2026年1月中旬、私はペルーのアマゾン奥地へ向かっていた。目的は「アヤワスカ」を飲むためだ。LSDの100倍の幻覚作用があるとも言われる、いわゆる「神のお茶」。冷静に考えると、まあまあ正気ではない。今回が初挑戦ではなく、3年前には現地で6回も飲んでいる。それでもまた行ったのは、カルマや不調を溜め込んだこの肉体が、「そろそろ行っとけ」と指示を出してきたような感覚に突き動かされたからだった。
アヤワスカとは何か?
よくスピリチュアル界隈では「幻覚剤」と呼ばれるが、実際は化学物質ゼロ、植物のみで構成された南米で2~3千年以上使用されているペルー政府公認のナチュラル飲料である。
ペルーでは「植物の精霊が教え導く存在」と考えられており、シャーマンや先住民たちは、病気の治療、心の傷の癒し、人生の方向を確認するために「メディスン」としてこれを用いてきたという。
パリピがクラブで使うLSDやMDMAなどテンションが上がる違法薬物とは真逆。飲むと本当に「過去のトラウマ」「不快な感覚」「後悔の念」「普段スルーしている悪行」など、目を背けてきた重い記憶や啓示が、次々とビジョンや音として容赦なく襲ってくる。それらと立ち向かうたびに、水やら胆汁を盛大に吐く。
シピボ族の村を選んだ理由
近年、アヤワスカが「スピリチュアルツーリズム」の象徴のように語られ、観光地には修行もロクに受けていない偽シャーマンが急増している。彼らは、「キマること」だけを重視し、不適切な薬草を混ぜ、危険な量を飲ませるため、結果、参加者が深刻な被害を受けることも後を絶たない。
シャーマンは儀式の安全性・深度・意味を左右する中核的存在で、場のエネルギーを整えたり、悪霊を寄せ付けないなど重要な役割を果たす。極端に言えば、同じアヤワスカでも、誰が導くかで体験はまったく別物になってしまう。シピボ族の村にも経験値の低いシャーマンがいるし、「日本人が行っているから安全」というのも間違い。評判の悪いシャーマンに当たってしまった日本人の体験記もネット上には多い。
事前に英語やスペイン語で詳しくチェックする努力を惜しんではいけない。
カンボ儀式──カエルになった私
……が、これが想像の3倍はキツかった。
前日から断食し、儀式直前に右腕をマッチで4か所焼かれる。直径5ミリほどの根性焼きだ。そのただれた部分にカエルの毒を塗り込む。毒はリンパを通って血中へ入り、発汗、浮腫、激しい嘔吐を引き起こすらしい。らしい、で済む話ではないが……。
そして1リットルの水を一気飲みさせられ、シャーマンが太鼓をズンドコ叩きながら「カンボ~カンボ~」と歌い始めて20秒後、地獄が訪れた。
目が回り、吐き気と頭痛が同時に襲う。40度の熱にうなされている感覚の、さらにその上のキツさ。「水を飲め」と促されるが、一滴も入らない。
無理やり水を数滴飲んだ瞬間、まるでマーライオンのように大量の水を胆汁とともに吐き出した。それを2回繰り返すと今度は体が石のように硬直し、全身に「ピピピピピ」という電子音のような音が駆け巡った。毒ガエルが全身をスキャンしている、と直感した。
気づけば、マットに横たわり、手はパーで開いたまま、膝を立て、股をM字に開いた、インリン・オブ・ジョイトイならぬ「スミ・オブ・フロッグ」が完成していた。完全にカエルになっていたのである。
「わ、わたしは……カエル……」
30分後、苦しみも徐々に和らいでいき、ようやく「生還した」という実感が得られた。だが、すぐに回復するわけではなく、夜まで下痢と頻尿でトイレから離れられなかった。
臨死体験と「泣ける人生」の意味
効果が出たのは翌日だった。朝日が異様に美しく感じ、感動にむせび泣きながら起きて立ち上がると体が羽のように軽かったのである。思わずガッツポーズをし「カンボオオオオオ、ウオオオオオ!」と四股踏むと、足からエネルギーが沸きあがり、そのまま裸足でバナナを買いにお店までダッシュした。走らずにはいられなかったのである。大地を踏み締め、限りなく広がる空を視界に入れて走りたかったのだ。
そういえば私は子どもの頃に走ることが大好きで、常に誰よりも走っていたことも思い出した。カンボで肉体に溜まった悪いものが、一気に抜けた感覚があった。そして晴れやかな気持ちでアヤワスカの儀式へと向かった。
その後、参加者一人ひとりにアヤワスカを煎じたお茶が渡され、それを一気に飲み干す。そして、体を横たえ、シャーマンの歌う聖なる歌「イカロ」を聴きながら変化に身をまかす。それが、朝の5時頃まで続くのだ。
今回は3年前とは比べ物にならない地獄を見た。
「ああ、死ぬんだ……さようなら、みんな……さようなら、自分……」
と思った瞬間、「角さん、大丈夫かな……」という日本語の話し声が突然耳元で聞こえ、一気に意識が戻って呼吸と共に目が覚めた。
声の主は、日本人の参加者たちだった。私が死んだかもしれないと思い、状況を見守っていたらしい。シャーマンがどんなに揺すったり持ち上げたりしても、私は完全脱力で動かず「極めて重症だった」と後から言われた。
今回もアヤワスカで得た情報は膨大だったが、カンボで徹底的に掃除したことで、より深いところまで連れて行かれた気がする。
その結果、今の私はこれまでぼんやりしていた「自分」という存在にピントが合っている状態だ。悪い過去・未来・現在、全部含めて自分自身なのに、私は今まで、現実から目を背け、その歪みが、生きる力を少しずつ削っていたことがわかった。つらいことから逃げたり、その場しのぎの嘘をつくと、そのツケは「自分を濁す=生きる力を奪う」というカタチで回ってきていたのだと感じた。
まずは、嘘を重ねて生きてきた人生。
次に、嘘はつかないけれど、自分の本音をあまり伝えなかった人生。泣けはするが、どこか控えめだ。夫を失った悲しみより、「ちゃんと伝えなかった自分」への後悔のほうが強く出た。
最後に、嫌なことも、恥ずかしいことも、腹が立ったことも、全部夫と共有した人生。これは、泣き方が違った。とにかく、ものすごく泣いた。でもそれは、自分を責める涙ではなく、ただ純粋に「夫が死んだ」という事実に対する涙だった。
だが、心は不思議と軽くなっていた。悲しいけれど、前を向ける。ちゃんと悲しんだから、ちゃんと回復できる。……きちんと泣ける人生のほうが、実は楽なのだとわかった気がした。
心が濁ると、泣くことも、笑うことも、どこか半端になる。だが、
悲しいときは悲しい。
嬉しいときは嬉しい。
楽しいときは楽しい。
この単純かつ壮大な心の振れ幅が鈍ってしまったら、人生はかなり味気ない。同時に、「それって、生きてる意味ないってことやねん、アホやねんなーホンマに」と、神様っぽいおばちゃんから関西弁のメッセージが入り、「ホンマやなー」と思った。
嘘をつくことと、現実から目を背けることは心の振れ幅を狭めるのだ。
私は「もう二度とあんな苦しみはごめんだ」と思いつつ、また数年後にアヤワスカを求めてアマゾン行きの航空券を検索してしまう気がした。
【角由紀子】
オカルト研究家。上智大学文学部を中退後、2013年にオカルト専門メディア「TOCANA」を立ち上げ、約8年間編集長を務める。自身のYouTubeチャンネル「角由紀子のヤバイ帝国」は登録者数30万人超。主な編集本に『見つけてください』(横澤丈二著/徳間書店)、著書に『引き寄せの法則を全部やったら、効きすぎて人生バグりかけた話』(扶桑社)など。
―[南米ペルー[神のお茶]体験記]―
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