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 自民党の歴史的な大勝でその幕を閉じた衆院選2026。その結果次第で「皇位継承問題がどう動くのか」を注視していたのは憲政史研究家であり、皇室史学者の倉山満氏だ。

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 中道改革連合が勝利すれば野田佳彦共同代表の発言力が高まり、高市早苗首相が三分の二の多数を得れば「旧皇族の皇籍取得」のみで強行採決する可能性もあったなど実は、この衆院選は皇位継承問題にとって大きなものでもあったのだ。

 結果として、単独で3分の2の議席を自民党が獲得したわけだが、この議論の根底にある「皇室を続けるとはどういうことか」を理解している論者は意外に少ない。倉山氏が、皇室の本質と継承問題の核心を語る(以下、倉山氏による寄稿 ※2026年2月6日時点の原稿です)。

選挙後、皇位継承問題は進むのか

 総選挙である。選挙後に皇位継承問題、果たして進むのか。はたまた停滞するのか。

 一つは中道改革連合が勝利。この場合、野田佳彦共同代表の発言力が高まる。手が付けられない。ただでさえ国会の全体会議は「野田さん一人を説得する会議」と言われているのに……。

 もう一つは高市早苗首相が勝利。特に三分の二の多数を得ると、「旧皇族の皇籍取得」のみで強行採決する可能性もある。実際に、高市首相の支持者の中には、そのような強硬論もある。
そこまでの与党勝利なら、野田代表の退陣は必至であろうから、歓迎ではあるが。

そもそも皇室を続けたいのか、否か

 そもそも論である。皇室を続けたいのか、否か。ここで否と答えるならば、議論にならない。今の時代、表立って「天皇制打倒」など、共産党だって言わない。この点は合意できている。しかし、その次を理解していない御仁の分際で、皇室にモノ申す不届きものが多くて困る。政治家は仕方ないとしても、専門家を気取るなら、以下の知識ぐらいは持っていてほしい、基礎的な話だ。

 皇室を続けるとはどういうことか。そもそも皇室とは何なのか。

 我が国の皇室は、初代神武天皇以来、2686年間、一度も途切れずに続いてきた。『日本書紀』によると、神話の時代からだと約180万年続いてきたとされる。年代が特定できる史実から数えても、1400年以上。
圧倒的に世界最長不倒の伝統を続けている。

「皇室を続ける」とは何か

 続けているとは、どういうことか。神話や伝説の時代から、皇位の男系継承が続いていることである。歴代百二十六代、南北朝時代の五人の天皇を含め、全員が神武天皇の男系子孫である。よく誤解されるが、八方十代の女帝も男系子孫である(重祚と言って、二回即位した天皇がいるので、代数と人数がずれる)。百二十九人の天皇は、八人の男系女子以外は、全員が男系男子である。皇室における男系とは、父親の父親……とたどっていくと必ず天皇・皇族にいきつくことである。だから男子であれ女子であれ、皇族は必ず神武天皇の子孫である。

 例外的に、結婚によって皇族になった女性は違う。皇室は一般人の女性を受け容れてきたが、一般人の男性を一人も受け容れてこなかった。なぜか。男は子供が産めないからである。これを男性差別だと言われても、そういう伝統で続けてきた。


自民党圧勝で皇室はどうなる?実は理解者が少ない「皇室を続けること」の本質/倉山満
“ロボット”にされても、皇位継承が危ぶまれても、先例に准じながら一本の糸を繋げてきた日本の皇室。今上陛下は神武天皇七十三世であり、正統(せいとう)の天皇であるが、皇位が秋篠宮家に移れば皇嗣殿下が正統(しょうとう)の皇族を継いでいく

正統(せいとう)と正統(しょうとう)の違い

 歴代天皇には、正統(せいとう)と正統(しょうとう)がある。正統(せいとう)とは、即位した本物の天皇のこと。反対語は「偽」「異端」になる。南北朝時代は天皇が並立したが、正統(せいとう)から外された北朝の天皇は「偽」とはされず、「閏」(じゅん)とされた。

 正統(しょうとう)とは、子孫が皇位を継いだ天皇・皇族のこと。たとえば、伝説の時代では、初代神武天皇から第十二代景行天皇までは父子継承。十二人全員が、正統(せいとう)で正統(しょうとう)。第十三代は景行天皇皇子の成務天皇が継いだ。しかし、子が無かった。そこで兄の日本武尊の皇子(成務から見て甥、景行から見て孫)が継いで、第十四代仲哀天皇。成務天皇は正統(せいとう)な天皇だが、正統(しょうとう)からは外れる。日本武尊は天皇になっていないから正統(せいとう)ではないが、正統(しょうとう)の皇族。今の皇族は全員が日本武尊の子孫である。


 今上陛下は神武天皇七十三世。この伝統を続けるのか変えるのか。

 変えるとは、やめると同義である。

野田氏の主張は「皇室乗っ取り」である

 野田佳彦氏は、「女系天皇」を主張している。要するに、「愛子さまには好きな方と結婚していただいて、旦那を皇族にして、その子供に天皇になってもらおう」との話だ。

 そういうのを「皇室乗っ取り」と言う。女性週刊誌を中心に、軽く「愛子さまには好きな方と結婚していただいて~」とか言ってくれるが、パンピーの男を皇族にしなかったのが、皇室の絶対の掟だ。

 皇室を存続させると言っても、一般人の男を連れてきて、「皇族になれます」と言われても、それで済むなら苦労しない。はっきり男性差別の発言をするが、なぜ子供も産めないのに皇族にしてやる必要があるのか。蘇我藤原の時代以来、皇室を凌駕する権力者は無数にいたが、一人も皇族になれなかった。皇室を守る絶対の壁だからだ。それを野田氏は、いとも簡単に乗り越えようとしている。させる訳にはいかない。


 一部に、「女性皇族の配偶者を皇族にすると女系天皇につながるから反対だ」とマヌケなことを言っている論者もいるが、違う。女系天皇以前に、その時点で国体の破壊だから不可なのだ。間違えてはならない。

「死者の民主主義」に学ぶべきだ

 では皇室を守る為に、何をしなければならないのか。先例に学ぶことである。皇室の先例とは、杓子定規に再現することではない。悪例を避け、吉例に学ぶことである。いくら民主主義の世の中でも、一時の多数決は危険である。しょせん、現在の生きている人間は歴史の中での少数派である。これを「死者の民主主義」と呼ぶ。我々の多数決など少数派だからこそ、今まで守ってきた伝統に学ぶ。だから吉例を探すのである。
皇室を語ること自体が畏れ多いが、語る際には先例に基づいて議論すべきである。

 皇位は秋篠宮家に移ることが決まっている。秋篠宮殿下は即位されようがされまいが、正統(しょうとう)の皇族になるということだ。

 そして悠仁殿下は正統(せいとう)の天皇にして、正統(しょうとう)を継いでもらわねばならない。

 だが、絶対に子供が生まれる保証はない。悠仁殿下一人では心もとない。だから皇族数の確保が求められている。そこで「旧皇族の皇籍取得」は議論されている。

 旧皇族とは、本来ならば皇族として生まれるはずだった方々だ。その方々に本来の身分を取り戻していただこうとの案が、国会の多数派だ。

 皇室は一度も消えたことが無い蝋燭のようなものだ。「電球に取り替えろ」式の議論につきあってられない。

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【倉山 満】
憲政史研究家 1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『噓だらけの日本近世史』が2月28日に発売
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