昨年12月に動画共有サービスに投稿された1本の動画が、特撮ファンの間で大きな衝撃となった。
 投稿された動画は、『ウルトラセブン』の第12話「遊星より愛をこめて」、初回放送は1967(昭和42)年12月17日。


 現在公式には「欠番」扱いとされ、欠番決定後の再放送やソフト収録が一切行われない“幻の作品”〟としてファンの間ではよく知られた存在だ。

 この12話は、海賊版ソフトが出回ったり、違法アップロードされたりすることも時折あるが、なぜ今回の投稿が大きな話題を集めたのか(動画は現在は削除済み)。

被爆者団体からの抗議で欠番になった『ウルトラセブン』12話が...の画像はこちら >>

1967年の映像がデジタルリマスター並の画質でアップされた

 それは、その12話が、これまで誰もが見たことのない(であろう)クリアすぎる映像だったからである。

 前述したこれまでの海賊版などに収録され流通した映像は、当時誰かがテレビ放送されたもの(あるいは海外放送版)をビデオ録画したもの、なかにはそれを複数回ダビングを重ねて出回ったものだと思われる。

 そのような事情により、映像はかなり荒れた状態のものだった(これまで動画サイトなどにアップロードされたものもそれらをもとにしたものだったと推察できる)。

 12話が国内で欠番扱いとされたのは、初回放送から3年後の1970年のこと。

 当たり前だが地デジ画質でもないし、デジタル機器での保存もありえない時代である。

 しかし、今回の投稿版は、他の回と同基準のデジタルリマスター、いや4Kリマスターをされたのではないかというほどの解像度の高さで、出演者の表情やスーツ、セットなどの詳細もくっきり確認できるレベルで(つまり初回放送視聴時のテレビ環境よりも綺麗な映像なはずである)、本動画を視聴したファンからは、そのクリアな映像に感嘆の声が多くあがるなどした。

 誰かの手によってリマスター作業が行われていたのか、あるいはAIを駆使するなどして既存の映像をクリアなものに生成したのか。

 そのあたりを詮索することはあまりにも謎が多く不確定要素が多すぎるし、そこを明らかにすることが本題ではない。

12話に登場する「スペル星人」の別名が問題に

 ここで『ウルトラセブン』第12話が“封印”扱いされたきっかけを簡単に記しておくと、1970年当時、児童向け雑誌の付録に記載された、この作品に登場する宇宙人(スペル星人)の解説に記されていた「ひばく星人」という別名の表現だった。

 自分たちの星が核実験によって汚染されてしまったスペル星人は、地球人の血液を腕時計型の道具を使用することによって集め、自分たちの生命を維持しようと試みたという侵略者だ。

 この「ひばく星人」という表現が、被爆者団体より抗議を受け、それを受け止めた円谷プロが当該話数を欠番扱いとし、放送用フィルムは処分された(他媒体では「吸血宇宙人」「きゅうけつかいじゅう」「被爆星人」といった表記も存在したという)。

 抗議を受けたのは「ひばく星人」という表記であり、ストーリーそのものへの抗議でなかったこと、その内容も被爆者を差別するような表現は一切無いという見方もある(とはいえスペル星人のデザインにはケロイドを想起させるような要素が盛り込まれていたりするわけなのではあるが)。


 そのため、たとえば他の人種差別や社会的弱者差別を思わせる要素が盛り込まれた作品のように、「文化」としての価値を尊重し、当時の表現であることを理解していただいたうえで注告のテロップなどを表記し放送やソフト化することの検討など、70年当時の判断が議論されることは幾度となくあった。

 しかし、これまで欠番という判断が覆ることは一度もなかった。

当時の出演者も解禁を望んでいる

 監督は同作品でメトロン星人が登場する「狙われた街」や、『ウルトラマン』のジャミラ登場回『故郷は地球』やシーボーズ登場回『怪獣墓場』などを手がけた実相寺昭雄。

 第12話も、実相寺作品らしい斬新な演出、カメラワークが印象的な作品とされており、そういう意味でも封印を惜しむ声は今も止まない。

 さらに、この第12話には、『ウルトラマン』のフジ・アキコ隊員や『ウルトラQ』では江戸川百合子を演じた桜井浩子が、『ウルトラセブン』のアンヌ隊員の友人役として出演するという、いってみればダブルヒロイン共演的な、シリーズのファンにとってのプレゼント的要素も含まれた作品ということも注目ポイントである。

 当のアンヌ隊員、女優のひし美ゆり子さんは、本作の文化的価値に基づいたうえで、封印からの解禁を望むコメントを長年にわたり続けていることも紹介しておきたい。

 依然、歴史上消失したままのウルトラセブン第12話。ここで新たな議論をたたかわせたり、本記事がきっかけとなり野次馬的な好奇心を生み出したりするなど、ふたたび寝た子を起こすことにつながることは本意ではない。

 円谷プロが削除を申請し、それによってウルトラセブン12話がふたたび長い眠りについたこと、確かなことはそれだけである。

 そういう扱いとなる幻の名作回があり、謎の高画質映像が流れた不思議な出来事が2025年の終わりにあったこと。その事実のみを記事として記録しておきたい。

<文/太田サトル>

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【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。
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