その波は、サラリーマンの“経費文化”にも及び始めている。AIによる経費審査とインボイス制度の浸透で、これまで黙認されてきた接待費のグレーゾーンが急速に消滅しつつあるという。現場の悲鳴と専門家の指摘から、その実態を追った。
接待のキャバクラ経費が通らない
AIの台頭は、サラリーマンの懐事情にも影響を及ぼし始めている。都内の商社に勤める松尾竜次さん(仮名・40代)は「ぶっちゃけ、接待のキャバクラ経費が通らなくなったのが一番きつい」と漏らす。「これまでは多少グレーな領収書も、組織の必要悪としてお目こぼしされてきました。しかし、経理が導入したAIが不自然な経費を機械的に弾くようになった。ダメなのは承知していますが、多少の手加減がないと仕事が回らないのも事実です」
税理士の髙橋創氏は、「経費の厳格化は、今後さらに進んでいくはず」と指摘する。
「まず知っておくべきは、インボイス未登録店の領収書が段階的に排除されていく未来です。これまで会社は経費にかかった消費税分を納税額から差し引けましたが、番号のない領収書はこの控除が認められません。
4月からの法改正により、’31年10月には猶予も完全消滅。未登録店での飲食は消費税分が丸々『会社の損失』となります。経理からすれば、キャバクラやスナックに多い未登録店で飲む社員は、会社のお金で遊んでいるのも同然。
インボイス番号があっても…
だが、インボイス番号さえあれば「AIの眼」を欺けるわけでもない。「領収書に『お食事代』と書いても、番号を調べれば店の業態は一発で判明します。また店側に税務調査が入れば、人力とAIによる照合で売り上げ記録との矛盾が突かれたり、利用者が芋づる式に特定されることもある。
他人の領収書を流用する『B勘』や白紙領収書などの不正はもはや不可能です。これらは法律上『業務上横領』になり、発覚すれば弁済と懲戒免職という社会的死が待っています」
海外では監視の目がさらに過激
監視の目は、海外ではさらに過激だ。「ポルトガルやイタリア、中南米では、レジの情報が直接国税に飛び、政府承認のない領収書は法的に無効。日本でも財務省や国税庁が旗振り役となり、デジタルインボイスをはじめとしたデジタル化を目指しているので、透明化が進むはずです」
もちろん、不正は許されない。だが、AIが領収書の裏側まで見透かす超監視社会において、清濁併せ呑む余地がそぎ落とされていくのだ。
インボイス未登録店の消費税控除が5年で消える!
現在はインボイス未登録店でも8割控除の特例があるが、今年10月には7割に、さらに’31年の完全消滅へと段階的に進み、会社の負担増。経費の取り扱いが厳格化する。2026年9月末まで8割控除(3年間)
2028年9月末まで7割控除(2年間)
2030年9月末まで5割控除(2年間)
2031年9月末まで3割控除(1年間)
2031年10月以降は控除無し
【税理士 高橋 創氏】
高橋創税理士事務所。著書『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか? 日本の昔話で身につく税の基本』(ダイヤモンド社)など
取材・文/週刊SPA!編集部
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