して不倫だと報じられたので、その媒体と執筆者に損害賠償請求訴訟を起こして勝訴しました。古い話なので詳細は明かしませんが、不倫じゃないのを承知で“不倫ネタ”として売った人物が背後にいたんです」

川﨑氏は過去に不倫疑惑を報じられて以降、その甘いマスクもあって遊び人キャラと目されてきた。「そのキャラを演じようと思った時期もある」と言うが、実際には元妻との不和が報じられて以降、記事になったスキャンダルのほとんどがでたらめだったとか。

「10年ほど前に、ある女性誌で一回り以上年下の女性を、僕が妊娠させて“ポイ捨て”したと報じられましたが、まったくのウソです。
その女性は10年ぶりぐらいに『相談したいことがある』と連絡をくれたホステスさんで、友人や当時の付き人も交えた場でしか会ったことがないんです。

彼女が泥酔して介抱したことはありますが、当然、手も出していない。なのに、ある日、年配の記者が『〇〇さんと産婦人科に行っただろ?』と汚い言葉で直撃取材してきた。本当に何のことかわからなかった僕は記者に『?』状態だったのですが、最初からその女性が記者と繫がっていたとしか思えない……」

もうハニトラには引っ掛からない!

ハニトラを仕掛けてくる女性にはパターンがあるという。

「しばらく会っていないのに『久しぶり! 相談したいことがあるの』と連絡してくる女性は警戒します。会ってみると、お店の前に明らかにハリコミ記者のものと思われるクルマが止まっていることも多いので……。また、共通の知人はいるけど面識がない女性からのDMも危険。私はそんなDMには返信しません」

相次ぐハニトラで女性不信になった時期もあるとか。

「今の妻とは10年以上前に知り合ったのですが、6年ほどハニトラを疑って2人で会うのは避けていた。元妻との離婚裁判のときに熱心に資料を読み込んだりしてくれて、ようやく『花音はハニトラじゃなかったか』と気づいた(笑)」

今後はハニトラに引っかからないことを祈りたい……。

毎年2~3件はハニトラ事案に関する相談を受けている

川﨑麻世がメディアの仕掛けるハニートラップを激白「最初からその女性が記者と繫がっていたとしか思えない」
元警視庁公安部外事課の勝丸円覚氏
性接待は時に呼び名を変えて“接待される側”を罠にハメる。弱みを握られ、情報を抜かれ、スパイの共犯関係に……。これはスパイが暗躍する映画のなかの話ではない。元警視庁公安部外事課の勝丸円覚氏が話す。


「公安捜査官はハニートラップに関する研修も受けていて、国内外の事例や異性による接近工作、最新の手口までを頭に入れて現場でも対応していました。その経験を生かして私は現在、企業のセキュリティコンサルタントとして活動していますが、毎年2~3件はハニトラ事案に関する相談を受けています。

’04年に在上海日本領事館の事務官がハニトラを仕掛けられて諜報協力を強要され、『国を売ることはできない』という遺書を残して自殺した事件などは大きく報道されましたが、これは公人だったから表沙汰になったもの。実は、中国に駐在する商社マンなどを中心に、多くの人が引っかかっている」

ハニトラの手口には決まったパターンがある

そのハニトラの手口には決まったパターンがあるという。

「狙った相手との接触機会を増やしてザイオンス効果(単純接触効果)で親近感を高める。相手の行動をリサーチして、道端での偶然の再会を演出するなどもパターンです。そうして距離を縮めたら仕事やプライベートの話をしながら、自分の弱みや悩みをさらけ出す。自己開示のテクニックと言って、自己開示された相手は『自分も何か話さなければ』という気持ちになっていくんです。

そのうえで、スパイは徐々に求める情報をレベルアップさせていく。最初は『あなたの会社に興味がある。社内報が見たい』と切り出すなど、誰でも持ち出せる情報を求めることで、情報を渡すことへの抵抗感をなくしていく。お礼に数千円の商品券を渡したりして。それが社外秘に類する情報になってくると、数十万円という報酬を渡して共犯関係に仕立てる。
早い段階で肉体関係を結んでしまえば、後戻りできない」

興味深いのは、総じてハニトラ要員の女性は、目を引くような美人ではないことだ。

「美人は男の警戒心を高めるので、“手が届きそう”な愛嬌のある女性が多い。実際、私も公安時代に中国大使館で行われたレセプションに参加した際、チャイナドレス姿のかわいらしい女性に狙われました。その日のことを上司に報告したら、『10日以内に女性から食事に誘われるから気をつけろ』と言われて、そのとおり10日後に誘いの連絡が来ました。

物は試しと誘いに乗ったら、女性がバイトしているという中華料理店に連れていかれ、ものすごいペースで彼女は飲み続けた。帰り際には足元がおぼつかなくなって、耳元で『ホテルで少し休みたい』と言ってきましたが、当然、タクシーに押し込んで帰ってもらいました(笑)」

官僚に接近する中国人留学生による“友達作戦”

川﨑麻世がメディアの仕掛けるハニートラップを激白「最初からその女性が記者と繫がっていたとしか思えない」
当事者が告発[性接待]の実態
一方で、軍事機密に触れる自衛官は意外にもハニトラ対策が甘いという。40代の現役自衛官が話す。

「多くの自衛官は5年に一度の適性検査を受けるのみ。どんな外国人にどこで会ったか、交友関係に“露華鮮”(ロシア・中国・北朝鮮)の人間はいるかなどを検査し、該当する人は重要情報を扱えないようにする。非同盟国の外国人との交友が多い人は、まずレーダーを扱う通信系や管制系の職につくことはありません。ただ、防諜対策の特別な講習がないので、危機意識のある自衛官は少ない。

’00年に防衛省が東京・市ヶ谷に移転して以降、不思議なほど周囲に中華料理店や韓国パブなどができましたが、自衛官が飲むのはそうした店ばかり。自衛官は収入が少ないのに食欲旺盛なので、安上がりの中華料理店は宴会に欠かせないんです(笑)。
当然、キャバクラなどに行くお金もないので、フィリピンパブや韓国クラブで発散する自衛官も多い。防諜対策を徹底するには、自衛官の報酬引き上げが必須です!」

「情報漏れは完全には防げない」

とはいえ、いくら対策を講じても「情報漏れは完全には防げない」とも話す。

「近年では中国の“友達作戦”とも言える諜報活動がすごいんです。防衛省を中心に官公庁は外国人の庁舎への立ち入りは厳しくチェックしますが、学生はほぼフリーパス。だから、日本に留学している中国人学生がゼミでの研究のためと言えば、防衛省の幹部にも会えてしまう。

もちろん、機密情報を漏らすことはありませんが、そのときの会話はデータ化され、中国側が蓄積していると見られます。学生との会話内容から親中派の防衛官僚を抽出し、対中融和ムードを醸成するのに利用しているようです」

ハニトラリスクは今そこにある安全保障の危機なのだ!

自衛官らがハメられたハニトラ・スパイ事件簿

川﨑麻世がメディアの仕掛けるハニートラップを激白「最初からその女性が記者と繫がっていたとしか思えない」
当事者が告発[性接待]の実態
1988年 夢見波事件

北朝鮮でスパイに仕立て上げられたとする女性が、防衛大学生に対する工作を目的に神奈川県横須賀市にスナック「夢見波」を開店。契約時に偽名を使っていたことで逮捕され、ハニトラ工作が発覚。

’00年 ボガチョンコフ事件

ロシア通の海自3佐がロシアの駐在武官ボガチョンコフ大佐に通信関係の秘密文書や組織図などの資料を漏らしていたことが発覚し、逮捕された。

’04年 在上海総領事館員自殺事件

現地でつくった愛人の存在をネタに中国・国家安全部にスパイ協力を要請され、領事館員は「国は売れない」という内容の遺書を残して自殺した。

’06年 1等海曹・内部情報を中国に持ち出し

1等海曹が持ち出し禁止の内部情報を無断で持ち出し、許可なく中国への渡航を繰り返していたことが発覚。1等海曹は上記の自殺した上海総領事館員が訪れたカラオケ店に出入りしていたことが明らかに。

’07年 イージス艦情報漏洩事件

イージス艦「きりしま」に所属していた2等海曹が特別防衛秘密に当たる情報を、中国籍の妻に渡していたことが発覚。
3等海佐の関与も発覚し、逮捕

【俳優 川崎麻世氏】
ジャニー喜多川氏にスカウトされ1977年にデビュー。元妻カイヤ氏との離婚訴訟を経て、’24年に料理研究家の花音氏と再婚

【元公安捜査官 勝丸円覚氏】
1990年代に警視庁入庁。公安・外事畑を歩み、海外の日本大使館勤務も経験。『警視庁公安部外事課』など著書多数

※週刊SPA!2月3日号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[当事者が告発[性接待]の実態]―
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