タレントのデヴィ・スカルノ氏(85)が、元マネージャーの女性に暴行を加え、ケガを負わせたとして傷害の疑いで書類送検された。事件が起きたのは昨年10月。
東京都内の動物病院で、処置をめぐる口論の末、殴る・蹴るなどの暴行に及んだとされている。報道によれば、当時は飲酒していた可能性もあるという。
デヴィ氏は昨年4月にも、飲食店でスタッフにシャンパングラスを投げつけたとして暴行容疑で書類送検されており、今回が初めてのトラブルではない。だが、世間の受け止めは割れている。「85歳の女性の暴力で、そこまで重い罪になるのか」「あの”女王様キャラ”ゆえに誤解されているのではないか」といった声も少なくない。

一方で、暴行の結果として相手が負傷していれば、適用されるのは暴行罪ではなく、より重い傷害罪だ。年齢や体格、腕力の差、本人に”本気で傷つける意思”があったかどうかは、刑事責任の判断にどこまで影響するのか。また、長年テレビで築かれてきた強烈なパブリックイメージは、裁判や処分の場で情状として考慮されることはあるのだろうか。

85歳という年齢、女性であること、そして「横柄な女王様キャラ」という世間的評価。これらは刑事責任の軽重にどこまで関係するのか。デヴィ夫人の書類送検を、単なる芸能スキャンダルではなく、刑事法の観点から弁護士に読み解いてもらった。

デヴィ夫人、マネージャーへの傷害事件で問われる“常習性”と刑...の画像はこちら >>

高齢は本当に“免罪符”になるのか――85歳でも刑事責任は問われる

デヴィ氏が85歳という高齢であることは、刑事責任にどのような影響を与えるのだろうか。アディーレ法律事務所の南澤毅吾弁護士は次のように指摘する。


「一般論として、年齢が高いこと自体は、暴行罪・傷害罪の成立を左右する事情にはなりません。ただし、認知機能・判断力の低下に関しては、認知症の方であれば、自分の行動をコントロールできていない状態ということで、刑事責任がないという扱いもあり得ます」

しかし、今回のデヴィ氏のケースでは状況が異なるという。

「今回のケースに関しては、飼い犬の死亡に際して暴行に至ったということで、動機が明確で合理的です。したがって、自分をコントロールできていなかったという言い訳は難しいのではないでしょうか」

つまり、高齢であることそのものが免罪符になるわけではなく、むしろ明確な動機をもって行動している点から、責任能力は十分にあると判断される可能性が高いということだ。

「85歳女性の腕力」は考慮される?量刑で見られるのは“力”ではなく“結果”

世間では「85歳の女性に、どれほどの腕力があるのか」という声もある。この点について、南澤弁護士はこう説明する。

「傷害罪としてどれくらいの量刑になるかに関しては、被害の程度が重要です。85歳女性が素手で暴行を加えたところで、被害者側も大した怪我をしないことが多いでしょうから、その意味では、被害が小さく罪が軽いという判断に働きやすい要素です」

しかし、南澤弁護士は同時に次の点も指摘する。

「一方で、デヴィ夫人は2025年4月にも、女性スタッフにグラスを投げつけた容疑で書類送検されています。高齢であっても、道具を使って暴行してしまった場合、被害者が重い傷害になってしまう可能性もあるでしょう。高齢であるから腕力が低いというよりも、実際に起きた傷害の程度が量刑上は重視されているように感じます」

つまり、「女性だから」「高齢だから」という点よりも、実際に相手がどれだけの被害を受けたかという「結果」が重視されるのである。

元マネージャーへの暴行は“私的トラブル”で済むのか

被害者がスタッフや元マネージャーという立場であることは、どのように評価されるのか。南澤弁護士は、この点に関して厳しい見方を示す。

「芸能人とスタッフ・マネージャーという関係性は、どうしても芸能人の方が立場が上になります。
いわゆる『いじめ』『パワハラ』に近い構造があるわけです。このような立場の差は、逆らいにくい関係性を利用した支配欲に基づく行為として、悪質だと判断されやすいです」

この指摘は重要だ。つまり、単に暴行・傷害があったという事実だけでなく、「立場の優位性を利用した」という構図が認められれば、より悪質な事案として扱われる可能性があるということだ。

「女王様キャラ」は通用する?芸風が“言い訳”にならない理由

デヴィ氏といえば、テレビ番組などで「女王様キャラ」として知られている。この「キャラ」は、刑事責任の判断に影響するのだろうか。

「もちろん、テレビ番組の企画・演出の一環として行われた暴行であれば罪に問われることはありません。また、飲み会の場が『冗談』『芸風』と受け止められる雰囲気であり、暴行を受けた側も加害者を許している、という状況であれば、立件されることはないでしょう」

しかし、現実はそう単純ではないと南澤弁護士は続ける。

「実際には、被害者が内心は嫌だったとしても、芸能人に対してNOと言えない雰囲気があることも事実。暴行・傷害として立件されているということは、被害者が嫌がっていることが前提ですから、『冗談だった』『芸風の延長だった』という言い訳は困難ではないでしょうか」

むしろ、「キャラ」に関しては逆効果になる可能性もあるという。

「その場合には、テレビでのキャラクターを言い訳にして横柄に振る舞っていたのではないか、パワハラに近い動機があったのではないかと、マイナス評価になる可能性が高いと感じます」

不起訴か、それとも実刑か――分かれ目は「常習性」と「反省の姿勢」

最後に、今回の事件がどのような結末を迎える可能性があるのかについて、南澤弁護士は次のように分析する。

「一般に芸能人の不祥事に関しては、衝動的な暴行・傷害については、不起訴になるケースが多いです。この理由としては、芸能人側に十分なお金があり、示談がスムーズに進みやすいという点や、活動休止・芸能界引退といった行動が反省の現れとして高く評価されやすい事情があります」

具体例として、南澤弁護士は力士の事例を挙げる。

「少し昔の事件ですが、力士・朝青龍が、酒席でトラブルになった一般人を暴行し、全治1か月以上という怪我を生じさせた事件がありました。
相当重大な障害事案ですが、このケースでも、適切な示談や角界引退という潔い態度が考慮され、刑事処分としては不起訴となりました」

しかし、デヴィ氏の場合は状況が異なる可能性があるという。

「今回のケースは、2025年4月の書類送検に続き、常習性があります。また、引退や自粛という話も本人から出ていないようです。本人の反省がなく、今後も反復されるようであれば、在宅起訴・罰金刑等の可能性もあり得ると思います」

結局のところ、高齢であること、女性であること、独特のキャラクターを持つ芸能人であることなどは、刑事責任を大きく左右する要素とはならない。むしろ、被害の程度、常習性の有無、そして何より本人の反省の姿勢が、最終的な処分を決める重要な要素になるというわけだ。

<取材・文/日刊SPA!取材班>

【南澤毅吾】
アディーレ法律事務所。「パチスロで学費を稼ぎ、弁護士になった男」という異色の経歴を持つ。司法修習時代は、精神医療センターにて、ギャンブルを含む依存症問題について研修を受けた経験があり、一般市民の悩みに寄り添った、庶民派の弁護士を志す。アディーレ法律事務所・北千住支店長として対応した法律相談数は、累計数千件に及び、多様な一般民事分野の処理経験を経て、現在は交通事故部門の責任者となる。
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