2月8日の衆院選は、自民党が結党以来最多となる316議席を獲得する圧勝に終わった。対する中道改革連合は公示前勢力から3分の1未満に減らす大惨敗に。
中道合流に当たって、安保法制に対し「違憲部分の廃止」を掲げてきた立憲民主は「合憲」へ転換し、’20年にまとめた綱領で掲げた「原発ゼロ」の旗も同時に事実上降ろしたため、リベラル層の失望を買ったことが敗因の一つと考えられる。
ジャーナリストの岩田明子氏は今回の選挙を以下のように振り返った(以下、岩田氏の寄稿)。

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中道の求心力低下で露見した「責任あるリベラル」の必要性

 すべては立憲民主党と公明党との合流から始まったのではないか。自民党vs中道改革連合の構図は、現実と非現実、新旧の対立軸にあったと見る。

 政策面で注目を集めた消費減税論では、中道が食料品の税率を恒久的にゼロ、国民民主が安定的賃金上昇を見込めるまでの一律5%などと訴えるなか、自民は2年限定で食料品の税率をゼロとする”現実路線”を取った。1年で5兆円、計10兆円規模の「責任ある積極財政」とすることで、バラ撒き批判を回避したかたちだ。

 新旧の対立軸は、より明確だ。中道が連合と創価学会という組織票頼みの旧来型選挙戦を展開するなか、自民は岸田・石破政権時代に離れた保守層を取り戻すと同時に、現役世代を中心とした無党派層を多く取り込んだ。かつての民主党政権時代最後の首相を顔役とする中道に対し、自民の顔は旧来型派閥政治にくみしない初の女性総理という点でも新旧の違いがはっきり表れた。

 今後は与党過半数割れの参院でいかに自民が国民民主などの協力を取りつけ、政策を実現していくかに注目が集まる。すでに選挙翌日の日経平均は一時5万8000円を超えるなど、市場は「財政政策の大転換」を進める高市・自民の圧勝を好感している。だが、私が最も危惧するのは衆院選と前後して現実味を帯びてきた左派・リベラルの消滅だ。

「批判のための批判」を求めていない

 中道結党に際して、立憲民主は存立危機事態での自国防衛のための自衛権行使は「合憲」とし、原発再稼働を容認するなど、公明に合わせて大幅に軌道修正した。
現実路線への転換だと訴えたが、リベラル層の支持を失ったのは明白だ。比例名簿上位を確保して公明系が議席増を実現する一方、割を食った立憲民主系候補が大量落選したことを思えば、今後の“中道分裂”は避けられないだろう。共産党やれいわ、社民党は左派としての立ち位置を堅持したが、高市・自民の減税案の前に「消費税ゼロ」は非現実的と受け止められた。

 思うに、今回の選挙結果が示すのは「批判のための批判」はもはや求められていないという事実だ。その証拠に、一部メディアによる旧統一教会と高市首相の接点に関する報道は問題視されず、かつて“不記載議員”と批判を浴びた自民党候補者の多くが政界復帰を果たした。

 いち早く「対立よりも解決」を掲げてきた国民民主が伸び悩んだのは、「もっと手取りを増やす」という今回の標語が目新しさを欠いたからと見える。年収の壁の引き上げを実現した“次”として、「社会保険料還付つき住民税控除」という新案を打ち出したものの、その議論を短い選挙戦のなかでは深めきれなかった。

 もちろん、野党には与党の監視役としての対決姿勢が求められる。責任ある積極財政に対して市場関係者らの警戒感も高まるだけに、ブレーキ役も必要だ。一強化しつつある高市・自民の批判的勢力がなければ、国会論戦は盛り上がらず、国民の政治に対する関心は薄れかねない。だからこそ、批判と対話を経て、よりよい政策実現を目指す──そんな“責任あるリベラル”の進化に期待したい。

高市自民「316議席圧勝」の裏で何が起きたのか。中道“大惨敗”が示したリベラルの限界
岩田明子
<文/岩田明子>

【岩田明子】
いわたあきこ●ジャーナリスト 1996年にNHKに入局し、’00年に報道局政治部へ。
20年にわたって安倍晋三元首相を取材し、「安倍氏を最も知る記者」として知られることに。’23年にフリーに転身後、『安倍晋三実録』(文藝春秋)を上梓。現在は母親の介護にも奮闘中
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