なぜ人気リゾートで、ここまで値段が崩れたのか。現地を歩いて見えてきたのは、過剰参入、ルール無視、そして“赤字覚悟”の消耗戦。激安の裏側で、沖縄の観光インフラはいま静かに歪み始めている。
沖縄の激安レンタカー
昨秋からX(旧ツイッター)上で日本を代表する人気リゾートのある変化についての投稿が相次いだ。「沖縄のレンタカーの値段が崩壊してる!」「もはやLUUP(シェアサイクル・電動キックボード)より安くね!?」と、観光には車が必須といわれる沖縄のレンタカーが投げ売り状態だという。試しに比較サイトを調べると、最安値はなんと1日1500円。東京都内の3分の1以下の価格だった。人気リゾートの“観光の足”に何が起こっているのか、さっそく現地に向かった。
那覇空港から車で15分ほどの距離にある豊見城市の海岸沿いの街・与根は、レンタカー激戦区として知られている。今回、比較サイト上で一番安値の車両を借りたところ、1日あたり1400円、丸2日間の利用で2800円だった。この時点ですでに破格だが、さらに初回限定のLINEクーポンを使うと、500円の割引が適用され、実質1日あたり1150円で借りられる計算だ。
国際通りの視線を独占できちゃう
東京都内の最低時給以下の金額に驚愕し、勝手に経営状況の心配をしていると、用意されたクルマは犬の写真やイラストの自社広告に彩られたド派手な色のアドカー仕様。よく見ると配車場には似た車が幾台もある。「この辺りはレンタカー会社が多すぎてオフシーズンは価格を下げないと赤字が続く。テレビ広告なんて出せないから、車体を派手にして走る広告で勝負するしかない」
激安競争は止まらない!?
「レンタカー事業は、稼働率ゼロでもコストが発生する固定費ビジネスです。コロナ禍で各社が減車した後、リベンジ消費で需要が急回復しましたが、半導体不足で新車調達は滞り、中古車価格も高騰。一部事業者は1日3万円、なかには10万円超の値をつけるも、借り手がついたため『レンタカーは儲かる』と新規参入が相次ぎました。しかし今となっては“車余り”の状態で過当競争になっています」
沖縄のレンタカー事業者数は’20年度の940社から’24年度には2186社と倍増。車両数も’20年度の3万2467台から5万6658台と過去最多を更新した。あまりの急増ぶりに、レンタカー協会関係者も実態把握に苦しむ。
「協会加盟店は80社程度で全体の5%にも満たない。車を置く場所さえあればアパートを借りてスマホ一台で営業できてしまうので、“無店舗型”の事業者が急増しています」
現場ではルール無視が常態化
「所有車が10台未満なら整備責任者も不要で、1台だけの“事業者”も少なくない。副業やバイト感覚で参入する県外や海外の業者がほとんどだから、赤字覚悟の値下げが横行しているんです」
現場でルール無視も常態化していると植村氏は指摘する。
「時間のかかる送迎の手間を省くため、禁止されている空港駐車場内での受け渡しが横行しています。ルールを守っている業者が、〝無法者〞に売り上げを奪われているのです」
無秩序に進む価格競争の裏側で、沖縄のレンタカー市場は静かに歪みが拡大している。
減った観光客をめぐる空室の値下げ合戦
「海外団体旅行客に依存していた高価格帯の大型ホテルが、中国を含む一部の団体旅行客の相次ぐキャンセルによって稼働率が急落。埋め合わせのために行われた30~50%超の急激な値下げが、今回の競争の引き金になりました」
行きすぎた値下げ競争が起こると…
だが、今回の現象を、“大型ホテルvs小規模ホテル”と、規模だけに着目すると、本質を見誤る可能性がある。「1泊5000円前後が相場のレジャーやビジネス向けの中規模ホテル、それよりも廉価な3000円台で泊まれるアパートメントや長期滞在型のホテルなど、それぞれに抱える客層は異なり、本来は競合しません。ですが、そうしたお客さんが、“ほぼ同じ価格なら”と、フルサービスの大型ホテルに移ってしまったことで価格競争が京都全体に及んだ形です。さらに冬の京都はもともと閑散期。ダブルパンチの煽りを受けて、収益性を犠牲にしながら稼働率を維持するホテルも見られます」
某ホテル関係者もこの現状に悲鳴を上げる。
「オンライン旅行代理店に10~20%前後の手数料を持っていかれるし、価格を戻せば客が離れる恐怖がある。
健全な調整なら歓迎すべきだが、行きすぎた値下げ競争は、業界全体の価値そのものを削りかねない。
自動車専門誌出身。カーライフ系、ニュース系記事のほか、主にIT&通信分野でのB2Bウェブサイトの企画立案なども手がける
ホテルマーケティング事業を運営するKyoflow合同会社代表。約10年間ホテルの価格設定に関わってきた知見を動画でも配信中
取材・文/週刊SPA!編集部
―[物価高なのに[異様に安い店]を直撃![激安]の裏側]―
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