「金の価格が史上最高値更新!」最近、そんなニュースを目にしない日はありません。だが本当に起きているのは、「金が高くなった」ことなのでしょうか。
それとも、私たちが使っている“お金の価値”が下がっただけなのでしょうか。
東京23区の中古ワンルームマンションを中心に不動産投資を行い、37戸を所有する個人投資家・村野博基氏は、この報道に対して「見ている軸がそもそも違う」と指摘します。新刊『戦わずして勝つ 不動産投資30の鉄則』(扶桑社刊)を上梓した村野氏が語る、“値段”と“価値”を取り違えないための視点とは。

「金が史上最高値」は本当か?10億円投資家が指摘する“見落と...の画像はこちら >>

金の価格はどう決まる?

近頃、金の値段は1グラム3万円台と史上最高値で更新しています。巷の貴金属屋さんで「現在の最高値圏内で売りましょう」という看板が置かれているのをみて、みなさんも「どこかに純金のアクセサリーがないかな?」と押入の奥を探してみたり、「金歯を入れておいて良かった」と思っていたりはしないでしょうか。

もしすると「投資家は儲かっていいな……」「自分も金投資を始めようかな」と思うかも知れません。ただ、そんな浮かれた報道に対して、私はこう言いたいのです。「それでも、地球は回っている!」と。

そもそも、金は相対的に金額が決まっていることを忘れてはいけません。

金がどのような成り立ちかを考えると分かりやすいでしょう。そもそも、これまで人類が地球上で採掘した金の量はおよそ20万トン。オリンピックの公式競技用プール約4杯分と言われています。現在の産出ペースは年間3000トンで、あと15~20年程度で地下に眠っている採掘可能な金を採掘しつくしてしまうと言われています。


限りがあるからこそ金には希少性があり、その「価値」は不変。なので安全資産であると言われてきました。

しかし、金の価値は一定であるとすると、金の値段が上がった時にそもそも下がっているのは何でしょうか。

貨幣価値が下がれば金価格は上がる

答えは「貨幣価値」です。金に対して日本円も米ドルも「価値」が下がっているからこそ、金の「価格」自体が上がっているのです。

日経平均株価も5万円台に上がっていますが、日本円は150円台の円安になっています。そもそも円の価値が低くなっているからこそ、日経平均株価が高くなっているように見えているだけかもしれません。円安で株価が上がるのは、もちろん輸出企業が多いという説もあります。ですが、もっと単純に「貨幣価値が下がっているから、株価が上がっているように見える」という見方もできるのです。

ただ、実際は複合要素が多いため、唯一の理由を特定するのは不可能に近いと考えています。時折、株価と為替や金などの関係性を細かく解説される方もいらっしゃいますが、本当にそれが正しく解明できているのであれば、きっとその方はお金には困らない人生が送れることでしょう。

この「貨幣の価値が下がっている」状況下であれば、モノの「価値」が一定とすると価格が上がるの当然です。アメリカもインフレに苦しんでおり、一般的なランチの定食に20ドル(現在のレートで3000円ほど)かかることも珍しくありません。
州にもよりますが、最低賃金の2時間分ぐらいと考えると、日本での肌感覚では1食に2000円ぐらいかかる印象でしょう。米ドルも日本円と比べたらドル高ですが、そもそも、米ドルの価値自体も下がっているのです。

ニュースが「価格」だけを切り取って伝える以上、こうした誤解が広がるのは、ある意味で当然なのかもしれません。

それでも、地球は回っている!

かつて、17世紀初頭に望遠鏡を用いて天体観測を行い、それまで「地球を中心に宇宙が回っている」という天動説を否定し、太陽を中心にして地球が回っている「地動説」を唱えたガリレオ・ガリレイ。宗教裁判にかけられ有罪判決が出ても「それでも、地球は回っている」という言葉を残したそうです。

現代でも、天動説のように自分がいる位置を中心に考えると「金の値段が上がっている!」と思うかもしれません、しかし、実際にはみなさんが使用している貨幣の価値が下がっているだけなのです。つまり「金の価格が史上最高!」ではなく、正しい表現として「貨幣価値が史上最低!」と報道して欲しいと私は思います。そのほうが実態を表しているのではないでしょうか?

インフレ時代に不動産の価値は?

貨幣価値が下がり続けるのは資本主義の宿命とも言えます。そもそも対前年でプラスを追い求めれば、それだけ通貨の流通量は増えて行かざるを得ません。そして通貨の流通量が増えれば、必然的に価値は下がるものでしょう。その一方で、供給量が限られており価値の変化しづらい不動産や、金などの「価格」は上がることが多いのが実情です。

不動産投資を行っている私にはよく「このインフレ時代に不動産は上がりますか?」と聞かれます。この質問を受けるたびに、「値段」と「価値」を混同している人が、想像以上に多いのだと感じます。
当然、この問いに対する解答は「不動産の価格は上がります」です。「このインフレ時代に」という枕詞のなかで、貨幣価値が下がる前提で聞かれる質問ですから「そりゃ上がるよね」と答えるしかありません。

「天が動いているのではなく地が動いている」そんな見方でモノの価値と価格について改めて考えてみると、物事の見方が変わって面白いものです。<構成/まてい社>

【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『戦わずして勝つ 不動産投資30の鉄則』(扶桑社)、『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)
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